見出し画像

高崎駅近辺のメルヘン。

不足しがちなメルヘンを補給するために、群馬県藤岡市にある「メルヘンプラザ」を目指す、絵本作家の山田。
その前に、群馬の玄関口と言われる高崎駅に泊まることにしました。

宿泊したのは、その近辺ではおそらくもっとも古いであろう西洋ホテル。
入口で出迎える君は一体誰なんだい。

右手のその穴には、何を入れてほしいんだい。

部屋の鍵はカードではなく、いわゆるふつうの鍵に、20cmもあろうかというアクリルの角棒がぶらさがっています。
フロントのおじさまが「なにもかも古くてすいません」と恐縮しながら渡してくれましたが、これが好きで来てるんですからおかまいなく〜。

部屋は、天井もドアも低くて、ベッドも微妙に小さいので、自分が大きくなったようにかんじます。
これはもう、アリスですよ。不思議の国ですよ。メルヘンですよ。
アリスだと思えば、こんなアメニティも大きくなったり小さくなったりする魔法の薬に見えてきませんか。

……きませんね。手書きっておい、かわいいな。

夕方、おなかがすいてきたので、ホテルまわりでお店さがし。
居酒屋「安兵衛」に入りました。
コの字のカウンターのなかに、おかあさんが立っていて、おでんがぐつぐつ。
こういう店は、瓶ビールがいいですね。
おでんと、ぬか漬けをいただきました。

のれんのむこうの厨房では、やすべぇどんが、魚のすり身を練って、おでんだねをこしらえているんでしょうか。

力自慢で、心のやさしい、やすべぇどん。
おっかぁとふたりで、おでんやをやっています。
酒好きなのが、たまにきず。
お酒に酔っては、化けたキツネにからかわれています。
あるとき、酔っぱらって怒ったやすべぇどんは、いたずらギツネをひきさいて、こまかくくだいて、まるめて、おでんの鍋でぐつぐつ煮て、食べてしまいました。
朝起きて、ひどいことをしたと後悔したやすべぇどんは、キツネのお地蔵さんをつくり、毎日おまいりをするようになりました。
キツネの右手には、野原で摘んだきれいなお花がそなえられているんだとさ。

あぁ、さっきのホテルのあいつの右手の穴はそういう……。
いやいや、ちがいます。メルヘンです。メルヘンでもないです。

お腹が落ち着いたので、お店を出て、駅ビルへ。
群馬各地の民芸品や銘菓銘品が、たぶんぜんぶある「群馬いろは」のぜんぶの棚をチェック。
自分みやげに、鶴サブレを買いました。
鳩じゃないです。鶴です。
群馬県は鶴が舞う形をしてるんですって。へぇ〜。

それから駅むこうの「春川酒店」へ。
酒屋さんで立ち飲みできる、いわゆる「角打ち」ってやつですね。
お店の若いお兄さんに「高崎に来たのは初めて。群馬の日本酒が飲みたい。冷でキリッと」と伝えたら、「OKまかせとけ!」とでっかい冷蔵庫からいろいろ持ってきてくれました。
たのもしい〜。おいしい〜。


店長さんともおしゃべりしました。
利酒セットをみつくろってくれたナイスガイの、お父さん。
群馬の日本酒事情、高崎はなぜスパゲッティが有名なのか、駅を挟んでの街の確執、などなど、情報がもりだくさん。
「早く来てくれれば、いい店いろいろ教えたのに〜」と。
角打ちはここ最近はじめられたそうで群馬では珍しいらしく、「SNSとかで広めてよ〜」とも。
これから高崎にいく酒飲みのみなさん、群馬県の玄関口の、そのまた玄関口として「春川酒店」にぜひ。
ロータリーから、店先にぶらさがる杉玉が見えるほどの近距離ですよ。

店長さんはゲコですので、あしからず。


(つづく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?