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生成AIとジャーナルクラブ Claude 3.5編——第3回 論文から生涯教育の問題集を作成


主な対象者

本記事では、論文を読んでみたけど、それだけでは勿体ない!と思われている医師(研修医や専攻医を含む)をサポートするプロンプトを紹介しています。
ノーコードで出来る内容を扱っています。
#ジャーナルクラブ #Claude #プロンプト #生涯学習 #自己学習 #問題集

本記事の画像はAdobe Fireflyを用いて生成しました。

はじめに

ジャーナルクラブもそうですが、カンファレンスでのレクチャーを用意するのも時間や労力のリソース投入が多く、自身の診療・研究や管理業務、および家庭との両立が求められる指導医にはなかなか大変です。

2024年6月21日、Claude 3.5 Sonnetが公開されました。
先のClaude 3の最上位モデルのOpusより優れた性能で、速度が2倍とのことです。
無料でも使用可能です。ただし、具体的な制限は見つけられませんでしたが、無料だと使用回数が少ないところで制限を受けてしまうようです。

以前のClaude 3 SonnetやChatGPT-4oなどで試みて質がイマイチだったことで、出来ることも増えています。

総説論文などを添付して、その内容に関するQ&Aを出させるプロンプトです。様々なジャーナルで、論文の内容に関連した生涯教育のためのQ&Aを提供されていますが、それをAIへのプロンプトで自作する方法です。
最新の総説論文を添付して、それに関する質問を出させると、学習効果が高まると思います。

総説論文に関するプロンプトは以下もご参照下さい。

プロンプトの前に  ファイルの添付

ファイルの添付はプロンプトを書く前でも後でも良いですが、その際の注意点です。
添付できるファイルにはサイズの上限があり、1個あたり10Mbまで(あるいは20万トークンまで)ですが、余程図の多いものでなければ大丈夫でしょう。ファイル名が長過ぎたり、ファイル名にセミコロン(;)が付いていても添付できないようです。ファイル名をバンクーバー方式(PubMedで記載されている「ジャーナル名.出版年巻(号):ページ」の方式)で保存している方は変更して添付する必要があります。

一括プロンプト

ここでは5つの選択肢から正しいものを1つ選ぶ多選択肢問題を5問、得られた学びを自由に言語化するエッセイ問題を1問の形式としました。
質問数や問題形式は適宜改変できます。例えば、5つの選択肢のうち正しいものが3つあって、回答は3つの組み合わせ5個の中から選ぶ(1,2,3 1,2,5 1,4,5 ・・・)とか、5つの選択肢から正しいものを2つ選ぶ、あるいは誤ったものを1つ選ぶなど考えられます。
ただ、ここではシンプルさを優先して上記の条件としました。

(ここから)
<role>
#あなたは経験豊富で教育能力にも優れた専門医です。
#問いかけに対して教育的な質問を発してください
</role>
<instruction>
#添付されたPDFの内容について、下記の条件を満たす6つの質問からなるQ&Aを作成してください。

  • 問1~5は5つの選択肢(a,b,c,d,e)から正解の1つを選ぶ(残りの4つの選択肢は誤り)

  • 問1〜5は以下の2つの()の中から1つずつの因子を選択し、それに関する問とする。

(疫学;病態生理;臨床症状;鑑別診断;診断法;治療法;予後)
(一般的な知識を問う;症例を提示し、関連する知識を問う;症例を提示し、とるべき行動を問う)

  • 問1〜5においては、2つの()の中から選んだ因子の部分は言語として明示せず、問そのもののみを明示する

  • 問6はメタ認知的認識を扱う自由記述式回答の質問として、「本論文から学び取ったポイントを最大3つまで、箇条書きにて言語化してください」とする。特定の正解を求める問ではない。

#作成した問は問1~問5をまず提示してください。

  • 問の本文に続いて、選択肢a~eも提示してください。

  • 各問題の回答ができるよう、各問題のa~eの選択肢とプルダウンを表示してください。プルダウンはartifactsを活用して表示し、またa~eの内容をテキストで含めて下さい。

#1つ以上の問に応答があった時、正答と解説を提示してください。1つも応答がない場合は「問に回答してください」と返してください。
#解説は、添付のPDFの内容を参照し、問1つあたり日本語で150〜200字程度としてください。
#解説を提示した後で、問6に進んでください。
#問6への回答の数が合計3つに満たない場合は「他にありますか?」と続けて問いかけてください。
#問6への回答の数が合計3つ以上となった場合は、「お疲れ様でした。本日の学びを今後に活かしてくれると嬉しいです」とコメントし終了してください。
</instruction>
(ここまで)

論文を添付して初めから上記を入力することも可能ですし、上記リンクのプロンプトを一通り流して概要を掴んでから今回のプロンプトへ進むことも可能です。後者の場合は<role></role>は省略可能です。

画像はイメージです

プロンプトの解説

問6の「メタ認知的認識」はtake home messageを自分で考えるようなイメージです。草稿作成時点で改訂版ブルーム・タキソノミーを参照し、事実的認識、概念的認識、遂行的認識、メタ認知的認識の4つを問う質問群を作成するプロンプトを試みていたのですが、なかなか前3者を使い分けて問を発してくれなくて、上記の「一般的な知識〜」という表現に変更しました。

これで、添付した論文に関連した問いを5問、内容をうまく分散して、選択肢もよく洗練されたものを提示してくれます。

Artifactsの評判が良く、活用を目指したプロンプトを用意しました。
このプロンプトで、チャット内に問1〜5の選択肢a~eを提示し、Artifacts内でプルダウンで回答を選べるようになっています。Artifactsは問毎に分かれており、5問なら5つのArtifactsにクリックして移動しなければならない点は煩雑ですが、1つの画面で5つのプルダウンを表示することは現時点では困難でした。

ただし、プルダウンで回答を実際に選んだかどうかを反映させることと、その正誤を確認して「正解です」などの応答を得ることは、今回のプロンプトではできません。

また、1問ずつ問を出させることもプロンプトを調整すれば可能で、その方が問の文章や選択肢などが洗練されたものとなりますが、1つの論文で5回以上のやり取りが必要となり、特に無料の場合はすぐに利用回数の制限にぶつかってしまいますので、妥協点として5問一括を選択しています。

参考:Google NotebookLMとの使い分け

PDFファイルを取り込み、その内容に関する質問を投げかける、あるいはクイズを出してもらう、という用途であれば、最近日本語対応したGoogle NotebookLMの方が複数の論文をデータベースの前提に出来る分質が高くなるのでは?と思われた方もおられるかもしれません。「*ノートブックガイド」の「学習ガイド」がまさに対応する機能に思えます。

ですが、特定の論文の踏み込んだ内容の問題集とするにはいくつかの困難に直面しました。

  • 問題と解答を同時に提示してしまう。

  • どういうカテゴリーの問題を出して欲しいかについて、プロンプトの調整が困難で、臨床医学とかけ離れた問題も出てきてしまう。

Google NotebookLMは、取り込んだデータ内の検索には大変優れた性能を発揮しますが、そのデータベースを使って発展的なことを行うにはハードルが高いと感じました。

終わりに

ここまでのプロンプトを用いることで、ものの数分で論文から質の高い生涯教育の問題集が出来上がります。解説プロンプトと併用することでより理解が向上することでしょう。Claude 3.5の言語処理能力は大変優れており添付のPDFファイルからの問題作成という条件なら概ね信頼できるのですが、内容に違和感を感じた時には別のリソースでファクトチェックも行う必要があります。その点は忘れないようにしてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後とも有益な情報を発信していきますので、応援よろしくお願い致します。

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