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どうしようもない僕がTwitterを炎上させてTwitterを好きになった話

2019年を振り返る時、6月22日を忘れることはできない。あの日のことは何度も思い出してるからはっきりと覚えている。

僕はその日久しぶりに会う高校の頃の友達と大宮で待ち合わせしていた。
大宮だと大抵飲みにいくところだが、その日は一駅離れたさいたま新都心に用があった。スーパーアリーナでセカオワのライブだった。そう、あのSEKAI NO OWARIだ。


この日は友人だけでなく、友人の彼女も一緒だった。
しばらく会わないうちにセカオワ好きになった友人が、本来別な人と行くはずだったチケットが急遽キャンセルになり、代役にと僕に声をかけてくれたのだ。
僕が音楽好きで、しかもセカオワ好きだということを覚えててくれたらしい。
素直に嬉しかった。

友人の彼女とは一度会ったことがあったから自然と過ごすことができた。
その日は雨だったから友人は傘は持ってきてたけど彼のはどう考えても雨の勢いからすると小さすぎた。


なぜか彼女は傘を持ってきていなかった。
その時は少し疑問が浮かんだが、すぐに忘れることにして、僕の大きな傘を2人に貸し、友人の小さいやつを僕が差した。

ライブは夕方18時からだったと思う。
お昼頃集まったから少し駅から離れて昼ごはんを食べることにした。


新都心なんて言っても駅から離れた場所にお店は少ないし、雨だから近くのバーガーショップに入った。


すごい行列で、座るまでに1時間くらい待った気がする。
普段あんまり食べないようなお洒落なバーガーショップだった。
バーガーにアメリカ国旗が刺さってた。
座る前に注文して支払いをするシステムだったから、これから結婚を控えた2人に祝福の気持ちでご馳走することにした。
2人も喜んでくれてよかった。

しばらくしてからお店を出た。雨もやむ気配はなく、ライブまではまだ時間があった。
商業施設があったから、せっかくなので座るところを探しながら施設の中をぐるっと一周した。


その施設は吹き抜けになっていて、緑と空の一体感が晴れた日はさぞかし素敵なんだろう。
雨の日には吹き抜けなんてマイナスの意味しか持たないと濡れたベンチを見ながら思った。

結局駅へ戻り、コンコースの長いベンチに座ることになった。
駅前は人でごった返していて(ほとんどがセカオワライブに行くんだろうが)、何人かのラブにも会った。
ベンチは空いていなかったから少し待つことにした。てきとーな場所でホームレスみたいに上着をシートにして、カバンをクッションにした。

それにしてもすごい雨だ。駅のコンコースは屋根があるが風が入る設計になっていて、隙間から強風で雨が入ってくる。
こんな日は都市開発の建築家すらも呪いたくなる。
一瞬ベンチに座っていたおばちゃんが立ったことを見逃さなかった。僕はすぐに空いたベンチに走り勢いよく座った。2人も笑いながら後から続いた。

ようやく座る場所にありついた僕ら3人はひとしきり今日のセトリについて予想をした。もうテンションが上がってしまっていて、何を話したか覚えていない。
むしろこれまでの記憶が良すぎたくらいだ。ライブまで時間を進める。

セカオワの4人はすごかった。
詳しい事は省くけど、愛に溢れた会場で、幸せな時間がただ流れ、最高のライブだった。

セカオワのライブは毎回ではないけど、写真撮影が許可されていた。フラッシュ撮影や動画撮影は通常のライブと同様、禁止されていた。

友人と話をしていて、アナウンスをちゃんと聞いていなかった。僕は動画撮影もOKだと思って、ライブ中に動画を録っていた。
すごくいいシステムだよねなんて話していた。実際写真撮影はファン想いの素晴らしいシステムだった。
そして何の気なしに撮影した動画をツイッターにアップした。

