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生成AIを用いた解像度向上の試み——血液培養ボトル出荷調整問題より考える(後編)。


はじめに

本記事は最近のニュースを活用して、生成AIの使い方を考えることを目標に記載しています。個々のファクトチェックには配慮していますが、時々飛躍が見られる可能性があります。内容をそのまま転載することはお控えください。
前編は下記をご参照ください。

ニュースの真相を調べる?

2024年7月3日付で、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社から血液培養ボトル出荷調整の通知がでました。
前編ではこの問題そのものについて分かっていることをまとめる試みをしました。その中で、下記のX(旧Twitter)の投稿を紹介しました。

これを読んだ時には、この情報をこんなに早く指摘されているのはスゴいと思ったのですが、それと同時に「え?調べる??どうやって」とも感じました。
前編で紹介した通り、この問題の解決の目処については、公式の見解は発表されていません。サプライチェーンの状況等は企業秘密としてアクセスは困難でしょうし、どう行えるのかと戸惑いました。

生成AIを用いてニュースの背景を問う

企業秘密にアクセスできない立場としては実際に起きていることをファクトチェックするのは困難でしょう。ですが、問題の所在についての理解を深めていくことは、生成AIを活用すればかなりの水準までたどり着けるとも感じています。

例えば、今回の案件に関してですと、Web上の情報にアクセスできる生成AIを用いて(私はPerplexity Proを使用しました)、以下のような問いかけを行うことは出来ます。

  • 悪天候がプラスチックの供給に影響を与える要因を教えてください。

これだけでも様々な要因が回答として帰ってきます(具体的な内容は割愛します)。
今回の案件に関連して、もう少し解像度を上げた問としては、以下のようなものが考えられます。

  • 2023年末に、プラスチック生産への、化石燃料の割り当てが減少した要因は何でしょうか?出来るだけ多くの観点から論じてください。例えば、戦争と貿易、化石燃料の価格交渉などどうでしょうか?

プラスチックは化石燃料から製造されますので、プラスチックの医療器材のサプライチェーンの問題が起きるとすれば、源流にあたる化石燃料の供給に問題がないか?との問いを立てることは出来ます。

また2023年末と言えば、ウクライナ戦争はまだ続いていますし(現在も)、イスラエルのパレスチナ侵攻も話題となっていました。ロシアからEU諸国への天然ガスパイプラインの問題はウクライナ戦争とも深く結びついていますし、中東情勢も石油の価格には大きく影響してきます。
そんな中、化石燃料の医療器材への割り当てが影響を受ける可能性もあります。そういう仮説に基づいての上記の問いかけです。

もちろん、こうした国際情勢の他にも、影響を与えている要因は多数あるものと思います。個人的に、医療現場で使用する器材へ影響するとすれば、国際情勢のような大きな要因の存在が無視できないだろうと思ったために、例として問いかけたに過ぎません。
他にも、プラスチックのような環境に与える影響の大きな材質への依存を止めようという社会運動の影響はどうか、など問いかける視点はいくらでもあります。

生成AIと解像度の向上

生成AIに問いを投げかけた時、このように視点を広げる形で解像度を上げることは比較的容易です。ただ、そうやって広げてみた視点が実際のところどのくらい妥当なのかは、その道のエキスパートに尋ねてみないと確認が難しいことも多いです。

また、問題点の深掘りも、視点を広げることに比べると、難易度が上がると思います。深掘りには細部を詰めていく作業が必要ですが、聞き慣れない事柄だと、どこをどう深掘りすれば良いのか手探りとなり、問いかけ方も要領を得ないものになりがちです。
ただ、広げる問いを発した時に引用された資料の中に、テーマについて上手くまとめてくれた総説などが含まれていれば、「この内容を要約して」と生成AIに依頼することで、深掘りのための基礎知識の習得速度を上げることはできます。「ググる」の時代よりはかなり短い時間でたどり着けると思います。

解像度については、こういう著作も参考になります。

終わりに

生成AIに上手に問いを投げかけることで(あるいは、その問い自体をAIに教えてもらうことも出来ますが)、世の中の様々なニュースの背景について理解を深めることが、これまでと比較して随分容易になりました。
ですが、AIの回答が本当に、ニュースの事象の文脈において適切かどうか、それは改めて確認が必要です。決して鵜呑みにできるものではないことはご注意ください。

AIの引用元となっている、グローバルに発信されている質の高いメディアの記事そのものも、時には目を通す習慣も持っておくと良いと思います。

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