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【モジャ毛語り⑧】ヤマダヒロミチから人類総青魔道士時代を生きるキミたちへ

【スーザン(Bahboon/Kiss me 舞浜)からのお題:「青魔道士」】





今日のコラムのテーマは、青魔道士である。









・・・親愛なる読者の皆さん、ちょっと待ってくれ

ブラウザバックしたい気持ちはわかるけどちょっと待ってくれ。


「んだよ、その知らねぇ単語は」って人にもわかるようまず説明するから。

頑張ってポップに書くから。







青魔道士。


スクウェア黄金期のスーパーファミコン世代であるヤマダヒロミチには、
当然のように親しみのある言葉なのだが、



それらのファイナルでファンタジーなシリーズを全く通ってこなかった人にとっては、
かなり何のこっちゃな日本語だろう。





まず大前提として、

“黒魔術”というものは何となーーくイメージしやすいだろう。



攻撃したり呪いをかけたり、
とにかく相手に対して害を為すような魔法だ。
ファイヤーっつって炎を飛ばしたりとか。


FFシリーズではそれらを黒魔法、
その魔法を使用するキャラクターを黒魔道士と呼ぶ。



それと対極を為す、
味方の傷を回復したり毒を浄化したりする聖なる魔法が白魔法。

もちろん白魔道士のキャラが使う。





一方、

青魔法というのは、


“敵のモンスターが使ってきたワザや魔法を覚えて自分で使う”という特殊能力だ。



現実世界で例えると、

蚊に刺された時に、その刺し方や吸い方を観察して学び、
その日から自分も同じように吸血が出来るようになっちゃうようなこと。



FFシリーズの中でも、
黒魔法や白魔法よりもマイナーで、
人間離れした魔法(すごく矛盾した文章)である。


作品内でも青魔法を使う味方キャラクターは、
だいたい主人公やメインヒロインなどの華々しい枠ではなく、


変なおじいちゃんとか、
変なピエロみたいなヤツとか、
“そもそもお前モンスターちゃうんかい”と言いたくなる獣人とか、

そういう感じの脇役ばかり。


要するにちょっとクセのある、
玄人好みの魔法なのだ。




青魔道士、おわかりいただけただろうか?




