💡きっと知らないデザインメイキング全部見せます！｜VTuberさん名刺編

こんにちは！デザイナーの山中です。

普段はゲームやエンタメ関係のお仕事をフリーランスでやっています。
今回はTwitter上で企画した名刺デザイン企画のデザインメイキングを公開しようと思います！

いつもながらボクのnoteはめちゃくちゃに長いです…！お時間のある時にご覧ください！

このnoteは紙媒体のデザインに興味のあるデザイナーさんや、同業者のデザインフローが気になるデザイナーさん、あとはお名刺の依頼を考えているVTuberさんや発信者の方に向けたものになります！

YNK.Design

名刺企画について

作成したお名刺

「ボクのおまかせで名刺を作らせてください！」とTwitterで3名様を募集し、ご応募いただいた方々に…

• 名刺に入れたい要素

• 希望モチーフ・画像

• イメージ

をそれぞれお伺いしてクライアントワークとほぼ同じように

1. ヒアリング/リサーチ

2. ラフ作成

3. 初稿チェック

4. 最終稿チェック

5. 入稿・納品

という形で進めさせていただいた企画になります！

制作の流れ

使ったソフト

プロクリエイトはラフを描くだけなのでアナログでもOK

今回はAdobe Illustratorでデザイン・版下作成を行って、頂いた画像の補正や形式変更などにAdobe Photoshopを用いました。

ラフスケッチはiPadでProcreateを使って行っています。

実例紹介のその前に…簡単な入稿テンプレートの作り方から

いきなり実例を紹介していっても良いかな…と思ったのですが、基本的な入稿テンプレートの作り方を紹介したほうがスムーズに伝わるかと思いましたのでご紹介させていただきます！

印刷所さんにテンプレートがあれば必ずそちらを利用いただいて、もし無いドキュメントや非定形のサイズを作りたい場合などに活用いただければと思います。

新規ファイルを作成しよう！

塗り足しを作ろう！

ガイドとトリムマーク（トンボ）を作成しよう！

デザイン用レイヤーを追加してフィニッシュ！

基本はこの流れです。仕上がりサイズを変更すればさまざまな用途に使えるので基本的なお作法として覚えておくときっと役に立つと思います！

🐧お一人目：「華墨しゅか」さん

バーチャル郵便屋さんの華墨しゅかさん！

華墨さんのチャンネルはこちら！
https://www.youtube.com/channel/UCx06rwAf9hxFnpx6301nuLQ

しゅかぺんチャンネル

ヒアリング

原文ママでのやりとりです！

ヒアリングではあらかじめお相手の事をリサーチさせていただいたうえで「文言」「モチーフ」「イメージ」を引き出していきます。

この際注意が必要なのがあくまで「先方の中にあるイメージを引き出す」事を心がけることで、自分が表現したい事に誘導しないようにする必要があります。

ラフスケッチ

絵のうまさは必要ないぜ…！

ヒアリングさせていただいたイメージやモチーフを元にざっくりと図形やレイアウトなんかを描いていきます。

この際にIllustratorなどを用いてももちろん良いですが、手書きやペンタブ、Procreateなどフリーハンドで描くツールであればソフトウェアの習熟度に縛られず自由に表現できるのでオススメです！

Illustratorでデザインラフを作成

最終イメージがおおよそ固まってきます

ラフで描いたレイアウトをIllustratorを用いて原寸サイズでレイアウトしていきます。

ボクはこの時点で最終的な版分けの可能性を考えてすべてベクター化していきます。QRコードの掲載をご希望いただいていたのですが、少しでも雰囲気を壊さないようにイラスト入りのものを作成していきました。

支給いただいた画像をPSD化

支給いただいた画像は必ずPSDにしましょう！

印刷に使うビットマップ画像はjpgやpngのままにはせず、基本的にはPSDに変換しましょう。

解像度は印刷物によりますが、お名刺など線数の高いものであれば基本的には300〜600の間、ほとんどの場合350で問題ありません。

より詳しく解像度の事を知りたい場合はこちらのnoteもどうぞ！

画像を補正しよう

CMYKい変換して色補正をします

カラーモードをCMYKに変換して、RBG画像と並べて色補正をしていきます。

この際直接画像を編集するのではなく「調整レイヤー」を使っておけばやり直しもしやすいのでオススメです。

仕様検討＆裏面デザイン

機能を意識してデザインしましょう！

デザインは情報設計だとボクは思っていて、見た目の美しさや仕組み、手触りなども含めてどういった体験を与えられる情報になるのか…という事が大事だと思います。

この場合表面でかぼくさんのお名前やビジュアルを認知させる事は出来ているので、裏面はよりその世界観を伝えられる…かぼくさんでいえば「ひつぺん村でゆうぺんずと生活している」という事をはじめて名刺を受け取った方にも知ってもらえるようなデザインであればより良いと考えました。

