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山田古形の小説

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山田古形が書いた小説の一覧です。楽しいヘンテコ話がたくさんあります。
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2020年8月の記事一覧

ペンギンものまねメダリスト

「ペンギンものまねチェッカー」  画面の文字をそのまま読み上げて、私は友人と顔を見合わせた。  縦長の筐体に組み込まれたモニターには、「タッチしてスタート」とも表示されている。指で触れてみると、それらの文言はすっと消えて、代わりに眠たげな顔つきで佇むペンギンの写真が表示された。  私は筐体の横手にある広大な水槽に目を向けた。透明な仕切りの向こうで、モニターの写真と同種のキングペンギン達が、緩慢な動作で岩場をぺたぺたと歩いている。 「ぐわぁおぐぁぐわぁっぐぉ」  駄々をこねる怪

カッパとあんみつの約束

 軽やかな声音で「おーい、ジミカッパ」と呼びかけられ、久地君花はティッシュを丸めるように顔をくしゃりとしかめた。  くしゃくしゃ顔のまま声のした方を向くと、ウェーブがかった茶髪を風に揺らしながら、羽崎奈央が近づいてくる様子が目に入った。歩幅の長い足取りがすぐさま両者の距離を縮める。  君花の傍まで来ると、奈央は愉快げな笑みを口元で波打たせながら、ピアノを弾くように君花の肩をリズミカルに指でつついた。 「羽崎さん……おかしな呼び方しないでよ」  楽しげに細められた目元を睨みつけ

書いた小説のあらすじ一覧(随時更新)

これまで書いた小説のあらすじを一覧にしました。 気になるものがあったら、読んでいただけると嬉しいです。 襲撃のシュークリーム・ヘッド ひと気のない最終電車で帰宅する「私」の前に、頭がシュークリームの形をした奇妙な人物が現れた。  至高を名乗るその人物から「私」は一方的に従者に任命され、シュークリーム頭の怪物・クリーマーの対処を命じられる。  至高は電車を襲撃してきたクリーマーたちのシュークリーム頭を次々ともぎ取り、それらを食べて無力化するよう「私」に求める。  勇ましくおい