手から火を出すとか、
癒しの光を放つとか、

そういうわかりやすく魔法!っていう感じとは違い、



“敵から受けた攻撃を自分のワザにする”というのは
いささかイメージしづらいものだろう。




だが、
よく考えてみると、



火を放つより、
癒しの光より、


現実世界を生きる我々は、

敵から覚えたワザを身につけ使いこなして生きていく機会の方が
むしろ多かったりする。





ヤマダヒロミチも沢山のワザを覚えながら生きてきた。








LUNCH-Ki-RATTというバンドをしていた時、

今は無き、蒲田CLUB TOP'Sというライブハウスによく出演していた。




そこは、


集客よりも、
音楽性よりも、


打ち上げでビールジョッキを一番早くカラに出来たバンドが最も評価される
凶悪なモンスターだらけの地下ダンジョンだった。




20代前半のヤマダヒロミチは、

そこでの打ち上げで数え切れないほどビールの早飲み対決をし、

数え切れないほど敗北を喫し、

数え切れないほど酔い潰れてきた。





戦闘不能になったヒロミチを嘲笑うように、
イッキの早い“敵”たちが得意げにこう語っていた。





「ヒロミチ。早飲みのコツはな、“飲み込む”のでも“吸う”のでもなくて、“ノドを開ける”んだよ」





そうは言われても、だ。







ヤマダヒロミチは、


クソほど治安が悪くて、
クソほど大好きだった地下ダンジョンが
ある日突然閉店してしまった日まで、
早飲みヒエラルキー最底辺のクソザコだった。





そして時は経ち、2021年。





サーカス船のプッケのスタジオ終わりにメンバーと居酒屋にいると、



隣の席で調子に乗っていた若い男が
こちらのテーブルに急に話しかけてきた。





「お兄さんたちバンドやってんすか?一緒に飲みましょうよ!」



おそらく大学生だと思しき彼は、

止めようとする友人をよそに、
ズンズンと絡んできた。





「俺、酒強いんすよ!イッキしましょうよ!」




典型的なイタいヤツだ。

33歳のおじさんはそんなガキンチョを相手になどしないのだ。





「やんないんすか?なんだ、バンドマンってそんなもんかぁー!笑」









戦闘開始だ。






新しいビールが運ばれてくる。



イタいチョケチョケ大学生と、
売れないモジャモジャミュージシャンによる異色の取り合わせが、

カキンと音を立てジョッキを合わせる。








秒殺。








ヤマダヒロミチは黄金色の液体で満タンだったジョッキを、
文字通り秒で乾いた鈍器へと変えてやった。


そして、
敵がまだ半分も飲み干していないのを確認すると、

隣に居たたなか胡桃のジョッキも取り上げ、

そちらも秒でカラにしてやった。



そのあまりの早業に、
若造はチョイ残しのまま目を丸くして驚いていた。








“ノドを開ける”。







ライブハウス(の打ち上げ)での長い戦いの中で、習得した青魔法。


ノドを開けられないザコなど今の俺の敵ではない。



勢いの削がれた彼はその後、
モジャとたなか胡桃にコテンパンにされ、
友人に介抱されながら帰って行った。





戦闘終了。



勝利のファンファーレ。





いやぁ会心の一撃だったなぁ。




あの時のアイツの驚いた顔見たかよ?




ヤマダヒロミチに勝とうなんざ100年早いっつーの!




あははははは・・・・







〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻





数日後、


恐る恐るスタジオに行くと、

先に部屋に着いて咥えタバコのたなか胡桃の視線がナイフのように冷たい。




当然だ。




あの夜、




チョケ大学生とのイッキ対決に勝利し撃退した後、







ヤマダヒロミチも死んだ。






過去の激しい戦いの中で身につけた
青魔法“ノドを開ける”。




ヤマダヒロミチには、


それを使いこなすためのMPLP(レバーポイント)も圧倒的に不足していたのだ。

(そもそも俺らその居酒屋が3軒目よ。ムリだよそんなんフェアじゃねーよ。)




そして、

潰れただけならまだしも、



歌舞伎町の道端で、

自身の終電を逃してまでモジャモジャの亡骸を介抱してくれたたなか胡桃を、

混乱した末に置いてけぼりにして自分だけ終電で帰るという、



とっても終わってて、
とっても信じられない、

ファイナルでファンタジーなクソムーブをしでかしていた。





クズっクズである。








「・・・で、あのあと結局ちゃんと帰れたんですか?」



たなか胡桃がトゲのある口調で尋ねる。










ヤマダヒロミチは、






結局全然ちゃんと帰れてなかった。






紆余曲折を経て最寄り駅まで辿り着いたものの、


家路の途中で力尽き、道ばたに倒れていた。



そして通報を受けた警察官たちに取り囲まれ叩き起こされているところを、


近くのバーで飲んだ帰りの地元の友人がたまたま見つけてくれて、
タクシーで家まで送られていた。





と、言い伝えられている。(記憶が無い)






クズっクズな男は、




その経緯を赤裸々に説明し、


その夜に出来た原因不明の擦り傷と青アザだらけの両手を合わせ、
たなか胡桃に改めて謝罪をした。






さっきまで厳しかった彼女の表情が和らぎ、笑い出した。




ちゃんとバチ当たってて面白いので、許してあげます。」









よかった・・・




ちなみにこれも青魔法。

魔法名は“酒の失敗って自分的には超ツラいけど他人事だと笑えるものだからもうこの際全部話して相手に供養してもらえの術”と言う。






現実世界を生きる我々は、

敵から覚えたワザを身につけ使いこなして日々を生きている。


いわば人類総青魔道士時代だ。





誰かのテクニックを盗み、

誰かのスキルを取り入れ、

誰かのアイデアを参考にし、



それを自分流のワザに仕上げて成長していく。




手のひらから炎は出せなくとも、


僕らはきっと立派な魔法使いなのだ。




そして同時に、


誰もが相手に経験値を与えワザを盗ませる立派なモンスターであり得るということでもある。



持ちつ持たれつ。




そう、

ヤマダヒロミチからもラーニング出来るワザが沢山あるはずなので、

是非とも積極的に見て学んでいただきたい。






ただし、





ヤマダヒロミチはご存知の通り反面教師タイプのモンスターなので要注意。




よいこのみんなはイッキとかしちゃダメだよ!!
あとお酒はほどほどにね!!

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