第8回 ヒゲとわたし (2007年10月)

 ぼくはここ数年ヒゲを生やしていました。とは言ってもボーボーではなく無精ヒゲに毛が生えた程度(?)です。自分的にはこれで落ち着いていたのですが、先日NEWアルバムのジャケット撮影の折、今回はさわやかにいこうということで事務所社長より「ヒゲ全剃り令」が下されました。
 髭を剃り落とす。多少の未練はありましたがこれは勅命、お上の下知には従わねばと潔くヒゲを剃り落としました。翌日、「みんななんて言うかなー」と髪を切って彼氏に会いに行く女の子のようにドキドキしながら事務所に行くと、社長、メンバー、一貫してノーリアクション。ヒゲの「ヒ」の字も口にしない。我慢できずとうとう「あの、ヒゲ剃ってきたんですけど」と自分から告知すると、「あ、そういえばないね」「ほんとだー」…。髪を切ったことを彼氏に触れてもらえない女の子の気持ち、よくわかりました。
 そんなヒゲのないさわやかなジャケットのNEWアルバム『友達の彼女』は10月17日全国発売です!!プロデューサーはあの佐久間正英さん!ぜひ聴いてください!


(後記)
 ぼくのヒゲはある方がいいか、ない方がいいかというのは、当時から賛否両論が五分五分であった。「似合うから生やした方がいい」と言ってくれる人もいれば、「ない方がさわやかでよい」という人もいた。しかし、時を経て今はひとつの結論に至った。

”人は他人のヒゲなんかに興味はない”

 これが真理である。
 あってもなくても知ったこっちゃない。若い頃はそれがわからなかった。自意識過剰もいいところである。青い。実に青い。
 青いとはいえ、ぼくのヒゲの濃さは適度であり、剃った後が青いこともなければ適当に生やしていても程よく生えてボウボウになることはない。なので、濃すぎるとか、生やしたいのに生えないとか、そういう悩みとは無縁である。それはよかったなと思う。
 今、ヒゲはどうしているかといえば、「あったりなかったり」である。気がつけば伸びていたり、思いつきで剃ったりする。生やすにしても生やさないにしても、人前に立つときはちょっと清潔に整えるというくらいなもんである。
 社長にヒゲを剃れと言われた当時のぼくは27歳。12年前の自分に伝えたい。言ってくれる人がいるのがどれだけ幸せなことか。誰もあんたのヒゲになんか興味ないんだから、と。
 こんな文章を書いたところで、誰も興味はないと思う。今、これを書きながら、目の前にいる人に「ぼくはヒゲがある方がいいと思う?ない方がいいと思う?」と聞いてみた。

「小倉くんとのバランスじゃない?最近小倉くんがワイルドだから、なくていいんじゃない?キャラクターの棲み分けって大事だよ」

「ほら、興味がない」というオチをつけたかったのだが、まさかの的確すぎる回答に「…はい」としか言えない。今すぐにヒゲを剃ろうと思ったのであった。(2019.6.5)

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