初稿デザイン完成！

仕様もおおよそ決めます！

初稿を提案する段階でおおよそ以下を決めきります

• デザイン

• 紙の種類（厚みも）

• 色仕様

• 加工

仕様はもちろんデザイナーとしてのエゴも含まれはしますが、最優先はそのクライアントさんの目的が最も叶うものか？で考えていきます。

無事OKをいただいたので入稿に向けてブラッシュアップ！

甘いデザインを直していきます

ざっと作ってしまっていたディティールの甘い部分を修正したり、空白が寂しい部分を埋めるオブジェクトを作成していきます。

この際もヒアリングさせていただいた要素から起こしていくことを心がけます（若い時は意味なく空間を埋めるデザインをしてしまったこともありました…反省）。

また、印刷物は最低の線幅などの出力サイズが決まっているのでそのあたりも意識して調整していきます。

裏面ニス加工のために版分けします

手でやるとしんどいんじゃよ…

版分けというのは加工用の部分を別ファイル（ないしは別レイヤー）に分ける作業です。

ほとんどの場合K100で加工範囲のオブジェクトを作る事になるのですが、イラストのような複雑な形状をゼロから起こすのは不可能に近いのでPhotoshopやIllustratorの機能を使ってサクッとアタリをつけて、細かいところを修正していきます。

入稿データ作成

今回はオモテ・ウラ・ニスの3つ

版分けが終わったらオモテのCMYK、ウラのCMYK、ニス用の版の3つを作成します。

データ自体を分けるのかレイヤー別で良いのかは印刷所さんによって違うのしっかり確認して作成しましょう。

指定が無くても作ろう！印刷見本

仕上がり想定が分かればOKです！

印刷見本とは「こんなふうな仕様と見た目で出来上がると製作者は思ってますよ」という画像です。

印刷所さんによっては上記のようなものではなく原寸サイズのものをご希望される場合もあるので印刷所さんに合わせましょう。

クライアントさんにお渡しするものは上記画像のようによりわかりやすく直感的なものであればOKだと思います！

完成デザイン＆最終仕様

完成しました！

華墨しゅかさんのお名刺完成です！仕様はこちら

• 印刷所：株式会社グラフィック 様

• 紙：インバーコートM-FS 301kg（かなり厚め）

• 加工：OPニス（つやあり）、角丸6mm

• フォント：FOT-ロダンNTLG Pro、FOT-ユールカ Std UB、めもわーる-まる

全体的にしっかり可愛らしく、それでいて華墨さんとしゅかぺんず両方が魅力的に伝わるようにデザインしました。

実物のお写真はこちら

紙厚があるのでしっかりした印象です！発色もコート系なのでキレイ！

✨

🌔お二人目：「uni」さん

お耳の恋人・眠りの案内人の新人VTuber uniさん

uniさんのチャンネルはこちら！
https://www.youtube.com/@uniASMR

uniの箱庭

ヒアリング

丁寧で具体的！

今回の皆さんはVTuberさんという事もあると思うのですが、ご自身のイメージもしっかりしていて、文言や資料もとても丁寧にまとめてくださっていたのでたいへんスムーズでした。

ただ、デザインをご依頼いただく方はほとんどがデザインやクリエイティブ領域の方ではないので、よりイメージしやすいようにすでに世の中に存在しているデザインなどをベンチマークとしてすり合わせをしていくと良いでしょう！

ラフスケッチ

キラキラで繊細なイメージを広げていきます

ボクはあまり絵が得意ではないのですが、最終的な仕上げにおいては写真を撮ったりイラストを購入したりするので、一番理想的なイメージを自由に描いていきましょう！

デザインラフ

ラフを元にデザインを何方向か作成します

レイアウトを作りつつ、同時に同じ文言でフォントを沢山ならべて最もイメージに近い書体を探していきます。

PSD化＆補正

uniさんの色はかなり繊細なので丁寧に補正します

RGBをCMYKに変換すると色あせますがこれはRBGが光によって表現されているため黄緑のような色をつくる場合に混色しても常に明度が保たれるのに対して、CMYKは物理的なインクなので混色するほどに透明度が下がり暗く色が落ちていくためです（実際にインクを混ぜるわけではなく結果的に光を吸収する事になるので暗くなるのですけれどこの辺りはとても難しいので混色の色は暗くなる、ぐらいの理解でOKです！）。

