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#17 『AWAKE』公開記念Q&A〜第一回・ネタバレなし編〜

このnoteは2020年12月25日より全国公開中の映画『AWAKE』の監督・脚本をした山田篤宏が「来年が皆様にとって良い年でありますように」と思いながら書いています。年の瀬!

『AWAKE』公開しました!!…ってさすがに知ってますか。いやー、よるべなき時世ではありますので、ここではあえてそれに目を向けまいと思っていたんですが、結構それはそれで実は心配してました。いやあ良かった良かった。

今の所「絶賛公開中!」の「絶賛」部分がなまじっかお決まりの修飾語ってわけでもなくね?と自惚れてしまっても許されるのではないかというような有難いご感想を割と頂戴しておりまして、フクちゃん(福田吉兆)のように「もっとホメてくれ…フルフル」ってなってます。スラダンネタは2回目ですかね。

そんな中、ついに「冴えない衣装展」の全貌が先日公式から。

本noteで僕が唯一捕捉できてなかったのは、広島バルト11さんでした。

英一の奨励会時代の一着ですね。なんでも、奨励会は「シャツをズボンにインしてないと怒られる」らしく、このようなスタイリングを提案しております。

そしてそして、1月2日に改めて新年の「お正月舞台挨拶」をユナイテッド・シネマ豊洲さんで開催いたします。

そこから全国16館のスクリーンに生中継されますので、どうぞ振るってご参加ください。この舞台挨拶のポイントは登壇者は僕と吉沢くん二人のみということでして、これまでの「イマイチ根暗」な舞台挨拶の流れを払拭する楽しいものにしなければならん!新年ですし!と僕が気負っているとこです。あと、さんざん言われてる「声をもっと張れ」も頑張ります…頑張りますから。そして、中継のカメラマンは『AWAKE』の撮影を担当してくれた今井哲郎さんにお願いしてます。オーバースペック感ありますが!

ではでは、長くなりましたがそろそろ本題の公開記念Q&Aに参ります。

回答の前に:答えられなかった質問への言い訳

と、言っておきながら。できる限り全てのご質問に答えようとは思っているんですが、正直申し上げると「やーこれは答えづらいな…」というのも幾つか頂いておりまして。Q&Aを始める前に「なぜ答えづらいか?」をちょっとだけ言い訳させてください。大別すると答えづらい質問は以下の4つです。

A、答えると解釈を限定してしまう質問
B、そもそもなーんも考えてなかったけど偶然そうなってることに対する質問
C、リアリティをあえて曲げてるところに対する質問
D、あ、それ予算です、っていう答えになっちゃう質問

Aは、でっかく言うとクリストファー・ノーランが『TENET テネット』で「ニールは××なの?」って聞かれて「明言しないよ」って言ってるのと根っこは一緒です、って観てる人しかわからないすか。要するに僕としては何らかの答えはあるけど、受け取り方は人それぞれだと思うんで、そこを限定すんのも野暮だよな、と思ってる部分に関する質問です。この類は特に登場人物に関する質問が多くなりますが、自分は脚本を書く際に細かく登場人物の年表を作ったりとかするタイプじゃないので、脚本を外れた部分はある程度自由に解釈してもらうほうがいいんじゃないか、と考えています。

Bのパターンもたまーにあります。いや、それ狙いじゃないんすよ…たまたまそうなったんすよ、っていうヤツ。これ、磯野と中島の苗字問題とかの完全に天然だったら面白いんで言うんですけど、もうちょっと「いかにも意味ありそげ」なやつがそうだと流石に恥ずかしい…。とはいえ、頭から「いやー、それ実は狙いでしてね」って真顔で語るほどの厚顔さもありませんので、「答えは沈黙」とさせていただきます。

Cですが、やっぱり映画なので小なりの嘘は結構いっぱいついてるんですよ。ついているんですけども、「ここはリアルよりも作劇を優先させて大丈夫だろう」という取捨選択はこちらとしては一応やってますので、気がつかないのであればあえてそこをバラす必要もなかろう、と。というのも、バラすと見る方によってはそこが気になって本来もっと見て欲しいところから気がそれてしまうのでは?という懸念がありまして。「リアルよりリアリティ」を信条にやっております、ということでここは一つ。

そして、Dの「あ、それ予算です」ってなっちゃう質問。予算に限らず、「スケジュールの都合で」とか要するに本気で答えるとそういう超リアルな制作的な意図丸出しになっちゃうご質問に関しては、生々しいので公共の場ではちょっとご勘弁いただきたい!

…というわけでして、複数送って頂いた方もいらっしゃいますが、回答叶わなかったご質問は上記のいずれかに入っているからだと何卒お察しください。

そうしてさらに、今回は「ネタバレなし」で頂いた質問を限定しております。では、思いのほか前置きpart2が長くなりましたが、ようやく参ります。

公開記念Q&A〜第一回・ネタバレなし編〜

英一君の最寄り駅の名前は「若葉駅」でしたが、あれは陸役の若葉さんにかけていたりしますか?

