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生成AIとジャーナルクラブ Claude 3.5編——第1回 介入研究の論文要約


主な対象者

本記事では、ジャーナルクラブの準備でどうしたらいいだろう?と迷われたり、時間がない!と思われている医師(研修医や専攻医を含む)をサポートするプロンプトを紹介しています。
ノーコードで出来る内容を扱っています。
#ジャーナルクラブ #抄読会 #Claude #プロンプト #RCT #研修医 #EBM

本記事の画像はAdobe Fireflyを用いて生成しました。

はじめに——生成AIとジャーナルクラブ

2022年11月にChatGPTが公開されてから、生成AIについて話題にならない日がないくらい盛り上がりを見せており、かつすさまじい速さで進化しており、他に仕事を持つ人間にとっては追いつくのも容易ではありません。

ChatGPT以外にも様々な生成AIが公開されており、アップデートもますます大変な状況となっています。2024年3月にClaude 3が公開され、その言語処理能力の高さが話題となったのも記憶に新しいところです。

臨床の現場でその高い言語処理能力を活用する領域として、ジャーナルクラブに注目しました。生成AI(ここでは、Perplexityを使用)に、生成AIがジャーナルクラブに与える影響について尋ねてみたところ、①論文の要約が強化され議論しやすくなる、②文献検索が自動化され質が改善する、③ディスカッションポイントを準備しより深い議論がしやすくなるなど、数多くのメリットが得られ、より効率的、対話的、有益なものになる可能性があるとの回答が得られました。

https://www.perplexity.ai/search/how-has-generative-UPh218GT42YLGWuiiuzQw

この視点で、Claude 3 (主にSonnet)を用いた論文の超速詳解のためのプロンプト作成を試みたことがあります。

ところが、2024年6月21日、突如Claude 3.5 Sonnetが公開されました。
先のClaude 3の最上位モデルのOpusより優れた性能で、速度が2倍とのことです。
無料でも使用可能です。ただし、具体的な制限は見つけられませんでしたが、無料だと使用回数が少ないところで制限を受けてしまうようです。

早速、どの程度使えるのか試してみました。
結論を先に述べると、チェーンプロンプトに頼らなくてもかなりの水準で解説してくれます。もちろん、先の試みと同様にチェーンプロンプトにすれば、更に詳しく解説してくれます。

注意点

生成AIには一般的に個人情報や企業情報をそのまま入力すると学習材料として利用されてしまう恐れがあります。自施設の特徴などを入力したい場合も個別具体的な記載は避けて、一般的な表現に留めた方が良いでしょう。

プロンプトの前に  ファイルの添付

ファイルの添付はプロンプトを書く前でも後でも良いですが、その際の注意点です。
添付できるファイルにはサイズの上限があり、1個あたり10Mbまで(あるいは20万トークンまで)ですが、余程図の多いものでなければ大丈夫でしょう。ファイル名が長過ぎたり、ファイル名にセミコロン(;)が付いていても添付できないようです。ファイル名をバンクーバー方式(PubMedで記載されている「ジャーナル名.出版年巻(号):ページ」の方式)で保存している方は変更して添付する必要があります。

一括プロンプト

Claude 3.5 Sonnetでは、Claude 3 Sonnetで3つ程度に分割しないとクオリティが厳しかったプロンプトを、一括で入力してもかなりの水準で要約を示してくれます。<role></role>などはXMLタグといい、プロンプトと応答を構造化するためのものです。
分割した場合はより詳細な情報が得られます。分割バージョンはこちらをご参照お願いします。

(ここから)
<role>
#あなたは臨床経験豊富で教育能力にも優れた専門医です。論文査読にも優れています。
#添付したファイルの内容を、教育効果を最大化する目的でまとめてください。
</role>
<instruction>
#以下の指示を実行して下さい。

