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数学が苦手な数学講師の話

先の記事で中学の頃は優等生だったことをちらっと書いた。

が、その後、見事に劣等生に転じた。
今回は、私と数学のことを書いてみる。

数学が赤点となった高1

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高校に入学して部活にどっぷり浸かった。初めて手にするフルートは、見た目の優雅さとは正反対の楽器だったが、またたく間に魅了された。朝練、放課後の練習は当然。1日休んだら3日分後退する、と言われていたので毎日欠かさず練習した。勉強時間など、あるわけがない。

他の教科は記憶力でなんとかしのいだが、数学だけは何を言っているのかだんだんわからなくなっていった。授業は徐々に子守唄と化していた。

じゃじゃーん!赤点とったどー!!

なるほど、これが赤点というものか。解答用紙は白いが、数字は赤い。元優等生としては、恥ずかしさより物珍しさが先立った。どうせ周りは勉強のできるヤツばかりである。自分を差別化するには、赤点自慢しかない。見せびらかして回った。

大根買うのに二次関数要る?家計簿つけるときに標準偏差使う?
数学なんて要らんわー!

本が好きだったので文系進学のつもりだった、この頃までは。

生物学に魅せられてしまった高2

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数学を無視したまま相変わらず部活に熱中していた高2の夏。出会ってしまったのが、DNAの複製機構などについて書かれた科学の本である。

もともと科学は好きだったが、この複製システムには好きを超えて美を感じた。宗教にも似た衝撃であった。数列もベクトルもわからんのに、大学で学ぶべきは生物学だと、理系を選択した。地獄に足を踏み入れていることに気づくのは、もう少し先のことだ。

秋から受験勉強を始めた高3

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相変わらず部員一丸となって全力で部活をやっていた。秋の文化祭を終えてようやく引退し、受験勉強を始めた。生物は理系。当然、数学が必要である。

…あれ?数学って、めっちゃ難しいね?(いやいや、知ってたよね?)

塾も予備校も行ってない。ただ、3年分封も切らないまま、ガッツリ積み上がった◯研ゼミのテキストがあった。とにかく解いた。睡眠時間は4時間。こたつで仮眠を取るときも、ちょうど大きなラジカセのすぐそばにアタマが来るようにして、目覚まし時計が鳴ったらまずアタマを大きく振った。ぶつかった衝撃で目を覚ましてまた勉強した。

正月も泣きながらひたすらテキストと戦っていた。

そして迎えた一次試験。ダメだろうなあ。無理だよなあ。受験舐めてたなあ。
しかし、配られた数学の問題を見て目を疑った。

これ、正月にやった問題だ。
これも、正月にやった問題だ。

奇跡が起きた

死ぬ気で勉強した塾講師時代

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時は過ぎ、とある会社に勤めたあと、訳あって学習塾に転職する。

「理系だよね。じゃ、数学を担当してもらうから」

自慢じゃないが(自慢してたくせに)元赤点ガールである。高校数学など教えられるわけがないではないか。

「あの、私、数学はちょっと。得意なのは生物です」
「生物はね、授業を取る生徒が少ないの。で、生物の教師は足りてる。足りないのは数学講師。わかった?」

なぜ学習塾など入ったのか。バカ。ワタシのバカ。しかし、やらないことにはゴハンが食べられない。選択肢はなかった。

「大丈夫、授業のやり方の研修があるから」

このとき研修を担当してくださったS先生には、本当に感謝している。ポイントをわかりやすく教えてくださったので、私はここでようやく高校数学を理解した。塾はすごい。プロはすごい。

しかし、わかると教えるはまた別の問題である。やっと少しわかるようになっただけの私が、生徒たちに塾はすごい、プロはすごい、と思わせなければならない。生半可な理解では授業できないので、帰宅してからも猛勉強が続いた。死ぬ気でやる、というのはこういうことかと思った。さすがに数学講師のアタマがたんこぶだらけだったらヤバいと思い、ラジカセは使わなくなったが、食えるかどうかの瀬戸際だけにアタマをぶつけなくても目が覚めた。もしも高校時代にこれだけ勉強していたら、ドラゴン桜が咲いていたはずだ。

とはいえ。私はまもなく、自分がとんでもない武器を持っていることを知る
世の中の数学講師はたいてい、数学が得意だから数学を教えている。ゆえに、生徒たちがなぜその問題が解けないのか、どこでつまづいているのかが、さっぱり理解できない。
しかし、こちとら正真正銘の、数学わからんガチ勢だ。生徒のつまずきポイントはいやというほど熟知している。どう考えればその問題の答えにたどり着くのか、自分が理解できた過程をそのまま授業で伝えた。私の授業はとにかくわかりやすい、と生徒には大好評であった。

そして今

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そして今、私は初心者ライターさんたちの課題を添削している。私もちょっと前まで、記事の書き方などわからなかった。
だから伝えられることがある。

何かが得意なことは、強みだ。
何かが不得意なことも、強みだ。

あなたには強みがたくさんある。何を強みにできるかは、あなた次第だ。

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