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敬語誤用パターン3:名詞/動詞/形容詞のいずれかがわかりづらい

メールマナーコンサルタントの山田直毅(なおたか)です。

敬語誤用の3つのパターン

1.登場人物の上下関係/順序が入れ替わるパターン
2.言い回しを使用できる条件を満たしていないパターン
3.名詞/動詞/形容詞のいずれかがわかりづらいパターン

この記事ではパターン3「名詞/動詞/形容詞のいずれかがわかりづらいパターン」を解説します。

説明にあたり、関係する内容「二重敬語」について触れます。


二重敬語とは

二重敬語には2パターンあります。
・尊敬語+尊敬語
・謙譲語+謙譲語
同じ敬意ベクトルで言葉を重ねてしまうと「二重敬語」になります。


「お召し上がりください」

「召し上がる」+「お・・・ください」は、尊敬語+尊敬語の形で二重敬語の典型例として挙げられる表現です。こちらは多くの方が使用している言い回しなので、問題ない表現と言われています。


「お伺い致します」

「伺う」+「致す」は謙譲語+謙譲語の形で二重敬語の典型例として挙げられる表現です。こちらも多くの方が使用している言い回しなので、問題ない表現と言われています。「お伺いします」で十分丁寧に表現することができます。


「お読みになられる」

「お読みになる」+「・・・れる」は、尊敬語+尊敬語の形の二重敬語です。一般的には使われない表現なので誤用と言われています。「お読みになる」で十分丁寧に表現することができます。


「尊敬語+謙譲語」ねじれの誤り

二重敬語ではなく、尊敬語+謙譲語(謙譲語+尊敬語)のねじれも誤用のケースが多いと言われています。

例えば「先生は私をご案内してくださいました。」は先生が主語の文章ですが・・・。「ご案内する」+「くださる」は謙譲語+尊敬語のねじれ。先生が謙譲語で下がり、相対的に私が上がってしまいます。

誤用パターン1「登場人物の上下関係/順序が入れ替わるパターン」です。

正しくは「して」を取り除き「先生は私をご案内くださいました。」とし、尊敬語「ご○○する」を使用します。


「御利用される」の「御利用」は名詞?動詞?

「御利用される」は以下の2つに解釈できます。
A.「ご利用」+「される」 ※(丁寧)名詞+尊敬語
B.「ご利用する」+「・・・れる」 ※謙譲語+尊敬語

Aと解釈している方は誤った敬語表現ではないと言えますが、Bと解釈している方は謙譲語+尊敬語のねじれ構造による誤用と考えます。

正しくは「ご」を取り外して「利用される」「利用なさる」とするか「・・・れる」を使わず「御利用になる」「御利用なさる」とします。


「申し訳ございません」の「申し訳」は名詞?

「申し訳ございません」「申し訳ありません」の語源は形容詞「申し訳ない」です。「ない」を「ございません」「ありません」と言い換えたものと言われています。

※これらの表現は一般的に使われていますので誤用ではないと言われています。

「申し訳ない」が語源ですので「申し訳」を名詞として用いる場合は「が」をはさみ「申し訳がございません」「申し訳がありません」とすることで誤解が生じなくなります。


「とんでもございません」の「とんでも」って何?

「とんでもございません」「とんでもありません」の語源は形容詞「とんでもない」です。「ない」を「ございません」「ありません」と言い換えたものと言われています。

※相手から褒められて謙遜する表現として一般的に使われていますので、誤用ではないと今は言われています。

でも・・・「とんでも」ってなんでしょうね?

名詞ですか? 動詞ですか? 形容詞ですか?

「申し訳がございません」同様に「が」を挟み「とんでもがございません」とは言えませんから、名詞ではないですよね。

動詞だとすると「翔んでも」「跳んでも」「富んでも」・・・これも苦しいところです。

「とんでも」の語源は「途でも」、つまり「途でもない」が転じて「とんでもない」が生じたと言われています。「途」は道理や手段を意味する言葉です。

「とんでもない」は「道理や手段がない」が元の意味にあり、謙遜だけではなく、時には相手を強く非難する「あり得ない」という意味としても用いられます。

意味の面では「とんでもない」は誤解を生じる表現と言えます。誤用だと考えられる「とんでもございません」「とんでもありません」の方が、謙遜の代表的な表現として無難に使えます。


尊敬語・謙譲語は1つで十分

二重敬語・尊敬語+謙譲語のねじれ・名詞/動詞/形容詞の3パターンを紹介しました。

「ございません」「ありません」が付く言葉は形容詞「・・・ない」が語源かもしれません。意味や使い方に不安を感じたら語源を調べてみましょう。

「敬語もシンプルに」

丁寧に書きたいあまり、敬語をコテコテに盛り付けるとかえって誤用を招きます。詰まるところ、相手に敬意が伝われば十分です。文章はシンプルが基本。敬語もシンプルに書きましょう。

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