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【マンガ原作】グラディウス 第3話

「ライオス様! 危険です! グレッグに任せてください! 」
 そのドラゴンは、ひと際大きく、不気味に身体が黒光りしていた……
「アベル! こいつは…… 」
 店からアベルも飛び出してきた!
「バハムートかも知れん! 魔光を使え!! 」
 その時、遥か彼方から剣が飛んできた!
 グサッ!!!
 もう1体いるドラゴンの、首元に命中した!
 グオオオオオォォォ……!!
 竜巻に飲み込まれたドラゴンは粉々に切り裂かれ、砕け散った!
「あれは…… 風の剣! 」
「うおおおおぉぉぉああぁ!!! 」
 あっという間に戦士がライオスの前まで駆け寄ってきた!
「アルベルト! 」
「おい! 何でバハムートが出たんだ!? 」
「わからん! だが、ピンチだ!! 」
「んなことは、わかってんだよ! 何とかしろグレッグ! 」
「そうだ! 早くやれ! グレッグ!! 」
「むう…… バハムート…… まあ、ワシが死んでも跡取りがおる…… じゃが、蕎麦を食えなかったのが心残りじゃ…… 」
 グレッグは、瞑想を続けている……
 辺り一帯の気が、グレッグに集まって来ていた……
 その時……
「お前たち…… 」
 バハムートが話しかけてきた。
「むっ! ちょっと待て! バハムートが何か言うのかも知れんぞ! 」
 ライオスがグレッグを制した。
「人間が、我らに対抗するために産み出した、数々の秘術…… 称賛に値する…… 」
 バハムートは眼に穏やかな光を称えていた……
「何を言っているんだ? 俺たちを殺しにきたんじゃないのか? 」
「我は神獣バハムート! 人間とモンスターの永きに渡る戦いを見守ってきた…… 」
「自分は傍観者だとでも言いたいのか! 」
「まあ、待て。アルベルト…… うまくやり過ごせるかも知れんぞ」
 ライオスが前に進み出た。
「我が名はライオス! エトランシアを治める国王じゃ。お主は何を望む? 」
 バハムートは、ライオスを睨みつけた……
「お前は…… 覚えているぞ! 我の腹に刀傷をつけた、唯一の冒険者! そうか。国王になっていたのだな…… 」
「乱世では、真に力のある者が国を治めるべきなのじゃ。お飾りで国王は勤まらん! ワシは、この歳になっても隠居などさせてもらえず、最前線に出ているのじゃ…… そろそろ日向ぼっこでもしていたいがのぅ…… 」
 バハムートは天を見上げた……
「ライオス…… お前の死に場所は、荒野以外にあるまい…… ここに集まった3人の勇士は、いずれも至高の戦闘能力を備えているようだ…… お前たちが中心になって戦いの結末が揺れ動いていく…… そして、これからロダニアで、先の大戦を上回る戦闘が行われることになるだろう…… 」
「どういうことじゃ? 」
「モンスターが現れたことには意味がある…… それを知ることになるだろう…… 」
「モンスターが現れた意味……? 」
 バハムートは10メートルはある両翼を広げ、空に飛び立った!
「グオオオォォォ……!! 」
 雄叫びを上げると、彼方へと飛び去って行った……
 4人はしばらく、バハムートが飛び去った空を見上げていた……
 最強のドラゴンが与えた、圧倒的なプレッシャーが、いつまでも身体に残っている気がした……
「ふう…… 命拾いしたかも知れん…… 」
「準備もせずに、いきなりバハムートと戦えるほど甘くはない。魔光を放っても、全滅させられただろう…… 」
 グレッグは全身に汗を滴らせている。
「話には聞いていたが、圧倒的な威圧感だった…… バハムート、奴は敵なのか? だとすれば、勇者だの伝説の戦士だのと言っても、無力な人間の敗北だ」
「アルベルトまで…… まあ、更なる高みを目指して、俺たちも精進しなくてはならないな」
 アベルは無理に笑顔を作って見せた。
「ふむ。嘆いていても始まらぬ。次はこの老いぼれも、刀傷を2つ、3つとつけて見せようぞ! バハムート! 恐そるるに足らん! 」
 ライオスは勇士たちを鼓舞しようとした。
 だた、モンスターは底なしの強さを秘めている。
 人間は、努力をして一歩ずつ階段を登る様に力を高めていくしかないが、どこまで登っても上がいる。
 それを思い知らされたのだった……

