怪物はささやくを見て。

妹からずっと見て、見てと言われ続けてたので、今日ようやく見た。

いい映画であったかどうかは、正直分からなかった。ワタシは多分、読解力が低いんだと思う。最近はそう思う事が多くて、映画の感想とか漫画の感想が書けないのは、多分それだよな。ということに気付いた。

この映画の最後のところ、詳しく書くとネタバレになるので書くのは憚れるのだけれども「ようやく母親を手放せた」というような(そんな感じ)事を言うんだけど、それを見てて、ワタシは手放せなかったな。という事を考えた。コナーの場合はお母さんであったわけだけど、ワタシの場合は父だ。

ワタシは当時ニート(今もだけど)で、22歳だった。家に引きこもって、家族とも会話がほとんど無かった。

月曜日だったと思う、昼前から何度か家の電話が鳴り続けていたのに、ワタシは無視して寝続けた。お昼過ぎ、バイトから帰った妹が、電話に出たところ、父の会社からで「保険証をファックスしてほしい」といったらしい。

内容は全然わからないが、とにかく急ぎで保険証が欲しいらしいので、妹は慌ててコンビニに向かった。ワタシは妹に、なぜちゃんと内容を確認しないのか!?と怒った気がする。自分はグーグー寝てたのに。それから、しばらく音信がないまま時間が過ぎ、次に電話があったのは母がパートから帰って来てからだ。父が出張先で倒れたとの事だった。病院に電話をしたところ、すぐ手術が必要なので、こちらに来て下さい。と言われた。

母は一人では行けないからと、ワタシを連れて行くことにした。電車で行くか、車で行くか、迷ったが富山県まで車で向かうことにした。ちなみにウチは大阪だ。普段から車をよく運転する家族だったので、地図さへあればどこでも行ける。実はこれが正解だった。父はその後、一月間、ICUから出られなかったからだ。もちろん、ワタシ達も病院から離れられない。大きな病院だったけど、とにかく田舎で、バスはあったけど、電車はない。車があって助かった。

意識がある時もあったが、父との会話は殆ど成り立たなかった。唯一会話出来た日、父はバイトの為に大阪に残った妹のことを訊いていた。仕事だと言うと、ああ、そうか。と頷いた。それだけだった。そのあと、父はワタシの存在が見えてないかの様に振る舞い、空中に向かって話しかけていた。幻覚でも見てたんだろう。

入院からちょうど一カ月、父は妹とワタシが入れ替わりで大阪に戻ったその日に容態が悪化して、翌日お昼過ぎに逝った。正直、ホッとした部分もある。父は生きていても、恐らく寝たきりになるだろうと言われていたし、しばしば病院から今日が山です。と連絡があり、その度に病院に泊まり込み(アパートを借りていた)、今か今かと来るその時を待つ事が、精神的に辛かったからだ。大阪へ帰れないのもストレスで、急にわっと泣きだすこともあったりして、しんどかった。とにかくしんどかった。

ワタシは未だに、父に対する後悔がある。

父が倒れる前日の日曜日、父が部屋に来て

「スイカを買ったから食べよう」

と言ってくれた。ワタシはスイカが大好きなのだ。父はわざわざ買いに行ってくれたらしかった。それなのに、ワタシはものすごく適当にあしらった。最低だった。

それが父とのまともな会話の最後のチャンスだったのに、それを不意にしたのだ。それ以降、話しをする事が出来なくなるなんて、考えもしなかった。あの時、リビングに行って、一緒にスイカを食べればよかった。と、もうかなり経つが、未だに思うのだ。夏になると、いつも思い出す。ワタシは一生、そのことを悔やんで生きるんだろうと思う。

まだ手放せてない。

死ぬまで手放せないだろうな、父への思いを。そう考えると、映画のその言葉に涙が出た。

そういう映画だった。





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