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一体何が変わった?令和5年度法改正【不正競争防止法編】


知財の法律の一部が変わる

  商標法などの知財の法律は、定期的に改正されます。
 令和6年4月1日、改正された法律「不正競争防止法等の一部を改正する法律」が施行されました。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/hokaisei/sangyozaisan/fuseikyousou_2306.html

 今回は、不正競争防止法で大きく変わった制度を紹介します。

不正競争防止法の改正点その1 「他人の商品形態を模倣した商品の提供」の、「商品形態」の範囲が広がる

 不正競争防止法では、対象となる不正競争について定義があります。
 不正競争のひとつに、他人の商品の形態を模倣した商品を、譲渡、貸し渡しなどすることがあります。
 現状では「商品形態」を、形をもっているもの(有体物)に限定しています。
 しかし改正で、形を持っていないもの(無体物)も含まれることになります。

 例えば、デザインに特徴のある衣服について、これまでは有体物の衣服として模倣し、販売・レンタルした場合のみ、不正競争に該当しました。
 改正後は、その衣服をメタバース空間で無体物として模倣したものを販売・レンタルする場合も、該当します。
 また、メタバース空間で販売・レンタルしているデザインに特徴のある衣服を、有体物の衣服として模倣し販売・レンタルした場合、又はメタバース空間で無体物として模倣し販売・レンタルした場合も、該当します。
 単なるイラストの場合は、原則規制しません。

 改正の理由は、近年メタバースなど仮想空間における、精巧な衣服や小物等の商品の経済取引が活発化したことによります。
 有体物の衣服や小物だけでなく、デジタル空間上の商品の形態模倣行為も、規制する必要があるためです。

不正競争防止法の改正点その2 「限定提供データの不正取得」の、「限定提供データ」の対象が変わる

 不正競争のひとつに、ビッグデータ(限定提供データ)の取得・使用・開示があります。
 限定提供データの対象は、現状では「業として特定の者に提供する情報として電磁的方法により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報であって、秘密として管理されていないもの」となっています。
 しかし改正で、ビッグデータの対象に、秘密管理されたものも含めることになります。
 これにより、秘密管理されているか否かに関わらず、ビッグデータの取得・使用などについて、規制することができます。

 改正に至った経緯は、ビッグデータ保護制度が創設された平成30年法改正から始まります。
 当初ビッグデータは、他者と共有するものと想定されたため、「秘密管理されていない」ビッグデータを保護対象としていました。
 実際には、「秘密管理されている」が「公然と知られている」ビッグデータがあり、ビッグデータ保護制度でも営業秘密保護制度でも対象外となっていて、問題となっていました。

まとめ

 今回は、商品形態の不正競争と、限定提供データの不正競争について、紹介しました。
 
 商品形態の不正競争については、メタバース空間が大事な市場になりつつあることを実感しました。
 また、限定提供データの不正競争については、一口にビッグデータといっても色々な状態のものがあると把握しました。

 そして不正競争防止法は、技術の発達によって柔軟に変わっていく法律であると、改めて思いました。
 今後も、技術革新に合わせた、想像の範疇を越えていくような改正がありそうです。

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