写真_2020-02-12_8_17_01

【hint.671】「あまからカルテット」

「あまからカルテット」、読み終えました。

最後までしっかりと楽しませてもらえて、大満足。

特に最後の章、「おせちでカルテット」は、それまでの章とは構造が違っていておもしろかったなぁ。

この小説、まだ読んだことない方にはぜひ読んでもらいたい。


これまでにも僕は、このnoteやラジオなどで、「人はもっと『ポジティブな感情を運んできてくれる物語』とか『ハッピーエンド』に努めて接するようにしたほうがいいんじゃないか」と言ってきたけれど、この「あまからカルテット」もその選択肢のひとつとしてとてもいい本だと思った。

なんというか、食べものの話をしているからだろうか、とてもやわらかい印象の言葉づかいが多く、もちろん、ある日常を描いているから、すべての瞬間を「ポジティブな感情」のみで過ごすというわけではないんだけれど、基本的には、やさしさや思いやり、共感・信頼する姿勢などが根底に流れつづけている物語なんだよね。

そして実はこの本、2013年に出ている本なのだそうだ。

なるほど、、今も読まれつづけているのがよくわかったよ。

まだ実写化されていないみたいなんだよね。不思議だなぁ、、。


 夫があまりにも美味しそうに食べているので、恐る恐る豆腐に箸を伸ばしてみる。赤い油は豆腐の側面をとろとろと流れ落ち、食欲をそそるコントラストを作っていた。口に運ぶなり、あまりにもまろやかな旨味に目を見張る。よほど上質の胡麻油を使っているのだろう。唐辛子の風味が強いが嫌な刺激はなく、ほのかな甘さすら感じる。油を吸ってもなお、カリカリした香味具材がいいアクセントだ。おまけに、この複雑に絡まりあった香りときたら──。
(「『あまからカルテット』著:柚木 麻子 文春文庫 2013年11月10日出版」より)

たとえばこんな感じで、想像力を書き立ててくれる、読んでるだけで幸せになってしまうような文章が、まぁ要所要所で出てくるのですね。

そしてまた、主要な登場人物の4人の女性の性格タイプだったり、それぞれの職業だったりが、まぁびっくりするほど物語にぴたっとハマっていて気持ちがいい。

友達づきあいをはじめとする人間関係や仕事、恋愛、、いやひとりの人間としての生き方についても、たくさんの学びや気づきをもらえる本でした。

楽しい時間をありがとう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?