ひいひいしちゃうカレーも

飲食店のカレーは専門店じゃない限りは大体市販のルーを使ったなんのこだわりも工夫もない万人受けする平均点のカレーだ。
私の父の作るカレーはいつも平均点プラス十点ぐらいのカレーだった。

日曜日の昼頃にカレーの匂いで目が覚める。「また煮込んでるのか」私も兄も母も同じ思いをしていただろう。
普段は家事なんて一切しない父だが、休日はたまに手の込んだ料理を作る。
カレーはしょっちゅうだったからハンバーグを作ってくれた時は嬉しかった気がする。

夕方になると完成が近づく。サザエさんを見ている私は15分おきにキッチンに呼ばれて味見をさせられる。カレーなんてどう作ったって美味しいのに何をそんなに気にするのか。

いつも少し辛かった。辛いのが苦手な私はバクバク食べれなかったがそれも言い出せなかった。父がせっかく無駄に揃えたスパイスを調合した味、そのまま味わいたかった。

食卓に家族が揃ってカレーを食べる。「美味しい!」待ちをしている父の顔はいつも滑稽だったがそれでも喜ぶ顔はどこか心が温まった。

きっともう父の手作りカレーを食べることはないだろう。たまに家に帰ってくるが私は父と話したくないし、会いたくもない。
それなのに思い出すのは楽しかったことばかり。
ひいひいする辛いカレーをまたいつか食べれたらいいな、とかバイト先の棚に置いてあったカレールーを見てぼーっと考えた日だった。

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