まずは軽いのから行きます。これ、実は本noteで「スキ」を押してもらうとランダムに小ネタが出る仕様にしてまして、そこでも言ってるんですが残念ながら?全くの偶然です。

なのですが、なぜあの駅を選んだか?というのにはある程度理由がありまして、あの駅は映画の中でもシーンが繋がってますが、タイトルバックに出てくる電車と同じ路線(東武東上線)なんですね。で、ここを制作部が探してきてくれたのは「映画内の年号に近い車両が走っている」「タイトルバックで撮影したような町→郊外に向かう風景がわかりやすい画が撮れるロケーションがある」からです。若葉駅が選ばれたのは、ロケーションのそのものの条件(イメージに合ってるとか撮影しやすそうとか)と、あとは上記のタイトルバックシーンと同じ日に撮るなどのスケジュールが組みやすかった、などの理由があります。

あとこれも「スキ」小ネタで言ってますが、あのタイトルシーンのワンカットは準備から含めると2〜3時間くらい撮るのにかかってますね…。

英一君が■■でエキサイトしてしまった場面で、exicitedのロゴ入りロングTシャツを着ていましたが、偶然ですか?

一部伏字とさせていただきました。この衣装は大学入学初期のシーンからの繋がりで着ているものですね。さすがにこちらも何が書いてあるかとかに関しては意識的になるわけでして、このTシャツに関しては、衣小合わせの際に季節感も考慮の上、大学入学初期だしそう書いてあっても面白いからいいんじゃないか、ということで衣装部と話をしてこのシーンで使うことに決めた経緯があります。僕が「excitedって書いてあるシャツを持ってきて!」と言ったわけじゃないので、偶然っちゃ偶然なんですが、その先の配牌はしていますよ、という感じです。

車内のシーンの撮影秘話(現場の空気、吉沢亮さんのここがすごかった!など)を教えてください

ギリギリネタバレとまではいかないかなーと思いまして回答差し上げます。お父さんと英一のシーンですね。

あそこは本作唯一の明確な英一の「泣き」のシーンでして、実際ここで吉沢くんは涙を見せています。が、ほぼ見えるか見えないかのところで編集上フェードアウトしています。とはいえ、環境によっては十分気づけるのではないかと思います。撮影の今井さんから吉沢くんの泣きの演技に関しては事前に聞いていたのですが(曰く、どんなタイミングでも涙を出せる)、ホントでした。3〜4テイクくらいしたんですが、どれもほとんど同タイミングで涙が出てきまして驚きました。

また、それ以外では個人的にはあそこは2アングルの単純な切り返しでしっかりとシーンが成立してるんで、そういう意味でも「うまくやったな」と思ってるシーンです。車の移動シーンって、狭かったり、カットかけたら車を元の位置に戻さないとダメだったりと、本来めちゃくちゃ面倒なので…。

過去の作品の制作経験を通して、今作に生かされたことってありますか。
『ハッピーエンド』からオンライン試写会で『AWAKE』を先に見たものですが、作品の見せ方とかで関連性みたいなのってあるのかなと気になりまして質問しました

やー、『ハッピーエンド』(10年以上前に作った長編)まで観てもらってありがとうございます。なかなか難しい質問なのですが、ちょっと考えてみたいなと思います。

第二回とかでも書いている通り、自分は普段は映像ディレクターをやってますので、それらの経験は今回の現場に十分生かされていると思ってます。ありきたりな回答ですが、これまでの映像制作経験は全て糧になっている、と。

長編映画制作っていう意味なら、『ハッピーエンド』は地方ロケであんまり拠点から遠出をしないような体制でしたが、スカラシップ作品で力んでいたのもあり、逆にものすごくキツい撮影を強いたなというのがありまして、そこは大きく反省していました。ですので、今回も決して楽な撮影では無かったとは思いつつも、長期戦を無理なく乗り切ることは結構意識したりしました。

あとは中身の話ですが、正直全く違う題材を選んでますんで(『ハッピーエンド』はラブコメ)自分でも関連性があるのかどうかはわかりません。ただ、僕の場合明確に外国映画、特にアメリカ映画の影響で映画を作っていますので、その辺りが共通点として見えていたらちょっと嬉しいな、と思います。


質問、まだまだ募集します!

…と、いうわけで。第一回のQ&Aは以上となります。少なっ!と思った方、お送りください!ネタバレなしで厳選した、というのもありますが、まだまだこちらとしては答える気満々ですので…。

ご質問は、前回と同じく下記メアドか、本稿のコメント欄まで頂ければ大丈夫です。

質問用メールアドレス
oshiete.awake@gmail.com

次回は集まり具合によりつつも「ネタバレ編」で行こうかな、とも思いますが、最終的にはこちらでうまく捌きますので、特にお送り頂く分にはその辺りを気にしていただかなくて結構です。くどくどと質問に答えられない理由なんぞも書きましたが、これもこちらの言い訳ですので、お送りする際には何も気を使わず、とりあえず送ってみてください。

それでは、今回が本年最後の更新になります。来年も引き続き、映画『AWAKE』をどうぞよろしくお願いします!