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「由良町総合戦略」を解読せよ!

和歌山県のほぼ中央に位置する海と山に囲まれた小さな町・由良町。

「消滅可能性都市」と呼ばれ、1980年には1万人近くいた町民が、2040年には3000人を切ると推計されています。

2015年、住民代表や町議会、学識経験者等からなる「由良町まち・ひと・しごと創生推進協議会」での審議を経て「由良町総合戦略」が策定されました。

今回は少し長めの記事になりますが、この戦略を検証していきたいと思います。

ちなみにこの総合戦略は5年間の指針だったため、2020年3月に「第2期由良町総合戦略」が策定されました。

ともに由良町ホームページに掲載されていますので、興味のある方はご覧ください。

【由良町総合戦略】
(対象期間:2015年度〜2019年度)
http://www.town.yura.wakayama.jp/docs/2015102700015/

【第2期由良町総合戦略】
(対象期間:2020年度〜2024年度)
http://www.town.yura.wakayama.jp/docs/2020030500019/


◆ 2060年の目標人口4700人

それでは早速、2つの総合戦略について見ていきましょう。

2015年の「由良町総合戦略」の策定にあたり、町民を対象にしたアンケート調査が行われました。

町民から無作為に1600人を抽出し、調査票を郵送。

そのうち744人から回答があり、「人口減少はやむを得ないが、なるべく減少に歯止めをかけるべき」と回答した人が最も多かったそうです。(38.0%)

社会保障の個人負担が増えることや、担い手不足による地域の活力の低下が不安という理由でした。

この結果を踏まえ、2060年の目標人口を4700人と設定することになりました。

◆4つの基本目標

人口減少に歯止めをかけるため、「(第1期)由良町総合戦略」では4つの基本目標が設定されました。

【基本目標】
1 由良町における安定した雇用を創出する。
2 由良町への新しいひとの流れをつくる。
3 由良町の若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる。
4 由良町の時代に合った地域をつくり、安全なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する。

そして各基本目標の中で、達成すべき数値目標としてKPI(重要業績評価指標)が設定されました。

例えば、基本目標1の「由良町における安定した雇用を創出する」のKPIの一つは、新規就農者や起業者への支援を行うことで「町内新規就農・起業者数を5年間で4人から10人にする」です。

こうして由良町は、各KPIの達成を目指し、様々な施策に取り組んできました。

しかし、2020年1月1日時点の町の人口は5678人まで減少。

日本創成会議が発表した推計にほぼ従う形で人口減少が進行していることが分かりました。

このまま行けば2060年の目標人口とした4700人はなんと2025年の時点で下回ってしまいます。

そんな危機的状況の中で策定されたのが、「第2期由良町総合戦略」でした。

◆第2期由良町総合戦略

「第2期由良町総合戦略」は、第1期で定めた目標を達成できているかどうかの検証から始まりました。

【計画→実施→評価→改善】というPDCAサイクルでの実施を目指す総合戦略。“C”にあたるこの検証作業は必要不可欠です。

4つの基本目標で定められたKPIの達成状況を見てみましょう。

1 由良町における安定した雇用を創出する。

「町内新規就農者・起業者数」「ゆらブランドの登録件数」「サテライトオフィス・スクールの貸出団体数」の3つのKPIが設定されていましたが、様々な取り組みにより3つとも達成することができました。

2 由良町への新しいひとの流れをつくる。

町内屈指の観光地である白崎海洋公園が台風被害で休園となったこともあり「観光客入込総数」は目標値に大きく及びませんでした。空き家等の有効活用数はほぼ目標値に近づけたものの、U・Iターン者数は5年間で22人と、目標値の30人には至りませんでした。

3 由良町の若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる。

「成婚件数」「全国学力・学習状況調査の平均正答率」はKPIを達成することができませんでした。また「合計特殊出生率」は公表されていないため検証できていないとのことです。

4 由良町の時代に合った地域をつくり、安全なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する。

「住民交流イベント開催数」「65歳以上75歳未満の方の要支援・要介護認定率」「主要避難路沿いの建築物等の耐震化率」の3つのKPIが設定されていましたが、3つとも達成することはできませんでした。

以上、基本目標4つのうち設定したKPIを全て達成できたのは1つだけ、ということになります

◆目標達成に向けて

「第2期由良町総合戦略」では4つの基本目標は引き継いだ上で、再度新たなKPIが設定されました。

安定した雇用確保のため地場産業を活性化し、町内の企業等の就業者数を5年後に1000人とすることや、公式SNSアカウントを開設し、フォロワー数を5年後に1000人とすること、結婚・妊娠・出産に対する支援を行い、5年間の出生数を合計125人とすること等が追加されています。

さらに、当初想定したペースよりも大きく人口が減少しているため、同じ目標のままだとさらに力を入れなければなりません。

そこで、これまでの「雇用創出」「子育て等生活環境の整備」「人口交流の拡大」「地域の活性化」に加え、「国土強靭化地域計画の目標達成に取り組むこと」が追加されました。

国土強靭化地域計画とは、2019年12月に由良町が作成した、大規模災害時を想定した以下の4つの基本目標を定めたものです。

①人命の保護が最大限図られること
②町及び社会の重要な機能が致命的な障害を受けず維持されること
③町民の財産及び公共施設に係る被害の最小化」
④迅速な復旧復興

これらの達成に取り組むことを通じて、由良町民の安心・安全を確保し、人口減少に歯止めをかけようということなのです。

こうして、2060年に人口4700人を維持するという目的を掲げた由良町の取り組みが再び始まりました。

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