去年の冬、きみと別れ

去年の冬、きみと別れ/ 中村文則

二人の女性を殺害した写真家について本を書くことになった男は、写真家とその姉、関わりのあった謎の人形師を取材していく


本人も気づいていない真の欲望が他の何かを通すことで現れてくるってのがテーマだったように思う。

テレビタレントの性格を想像したり、遠距離恋愛の相手の生活を想像したり、でもその想像は常に自分の都合のいい願望だ。その願望と現実は確実に違うから、人は現実を知ってしまうと少なからず傷つくんだろうとそんなことを思った。

何かを作ることはそのまま自分の欲望を認識できる領域に持ってくることなのだろう。木原坂が自分の欲望を持っていないと知って、哀れに感じたのと同時に、自分自身も他人の欲望や考えに影響を多く受けていると思った。そしてそれが少し怖かった。

誰の影響も受けずに自分が心から本当にやりたいと思うことは、働かず家でゴロゴロしてたまにセックスをする生活をずっとしたいと思った。何も生み出さず、誰にも影響を与えず生きることは苦ではないし、もし本当にそんな生活が出来るとしたら、誰もがそんな生活を望むじゃないだろうかと思う。

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