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「学びほぐし」アンラーニングで止まらない成長を

今日のテーマはアンラーニングです。「学びほぐし」という訳を当てることもありますが、これまで学んだやり方・信念を捨て去り、新しいやり方と入れ替えるという考え方です。人や組織は、外部環境や役割が変わったときには従来のやり方を見直す必要があり、これを実践できた人や組織が成長し続けることができるのです。
本稿では個人がアンラーニングするにはどうすればいいのか、まとめていきます。

今日の一言サマリ

アンラーニングを実現するには、学習志向と自己変革スキルを高める本人と周囲を取組が重要である。


参考にした書籍

松尾睦、2021、「仕事のアンラーニング: 働き方を学びほぐす」、同文舘出版


アンラーニングの定義

アンラーニング研究は組織レベルから始まり、チームレベル、個人レベルへと発展していきました。松尾は、個人のアンラーニングを「個人が、自身の知識やスキルを意図的に棄却しながら、新しい知識・スキルを取り入れるプロセス」と整理しています。

アンラーニングは、既存の知識やスキルをただ忘れるのではなく、新しい知識やスキルと入れ替える、というイメージになります。

なぜアンラーニングが必要なのか

アンラーニングが求められている理由は、環境の変化に合わせて仕事の進め方や考え方を入れ替えていかなければ、成長が止まってしまうからです。例えばプレイヤーとして活躍していたビジネスマンがマネージャーに役割が変わった時、それまでプレイヤーとして役に立っていた知識やスキルの一部を棄却し、新しいものに入れ替えなければなりません。
アンラーニングの成果としては、職場への影響としては業務効率の向上、課題解決、他者との信頼関係構築、部下の意欲・能力向上、業績向上が挙げられています。自身への影響としても、業務効率の向上、課題解決、意欲の向上、精神的・肉体的余裕、業績向上などが明らかになっています。

アンラーニングを阻害するもの

たくさんのメリットがあるアンラーニングですが、行うのは簡単ではありません。アンラーニングの阻害要因としては、新しい知識の獲得自体が難しい、職場の理解不足、心理的抵抗感などが挙げられます。一人でアンラーニングを成し遂げることは難しいため、組織的な支援が必要とされています。
心理的抵抗感については、自分の得意な形に逃げてしまう、有能さの罠という形で表出することがあります。松尾はこれを自己模倣と呼んでいます。過去うまくいったやり方を、人は中々変えることができないのです。

アンラーニングを促進する要因(本人編)

ここからはアンラーニングの促進要因を挙げていきます。個人のアンラーニングの促進要因の調査では、個人の持つ①学習志向が、②内省を促し、③深い振り返り(批判的内省)を通じてアンラーニングを促進していることが分かりました。
①学習志向…自分の能力を高め、学ぶことを重視する個人の特性
②内省…ここでは仕事の目標・方法・アプローチを見直し、修正すること
③深い振り返り…当たり前となっている信念や前提を問い直すこと

またアンラーニングできるようになるためには、自身が自己変革スキル(personal growth initiative)を獲得する必要があります。これには、以下の4つが含まれます。
①変革の準備…何を変える必要があるか理解している
②計画性…実現可能な計画の立て方を知っている
③資源の活用…積極的に周囲の支援を求める
④意図的行動…成長の機会を見逃さない
ここでは③資源の活用が特筆する点です。アンラーニングは本人だけでやろうとせず、周囲の支援を積極的に活用する姿勢が求められるのです。

アンラーニングを促進する要因(状況編)

状況面でのアンラーニングの促進要因の調査からは、上司の探索的活動が部下の学習志向を高めることがわかりました。上司が日々の仕事で新しいチャレンジに取り組むことが、部下に伝播していき、部下の学習志向を高めると考えられるのです。

(まとめ)アンラーニングのプロセス・モデル

以上、アンラーニングのプロセスと促進要因をまとめると下図のようになります。個人の持つ学習志向・自己変革スキルが、経験に対する深い振り返りを促し、新たな信念やスキルの獲得につながるのです。

仕事のアンラーニング P138

実践への示唆

最後にこの研究がビジネスパーソンにとってどんな示唆を与えてくれるか、考えてみましょう。
アンラーニングしたい人が覚えておくべきことは、アンラーニングは戦略的に取り組まなければ実現できないということです。特に成功体験のある人にとって、過去のやり方を変えることは心理的な抵抗が強いでしょう。そのため、アンラーニングの実現のためには積極的に周囲のサポートを利用する姿勢が必要なのです。コーチングを受けるなどがサポートの例となります。
部下にアンラーニングさせたいマネージャーが忘れてはならないことは、本人の学習志向を高めるために、上司の革新的行動が重要な意味を持つということです。上司が新しいことにチャレンジする背中を見て、部下は学習志向を高めるのです。部下にアンラーニングさせたければ、まず上司が変わる姿勢を見せなければなりません。

本稿では、アンラーニングを促進する要因を解説しました。変化の激しい時代に、これまでのやり方が通用しない、という状況が頻繁に見られるようになりました。アンラーニングは現代のビジネスパーソンの必須スキルと言えるかもしれません。

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