そのためRGB→CMYKでの色補正時にはCMY以外の混色になりえる色を中心に彩度や明度を引き上げていくとキレイに補正できます！

モチーフのバリエーション出し

月はuniさんの大切な要素なので丁寧にバリエーション出しをします

今回のモチーフの使い方としてはお姿を引き立てる使い方を考えていたので、主張しすぎず…それでいてしっかりと意味が伝わるようなデザインにしたいと考えていました。

初稿デザイン完成！

裏面はタロット風に！

おおよその仕様を決めて提案します。uniさんの場合は可能であればオモテとウラそれぞれ別の加工をしたかったため3つの印刷所さんに相見積もりを取っています（グラフィックさんは加工は片側のみだったため）。

オモテはニス、ウラのアールデコ調の模様は箔押を想定しています。

加工用に線を調整していきます

裏面の箔押しにするオブジェクトの線を調整します

箔押しは最低で0.2pt程度まで出力される…といわれていますがかすれてしまう可能性が高いので0.3pt以上になるように調整していきます。

また、よりクラシックで繊細な印象が強まるようにデザインを追加します。

オモテ面もブラッシュアップ

お花（ブルーマロウ）を中心に整えます

ざっと描いていた花をキレイに書き直していきます。また、手元のプリンタで出力した時に読みにくく感じた文字を大きく調整していきます。

印刷において文字は3.5ptぐらいは出ますがそれはあくまで最小サイズ、安定してちゃんと読ませたい場合は5pt程度はあるといいと思います！

入稿データ作成

今回はオモテウラ両方加工想定なので4版です

ニスは裁ち落とし位置に加工は出来ないと言われる事が多いので、断ち落とし位置から2mm内側に来るようにデザインします。

箔は裁ち落とし位置でも大丈夫なことが確認できていたのでフチまでデザインします。

印刷見本を作成！

加工バリエーションも作成して確認します！

印刷所さんからお見積りを戻していただいたのですが、自分の想定が甘くて予算を超えてしまったため、オモテとウラ、可能はどちらかを採用する事としました。

uniさんに選んでいただくために各種バリエーションの印刷見本を作成して選んでいただきます！

完成デザイン＆最終仕様

完成！

uniさんのお名刺完成です！仕様はこちら

• 印刷所：株式会社グラフィック 様

• 紙：ヴァンヌーボVホワイト275kg

• 加工：箔押し（銀消）、角丸2mm

• フォント：FOT-筑紫ヴィンテージ明S Pro R、FOT-筑紫アンティークL明朝 Std L、Diplomata SC

表面はuniさんのお姿を中心として音が広がるようなイメージに。裏面はつや消し銀箔を使ってuniさんの活動と紐付いた月の満ち欠けを上品に表現してみました。

実物のお写真はこちら

銀白の照り返しがキレイ！

ヴァンヌーボのテクスチャ感のある質感と箔が噛み合ってとても上品な名刺に仕上がりました！

✨

🌸三人目：「桜咲」さん

魑魅魍魎VTuber！VRコンテンツのクリエイターさんでもあります！

桜咲さんのチャンネルはこちら！
https://www.youtube.com/c/SakuraSakiV

桜咲V

ヒアリング

可愛さと魑魅魍魎感…！これは難易度が高いです

ヒアリング時に一番気をつけてる事は"先入観"です。自分の中にある可愛さやカッコよさを基準として会話せずに相手が好きなものや共通で知っているものをイメージ出来るようにきちんと相手の（企業であれば企業の）リサーチを行うように心がけています。

ラフスケッチ

咲さんは沢山の活動をされているのでモリモリです！

ヒアリングのところとやや矛盾するのですが相手のイメージする事を大事にするのと同時に受け取る相手によりわかりやすく直感的に伝わるようにデザインしていくのも大事です。

