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敬語誤用パターン2:言い回しを使用できる条件を満たしていない

メールマナーコンサルタントの山田直毅(なおたか)です。

敬語誤用の3つのパターン

1.登場人物の上下関係/順序が入れ替わるパターン
2.言い回しを使用できる条件を満たしていないパターン
3.名詞/動詞/形容詞のいずれかがわかりづらいパターン

この記事ではパターン2「言い回しを使用できる条件を満たしていないパターン」を解説します。


言い回しとは

言い回しとは「表現の仕方」です。さらに具体的に言えば「言い方が違うけれど意味が同じ表現の仕方」のこと。

例えば「申し訳ない」「申し訳ありません」「申し訳ございません」。

「申し訳ない」は形容詞なので「申し訳」を名詞化して「ありません」「ございません」を付けるのは誤用と言われていますが、表現として一般的なため通用する言い回しとされています。


使用する条件とは

言い回しの中には「これとセットでしか使えない」「相手次第」など、条件が整わないと使用できない表現があります。以下に具体例を挙げて説明します。


具体例1:「下記」

お客様に伝えたい内容を、その後の文章や箇条書きなどでさらに詳しく説明する際「下記の通り」と表現するケースが見受けられます。

類似した表現「上記」「以上」「以下」には使用条件がありませんが「下記」だけは「記書きを伴う」使用条件があります。

「記書き」とは「記」と書いた次の行から具体的な説明を箇条書きなどで示し、説明の末尾に「以上」と書き添える書式です。

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メールはセンタリングや右寄せは基本できませんので「記書き」は困難です。解決方法は「下記」を「以下」に置換。


具体例2:「させていただく」

文化庁の「敬語の指針」には以下の2つの条件が書かれています。

自分側が行うことを,
ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い,
イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある
場合

つまり「許可を得る必要があるか」「自分が得するか」が条件です。

さらに噛み砕きますと、ビジネスメールでは
・相手に了解を得ていない場合
・相手の意図に沿っていない場合
が条件です。

メールを添削すると「させていただきます症候群」を見つけることがあります。「させていただきます」と書くと丁寧な印象になると思い、なんでもかんでも「させていただく」ゴマすり状態に。

添削した結果「させていただく」の半分以上は「いたします」が適切でした。相手から依頼されたことに対しては「いたします」で返しましょう。

相手から依頼されていないこと、相手が知らないことに対しては「させていただきます」で返します。

この使い分けをマスターするだけで、相手が意図していることについて話をしているのか、相手が意図していないことについて話をしているのか、を意識的に区別できるようになります。

これはビジネスメールだけではなく、ビジネス全般に必要なバランス感覚ですね。


具体例3:「いただく」「くださる」

文化庁の「敬語の指針」では、どっち使っても良いという結論に至っていますのでオマケ話です。

「いただく」は「もらう」の謙譲語です。
「くださる」は「くれる」の尊敬語です。

「いただく」「くださる」レベルでは言い回しとして違和感がありませんが、元の表現「もらう」「くれる」レベルではニュアンスが変わります。

主語の違いがニュアンスを変える原因です。
・「もらう」は主語が自分
・「くれる」は主語が相手

使い分けは主語を基準にします。
・自分からお願いする時は「いただく」
・相手の行為(好意)には「くださる」

相手に感謝を伝える際は「くださる」を使いましょう。
例 早速ご返信くださいましてありがとうございます。

相手の行動を表現する際は「くださる」を使いましょう。
例 先日ご共有くださいました資料について

相手に依頼する際は「いただく」を使いましょう。
例 お手数ですがご返信頂けますでしょうか。

パラグラフの冒頭で伝えましたが「いただく」「くださる」の使い分けはルールが曖昧になっていますので固執する必要はありません。

「使い方が間違っているよ!」と直すような話ではありませんので、誰かが間違っていても、寛容に受け止めましょう。

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