  1. タイトルと抄録を日本語に翻訳してください。

  2. この論文のPICO(またはPECO)を簡潔にまとめてください。P:対象、I(またはE):介入(または曝露)、C:比較対象、O:アウトカムを示します。

  3. 論文のテーマについて、以下の内容を要約して下さい。

  • これまでに分かっていること

  • この論文が付け加えたこと

  • 将来への示唆

  • 方法の要点

  • この論文の対象や方法に関する強み

  • この論文の対象や方法に関する限界

  1. 私の施設でこの結果を適用するとどのような影響がありますか?私の施設は日本の(都市部, 郊外, 農村部, 離島 etc.)にある(高度急性期, 一般急性期, 亜急性期・回復期, 慢性期, etc.)を担当する(大学病院, 市中病院, 診療所, etc.)で、(自施設や診療科の特徴、多い患者層など)です。

(括弧内には、当てはまる医療機関の特徴を入力する)

#続けて、以下の指示も実行してください。

  1. 特に持ち帰るべき学びのポイントを3,4個の箇条書きにまとめてください。

  2. この論文のキーワードを5つ、ハッシュタグをつけて提示してください。

  3. 更に学びたい人へ、引用文献の中でおすすめの論文を3~5個挙げてください。挙げた論文一つひとつに対して、特徴を一文で記載してください。半分以上の論文を、本論文の発表から5年以内のものから選択してください。バンクーバー方式でお願いします。

  4. この論文は、診療ガイドラインの推奨を変える可能性がありますか?GRADEシステムに基づいて検討してください。

  5. この論文をデータベースに保存したいです。バンクーバー方式で記載してください。

</instruction>
(ここまで)

当てはまる医療機関の特徴、というのがイメージしにくいかもしれませんが、例えば私の勤務先だと以下のような形が考えられます。

「私の施設でこの内容を適用するとどのような影響がありますか?私の施設は日本の都市部にある400床の一般急性期〜亜急性期を担当する市中病院で、入院患者の大多数が75歳以上の高齢者です。」

この部分は、EBMの5つのステップの4番目である「この情報を自分の患者に適用できるか?」を踏まえたもので、医療機関のセッティングにより代用しています。

画像はイメージです

おすすめ論文については、本来は引用の有無に関わりなく紹介して欲しいのですが、ClaudeにはWeb検索機能がなく、それは出来ません。この点はClaude 3.5となっても変わっていません。ここは我慢しましょう。

補足プロンプト——図表の解説

先のプロンプトで本文の概要の情報を得た後、図表の解説も行ってもらいましょう。ここも、Claude 3 Sonnetでは図と表を別々のプロンプトで解説してもらって、それでもやや質が厳しいこともありましたが、Claude 3.5 Sonnetでは一括プロンプトでかなりの水準の回答が得られます。
グラフの解析、図表の解説などの能力が大幅に向上したと詳解されていますが、それが遺憾なく発揮されています。

(ここから)
#続けて、以下の指示も実行してください。

  1. 本文中の表について1つずつ、以下の点を教えてください。

  • タイトルを日本語に翻訳してください。

  • この表が示している事柄は何ですか?

  • この表の内容について、本文との関連で重要な点を3個まで教えてください。

  • この表の内容について、抄録から分からず、表自体に注意しないと発見できないことがあれば教えてください。

  1. 本文中の図について1つずつ、以下の点を教えてください。

  • タイトルを日本語に翻訳してください。

  • この図が示している事柄は何ですか?

  • この図の内容について、本文との関連で重要な点を3個まで教えてください。

  • 図がグラフである場合、グラフの作成に用いられている統計学的手法と、その手法に関連した限界について教えてください。

  1. 本文中でAppendixやSupplementの表や図が紹介されていれば、本文から読み取れる範囲でその内容について1つの図につき1行で説明してください。

(ここまで)

終わりに

ここまでのプロンプトを用いることで、ものの数分でジャーナルクラブの発表の骨格が出来上がります。あとは細かい部分の原文との整合性の確認をやったり、必要な図表を用意するなどすれば十分でしょう。Claude 3.5の言語処理能力は大変優れており添付のPDFファイルの要約という条件なら概ね信頼できるのですが、最後の確認は人間が行う必要があります。その点は忘れないようにしてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後とも有益な情報を発信していきますので、応援よろしくお願い致します。

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