その頃僕は頻繁にツイッターを更新してなくて、ほとんどスマホ自体見ない生活だった。

ライブから2日後の月曜日、いつも通り会社で仕事をしていて、お昼ごはんに行きつけの中華料理屋に入った。
日替わり定食を頼んで、予想通りすぐに配膳されてきた。今日は排骨飯(パイコーハン)だ。

何度かパイコーハンを口に運んでふとスマホを見るとツイッターの通知がきていた。
僕はほとんどツイート自体しないから通知なんて普段はこない。何だろうと思って見るとDMだった。イタズラか何かかと思って、それを開いた後は体の震えが止まらなかった。

セカオワのファンと思われる人からのメッセージだった。(引用だと個人が特定されると困るので僕の言葉で書き換えておく。)

そこには、動画撮影は禁止されてるんです、写真撮影はOKなんですがルール違反をする人がいると写真撮影すらも禁止される可能性があるのですぐに動画を消してください、と書かれていた。

本当に意味が分からなかった。すぐにセカオワの公式サイトでルールを確認した。たしかに動画撮影は禁止と書かれていた。やってしまった。

これはいつあげた?24時間以上経っている。ツアータグを付けていたからかなりの人が目にしているはず。自分のページに入ろうとしたが次々に通知が来ていて、もう開くのもやっとだった。とにかく投稿はその場で削除した。

セカオワのライブ動画をあげてから僕のタイムラインは見たこともないメンションツイートに染まっていた。
DMをくれた人とメンションにはすぐに返信して謝罪した。
明らかにファンは動揺していた。ルールを守っている人もいるのに不平等、ルールがこの事で変わってしまうかもしれない恐怖と憤り、こいつは悪意をもって荒らしにきているのか、ルールを見てないのか、アナウンスを聞いてないのか…。

自分がやってしまった事の重大さに気付いて誰宛でもなくツイートで謝罪した。
ルールを間違って認識して、しかも投稿してしまった。みんなに不快な思いをさせた。今後のセカオワの活動とファンの思いからすればもう僕がライブに行く権利はないという話をしたと思う。


驚いた。
あんなに炎上してたタイムラインが静かになった。ファンの集いである人が拡散してくれたからだった。DMもたくさんきた。逆に言い過ぎたと謝る人も多かった。大丈夫だからまたきてと言ってくれる人もいた。その人が言う通り、本当にファンの人たちは優しかった。それ以降、誰からも批判的なメンションやDMはこなかった。


そこから繋がりができた人もいた。ある人とはそれから数日メッセージを交換した。たわいもない話を自然にしてくれて嬉しかった。僕がまたツイートできるまでたわいもない会話を続けてくれた。あれは僕がTwitterに戻れるようにリハビリしてくれたんだと後から思った。

ある日、その人から変な時間に連絡がきた。
いつもは昼間連絡を取っていたが、あれは夜の23時くらいだった。
もう寝ようかと思っていたが、突然「〇〇(僕の名前)さん」とリジェットが見え、思わず開いた。


長いこと病気か何かで体調が悪かったとかでもうTwitterに帰ってくることはないと言われた。いやいやそんなはずはない。いつもすぐに返事をしてくれたし、こんな僕に優しくしてくれた。あんなに元気に見えたのに急にそんな。


その人は僕の気持ちの整理を待たずにこう言った。
〇〇さんに会えてよかった。このアカウントはもう人生の最後に削除してしまうから最後に連絡をしたかった。ありがとうございました。

僕はそれまでSNSなんて全然好きじゃなかった。顔の見えない相手に自分の意見を押し付けて好き勝手言っているだけなんだろうと思っていた。
でもそれだけじゃなかった。本当にこれを書いている今はその人の名前を出したくてしょうがない。その人がいたことを忘れないために、誰かに少しでも知ってほしくて書いている。でも自分からアカウントを消すことを選んだ彼女に僕は何もしてあげられない。
あんなに優しい人がいるのに。それがSNSなのに。自分の言葉で相手に向き合えばちゃんと人間関係はつくれるのに。

それを教えてくれた彼女に、ただ報いる人生にしたい。そう思った。

ありがとうございます!先にお礼言っておきます!