ambient tune 聴取の詩学VI

これは私にとって、とても不思議な曲なんです。

パソコンで音楽作り始めたのがかれこれ15年ほど前。
そのころ、MIDIキーボードもなく、ギターを録音する機材もなく、
黙々とマウスで音を入力しながら何曲か作ったうちのひとつ。
当時、特に気に入ってたとか、思い入れが深いとかそいうものでもなく、
数回聴いてすっかり忘れてました。

それから何年後、突然あるフレーズが頭の中に浮かんできました。
聴き覚えのあるフレーズ。
「そうそうあの曲じゃん、懐かしい」
もう一度聴きたくなって探したんですが、データが見つかりません。
パソコンも入れ替わって、バックアップもとってなかったんだと思います。

もう聴けないんだ、とあきらめかけてましたが、
頭の中に浮かぶフレーズとか伴奏やアレンジがあまりには鮮明なので、
これを頼りに再現できると確信、

記憶の中に響く音に耳を傾けながら。

そしてできたのがこれです。
沢山曲作ってきましたが、
こんな経験は後にも先にもありません。

「家路を辿る男の子を写した映画のワンシーン」
出来上がったものを聴いてうちに、
そんなイメージで作った曲だったな、なんてことも思い出したり。

完全に再現できているのか、はたまたかなり違ったものになっているのか
今となっては確かめようがありません。
人間にとって「思い出す」ということは、単なる過去の再現ではなく、
現在の自分にとって都合の良いようにアレンジされるもの、
思い出すたびに、その時々に都合の良いように内容が更新されていく…。

そんなことを考えていたら、無性に一番最初のオリジナルと比べてみたくなってきました。

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