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2022/02/13 読書会『京大的アホがなぜ必要か』

2/13の夜、定期的にやっている読書会をした。課題図書は『京大的アホがなぜ必要か』という本である。

ぼくは京大出身じゃないけど、自由のイメージがある京大への憧れはある。そして本書は、学問における自由や多様性の大事さを主張している。

この本の著者の酒井敏先生は、京大の学生だったときに、なんと一輪車で通学していたことがあるそうだ。ぶっ飛んでいる。しかし、そういうことが許される雰囲気があるのは、すばらしいことだ。

本書は、そういうアホみたいな(失礼)行動を称賛しているのではない。学問的研究において、一見アホに見えるような問題にこそ、価値があるということだ。

現在の日本では、すぐ役に立つ研究が求められる風潮があるが、それには欠点がある。

脱線する読書会もありじゃない?

僕らの読書会は毎回のように脱線するのだが、この本を読んで、それでもいいんだよと肯定された気分になった。

僕らは真面目な話もすれば、アホな話もする。いや、はたから見ればアホな話しかしていないかもしれない。

しかし、それが楽しい。一人じゃ思いもよらない考え方を得られたりする。一種のセレンディピティである。

それだけ脱線しても、不思議なことに、いつも必ず帰着するところがある。それは文学とは何か、言葉とは何か、学問とは何か、などのテーマだ。それを考えると、世の中のさまざまな問題は、つきつめれば繋がっていると感じる。

役に立たない知識を持つ意味

ぼくらが話していることは、お金になったり多くの人を喜ばせたりという意味では、役に立たないだろう。

しかし、『京大的アホがなぜ必要か』によれば、役に立たない知識が、まわりまわって役に立つことがあるのである。

スティーブ・ジョブズ「コネクティング・ドッツ」

それは、スティーブ・ジョブズが「コネクティング・ドッツ(点と点をつなぐ)」と題した講演で話したことと、繋がる。

この講演によれば、やっているそのときは、何の役に立つかわからないことでも、あとになって非常に役立つことがある。

ジョブズの場合は、大学を中退したあと、もぐりで受けたカリグラフィ(西洋版の書道のようなもの)の授業が、マッキントッシュの美しいフォントにつながった。これは、ジョブズが大学に通い続け卒業していたら、ありえなかった。

社会の役に立つこと、みんなと同じようにルールを守ること。それは必要なことではあるが、その基準にしばられすぎると、創造性を失ってしまう。

Mr.Children / tomorrow never knows

Mr.Children の tomorrow never knows には

少しくらいはみ出したっていいさ
夢を描こう

誰かのために生きてみたって
Tomorrow never knows(明日はわからない)

心のまま僕は行くのさ
誰も知ることのない明日へ

という歌詞がある。これをぼくなりに解釈してみたい。

つまり、社会の役に立とうとしても、それが必ずしもそうなるとは限らない。むしろ、多少社会のレールからはずれても、自分の心に素直にしたがった方がいい。

そうすることで、結果として大きな功績となる可能性もあるのだ。ジョブズや桜井和寿さんほどの個性は、世間体に縛られないことから生まれた。

『論語』の言葉

古代中国の賢者、孔子の言葉をしるした『論語』。その中に

これを知る者はこれを好む者に如(し)かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如(し)かず。

という言葉がある。

要するに、なによりも楽しむことが大事ということだ。2,500年近く前の人物が、このように言っているのだから、普遍的なことだと言える。

特に、現代のような不確実性の時代においては、特定の基準にしばられすぎると、かえって弊害が大きい。予定調和的な、みんなが思い描く理想のルートのようなものは、もはやない。

大嫌いな奴も含めての多様性

変わったことをしていると、まわりから疎まれることもあるだろう。それに関して、『京大的アホ2がなぜ必要か』の酒井さんの主張は、その通りだと思った。

それは「大嫌いな奴も含めての多様性」ということだ。差別はよくないけど、そういう人がいるのは仕方のないことだよね、ということだ。

そう、嫌いな人やものが存在するのは、当然だ。嫌いなものは排除したい、人はそう考えてしまうことがある。

逆に言えば、自分の考えをすべての人に受け入れてもらうことはできない。どうしても受け入れられないことはある。好き嫌いは人それぞれだ。

それを前提にすれば、みんなに気に入られようとするのは無意味である。

少しくらいはみ出しても、好きなことに集中する。それで嫌われることもあるかもしれないが、そういう人がいてもいいじゃないか。


京大的アホがなぜ必要か カオスな世界の生存戦略 (集英社新書) 



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