初投稿、近況、対局前

こんばんは、棋士の山本博志です。

文章を書くのが好きで、noteは前からやってみたかった。新年だし、近く明後日1/27に大きな勝負があって、丁度いい機会かなと思い、始めることにした。対局の振り返りや日記のような投稿をするつもりだ。図面無しで将棋や、将棋の世界の面白さが伝わるような内容が理想だ。

えらく崇高な理想を掲げてしまった。ただの独り言と将棋の普及を結びつけようとは我ながら大きく出たもんだ。

-お正月のあの全てが許されるような雰囲気が好きで、私自身は未だにお正月のオーラを纏っているが、世の中はもう2月になろうとしている。甘えの許されない世界で、私は早くも痛い負けを2つ喫した。

順位戦の瀬川さんとの将棋は高校3年間を捧げた青春の戦法、三間飛車急戦向かい飛車を採用したが、独りよがりな大局観が光った。昔、死ぬほど研究した序盤の手筋をたくさん読むうちに、ノスタルジックな気持ちになり形勢も良い気がして来てしまった。中盤に入った瞬間に悪手を連発。必敗の状態で夕食休憩に入ったが、にぎりの特上はめちゃくちゃ美味しかった。不味く感じるぐらいでなくてはダメなのである。帰り道のあまりの寒さに、お正月の終わりを実感したのだった。

そのあとすぐに竜王戦があった。長谷部くんは人柄も棋風もずっしりとしている。私は序盤から動く棋風だから、この対戦カードでは、いつも最初は動けて押しているように感じるのだが、そこからが彼の真骨頂。仁王立ちで中々倒れてくれない。段々でかい両手を広げて来てそのままグシャっと…。蝶のように舞、蜂のように刺したつもりだった私は、鋼鉄の巨人、長谷部の掌の上で踊っていたに過ぎなかったのだった。

収穫もあった。研究の質には自信を深めたし、対局中の読み筋もしっかりしていた。それでも完敗するのだから、将棋は難しい。観ている方には、敗者の方にも戦った跡がある事を感じて欲しい。

そして、その一週間後には大きな勝負があった。王座戦一次予選の決勝だ。相手のカジーこと梶浦五段は、中高も一緒の学校だし、幼なじみに近い。手の内を知られている上に、強い。私は正直勝つ自信が持てなかった。ので、自分は勝つことになっている。と思う事にした。

勉強もあまり手につかなかった。負けのダメージは心と身体を蝕んで、私はつい横になってしまう。眠りに落ちそうになりながら、「どうせ勝つから大丈夫」と言い聞かせた。確信めいているようで他力本願に近い。神頼みはたまにすることで効果があるのかな、と思っている。

1/21に行われたその将棋に私は勝った。運が良かったとも思うし、過去の自分の研究のお陰で勝てた感じだったので昔の自分に感謝した。そして、その日の自分も頑張った。過去最高レベルの集中だった。たまにはやるな。

それから2日間、私は死んだように寝た。人間ってこんなに寝れるのか。母親の作る食事が美味しいせいか?ベッドがふかふかなせいか?対局、頑張ったからか。そう思う事にしよう…

24日は病院に行く用事があった。空いた時間の勉強も捗って、人間らしく過ごした。ようやく次に目が向いてきて、そうして割とすぐに眼がすわった。身体がしゃんとした。次の勝負は1/27だ。

この文章を書いている1/25は三段リーグがある。重いな…と思う。

次の勝負について、今の時点で特に語ることもない。月並みだが一生懸命やる。

一生懸命という言葉は結構好きで、なんだか生きてるだけで頑張ってるね。みたいな暖かさを感じる。

1人でも多くの方にご観戦いただけると嬉しいです。よろしくお願いします。


山本博志








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