たとえば和風という一言でも模様なのか墨文字なのか刀なのか…きちんと表現したいものに合わせて選択する必要があるな〜と思っています

デザインラフ

大正といえばロマン雪！

咲さんはVRコンテンツを沢山作成されていたり、VRChatを活動の場にされている事が多いのでVRHMDを模した加工（エンボス）をしようと考えていました。

加工を活かすならこのレイアウトかな〜と最初は横位置裏表で考えていました。

印刷に必要なサイズ・形式について

支給いただいたらまずはサイズと形式をチェックしましょう！

画像はPhotoshopではアップスケール（キレイに大きくする）のも限界があるため、基本的には印刷サイズより大きいもの…かつ劣化していないものを支給いただけるようにお願いしましょう！

また、上記画像の通りですがもともとキレイな画像であってもチャットツールなどを経由することで不可逆圧縮形式に自動的に圧縮＆変換されてしまう事もあるのでDriveやファイル便などを使いましょう！

細かいしつらえで個性を出そう！

作事する場合はご本人やプロダクトをイメージしてデザインしましょう！

フォントそのまま使うのももちろん良いですが、見出しや大きく使う書体は詰めや字形を調整されている事も多いです。

今回もお名前に咲さん要素を入れていくように調整します！

特徴的なパーツを作っていきます

エフェクトで生っぽさを出してみます

直線的なデザインや規則的なデザインは比較的作りやすく、安定したレイアウトになります。そこにちょっと生っぽい手書き風のエフェクトを入れるとちょうどいいアクセントになるな〜と思います！

アニメエフェクトの教本などを読むと炎や爆発、水などさまざまなエフェクトの描き方が描いてあってとても勉強になるのでオススメです！

初稿デザイン完成！

最終的に縦＆横にしちゃいました

表面はダイナフォントさんのクラシックなフォントとスクリプト体を組み合わせることで独特の大正感を演出してみました。

裏面は咲さんが様々な活動をしている事がひと目で伝わるように情報量を詰め込めるだけ詰め込んでみました！

細かい部分をさらにブラッシュアップ！

裏面柄をさらに調整していきます

支給いただいたイメージをさらに広げる形でどんどんデザインを起こしていきます。全部手で描いていくというよりもIllustratorの機能を使って効率的に作っていくと短い時間でスムーズに作っていけるのでオススメです！

よく使うのはパスファインダー、ブレンド、オフセット、押し出し・ベベルなんかをよく使います。

ニュアンスを足したい時はラフやジグザグを使っています！

フォントをモリモリに入れて仕上げます

裏面はほぼ完成です！

デザインにおいて1画面中に3書体以上を用いると素人っぽくなってしまうので、デザインを学んでるうちは「なるべく書体数を減らしましょう」と教わる事もあります。

ただ、狙って様々な書体を使い情報の密度をアップさせる事でまた違った効果を狙えます。今回は咲さんの様々な活動や興味の広さを表現するためにあえて多くの書体を盛り込んでみました。

書体を沢山使いたい場合はFontworksやDynafont、あとはMORISAWAさんのサブスクリプションサービスがオススメです！

ゲーム業界ですとFontworksが多いですが、アニメ業界にはややDynafontが多いイメージです。出版はMORISAWAが使われている事が多い印象です。

入稿データ作成

ウラのデータは左右をひっくりかえします

エンボス加工をするのでオモテ・ウラ・エンボス版の3枚を作成します。この場合裏が逆転するのでウラは左右をひっくり返す必要があります。

印刷見本で最終チェック！

仕上がりサイズで断ち落として影をつけてわかりやすくします

オモテ、ウラ、加工部分がひと目でわかるように画像化して確認していただきます！

完成デザイン＆最終仕様

完成しました！

桜咲さんのお名刺完成です！仕様はこちら

• 印刷所：株式会社グラフィック 様

• 紙：ヴァンヌーボVホワイト275kg

• 加工：押し出し（エンボス）、角丸2mm

• フォント：DFロマン雪A Std W9、DF古籍黒檀A StdN W7、ほか

今回「大正」と聞いてどうしても使いたかったロマン雪が使えて満足です…！

実物のお写真はこちら

手にとった瞬間にわかるエンボス加工が特徴的です！

発色もよくとても可愛くできました…！

✨

最後に

ここまで読んでいただきありがとうございました！これから紙媒体のデザインをやってみようと思うデザイナーさんや、他のデザイナーがどんな流れでデザインしているのかな…と気になる方の参考になっていたら嬉しいです！

ちょっとでもいいな〜と思ったらぜひTwitterや周囲にシェアしていただけると嬉しいです！

見ていただきありがとうございました！