 店に戻ると、アベルが用意した蕎麦の、こね鉢に向かった。
「ライオス様、アルベルト、グレッグ。まずは水まわしをしてみましょう…… 」
 アベルが、水を注ぎながら蕎麦粉を練り始めた。
「ほほう! 不思議な手つきじゃのぅ。魔道士がこんな動きをするのを見たことがあるのぅ…… のぅグレッグ! 」
「はい。『空気を練る』と表現しています。私には、割とできそうな気がします」
「何!? もう勝利宣言か! 」
「アルベルト…… 別に勝負してるわけじゃないぞ…… 」
「うおおおおぉぉぉあぁぁ! 」
 凄まじい勢いで、アルベルトがこね始める!
「うっ…… やっぱりそうなるのか…… 」
 蕎麦粉が辺りに飛び散った!
 ビシッ!
「ちょっと! アルベルト! 蕎麦粉がもったいないだろうが! 」
 アベルが横面をはたいた!
「グッ! 伝説の勇者の一撃は効くじゃねぇか…… 」
 ライオスは黙々と蕎麦粉を練っていた。
「ライオス様。やはり筋が良いですね。これはお世辞じゃありませんよ! 」
 アベルは驚いて言った。
「ふむ。ワシは昔から凝り性でのぅ…… 壺や皿など焼き物などを作ったこともあるのじゃ。その要領でやってみた…… 」
「さすが、伝説の勇者にして、現国王様…… 不器用では勤まりませんな…… 」
 グレッグも素直に感心した。
 こうして、ドタバタと蕎麦が出来上がった。
「始めは無茶苦茶だったアルベルトも、気持ちが落ち着いたら見違えるようにできるようになったな…… 」
「伊達に伝説の戦士やってないってば! 」
「うむ。すぐに反省して立て直すところが、アルベルトの長所だな」
「いただきますっ」
 それぞれ箸を持って蕎麦をすすり始めた。
「こういう風に『ズズズ』って音を立てて食べるものなのです」
「ほほう。なかなか奥が深いのぅ」
「おっ! うまい! うまい! 」
「運動の後の一杯は最高だな! 」
「殺されるかと思った後だから、余計に味わってしまうな。生きていればこそだ! 」
 グレッグはしみじみと言った。
 食べ終わると、4人は外に出た。
「こんなに広い蕎麦畑を作ったのか…… 」
「蕎麦は、米など穀物が育たない荒れ地に適した作物なんです」
「なるほど。だから蕎麦屋なのだな」
「ふむ。タダの趣味ではないんじゃのぅ…… さすが勇者アベルじゃ。深く考えての行動だったのじゃのぅ」
「そして、ステップ地帯のように寒暖差が激しい土地に適しています」
 ライオスは大きく頷いた。
「よし。これからここを拠点として、前線基地を築こう。良いかな。アベル」
「勿論でございます。このアベル、冒険者だけでなく、正規軍の方々にも来ていただければ、やりがいがあるというものです」
「俺は少しここに留まらせてもらおう。バハムートが来たばかりだし、モンスターの動きが活発になるかも知れない…… 」
「そうだな。アルベルト。遊撃隊の方には俺から話しておこう…… 」
 アルベルトは遊撃隊長、そして剣術士ギルドマスターとして、戦士たちを鍛える役目を担っている。
 こうして、国王の気まぐれな訪問が終わった。
 終わってみれば、ロダニア地方の戦況を左右する、前線基地建設予定地視察にもなった、
「はあ。しかし、蕎麦屋とはなぁ。アベル。お前も丸くなったのかと思ったが、色々考えてのことだったのだな。俺も遊撃隊をこちらによこして、蕎麦打ちの精神修養させるとするよ」
 その後、ロダニア地方では大きな動きがなかった。
 だが、依然として冒険者たちはモンスターと、壮絶な戦いを繰り広げ、多くの犠牲が払われ続けるのだった。

この物語はフィクションです
この作品は
グラディウス ~天稟の魔道士~
グラディウス ~風の剣術士~
の外伝として執筆しました


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