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ものづくりに向き合い、贈り物を選べる。お箸メーカー初のファクトリーショップ『拝啓』を南関町に

こんにちは。「竹の、箸だけ。」に、こだわり続けてきた、熊本のお箸メーカー「ヤマチク」です。純国産の天然竹を人の手で一本一本刈り取り、削り、「竹の箸」を作り続けてきました。

2023年は、ヤマチクが創設60周年を迎える年です。この11月11日、日本国内のお箸メーカーで初めてとなる、カフェを併設した直営店『拝啓』をオープンします!

わたしたちが目指すのは、お客様との対話を通して、友達、ご家族に贈る一膳を見つけるお手伝いをすること。そして、もちろんご自身にとってもピッタリの一膳を選べるようにすることです。つまり、わたしたちは『拝啓』を、お箸の魅力をじっくりとお伝えできる世界一の場所にしたいと考えています。

今回は、そんな『拝啓』がどんなショップなのか、また、その思いのたけをお伝えします。

ファクトリーショップ『拝啓』の姿

『拝啓』店舗内にあるのは、売り場とカフェです。

売り場では、ヤマチクのお箸はもちろんのこと、これまでに出展してきた展示会や、主催してきたマーケットイベントで知り合った、日本全国のメーカーさんの「いいもの」を取り揃え、お客様の食卓を楽しく彩るお手伝い。カフェでは、コーヒーなどの飲み物をお出しして一息ついていただいたり、お箸で実際にお食事をしていただけたりする予定です。

カフェで使うお箸はお客様に選んでいただくので、気になったお箸の使い心地をすぐに試していただけます。

でも、『拝啓』の魅力は、それだけではありません。

実は、『拝啓』のショップ面積自体はそんなに広くはありません。建設予定地は、現在ヤマチク第二倉庫が建っている約25坪(約82㎡)の敷地。ここに、お手洗いと店舗の2棟を建てるので、こじんまりとした印象を持つ方も多いはず。

それでも自信を持って「ヤマチクの竹のお箸の魅力を存分に伝えることのできる世界一の場所」と言っているのは、実際にお箸を触っていただけるだけでなく、工場見学やワークショップにも参加いただくことで、お箸の生産背景をきちんと伝える場にしたいと考えているからです。

『拝啓』という名前には、お客様が手紙を綴るように相手の顔を思い浮かべながらじっくりとギフトを選ぶお手伝いをしたいという思いからの「拝啓」と、生産工程や材料などお箸一膳に関わるすべてのことを伝えたいという思いの「背景」という意味を込めました。

ショップでの体験を通して、ヤマチクの思いやものづくりのことのすべてをお伝えしたいと考えています。

現在、カフェのオープニングスタッフを募集しています(※募集終了しました)。募集の内容は、「日本仕事百貨」さんのサイトでご紹介いただいています。もし興味を持っていただけたなら、ぜひ覗いてみてください。

https://shigoto100.com/2023/05/yamachiku.html

これからのヤマチクは、ショップを建設しながら、アイデアのブラッシュアップ、メニューの開発、お取り扱いする「日本全国のいいもの」選び、関連イベントの企画と、大忙しの予定です。

10月中旬にはヤマチクの還暦祭も兼ねたプレオープンを開催予定です。『拝啓』のSNSアカウントも開設したので、ファクトリーショップができあがっていく様子を、こちらで見ていただけます。完成したときには、ぜひいらしてください!

『拝啓』構想ができるまでの4つのきっかけ

1963年から60年の間、お箸を作り続けてきたヤマチク。そんなお箸メーカーが、なぜこのタイミングでファクトリーショップを南関町でオープンすることを決めたのか。ヤマチクの専務である山崎彰悟に聞きました。

2023年6月に実施された『ててて商談会』の様子。左の人物が山崎です。陳列しているお箸のほぼすべてを、実際に手に持って試していただけるように工夫しています

ここに至るまで、4つのポイントがあったようです。

そのひとつが、展示会への出展です。

「これまでに出展したり、企画してきたイベントでは、出展者同士よく話します。出展者には作り手の方も多いので、会話を通して、作ったものの裏側に、どれだけの強い想いや背景・歴史があるのか、を知るんです。ものの良さは、こちらも作り手なので、細部のこだわりから見てとれます。この経験を通して『いいものをお客様に届けながら、その背景にあるものも、ていねいに伝えたい』と思うようになりました」

2つ目は、2020年からのコロナ禍です。2019年の自社ブランド立ち上げから、ヤマチクは東京や大阪など都市部の商談会へ参加してきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大で人々の行動が制限されたことが、南関町発の行動を起こすきっかけになりました。

「実は2013年、24歳のときにヤマチクを継ぐために大阪から戻ってきた後、マーケットとしての南関町は一度諦めているんです。仕事が終わった後に寄れるカフェや本屋のような場所もなくて、最寄りのコンビニまで車で15分という環境に、なんてところに戻って来たんだろうと思いました。加えて、自分自身は中学校から町を離れているから地元に所属するコミュニティもなくて、ヤマチクが新しい挑戦を始めたとしても、町内の理解は得られないんじゃないかと。それでセオリー通りに、まずは都市圏で実績をつくって、ヤマチクの試みを地元の人に受け入れてもらおうと考えたんですね」

「でも、その流れがコロナ禍で途切れました。人の移動がなくなって、東京の経済活動はしばらく止まってしまったけれど、地方は復活が早かったんですね。地元の小さくておしゃれなお店に地域の人が行くようになって『マイクロツーリズム』という言葉もいっとき言われるようになりました。ヤマチクも、不安に思いながらも『大日本工芸市 at 熊本』を2020年11月に開催すると2000人以上が来てくれて、場を整えてコンテンツをちゃんと作れば、人が来てくれるということが経験的にわかりました」

『大日本工芸市 at 熊本』の様子

3つ目は、ポップアップでたくさんのお客様に直に接した経験です。

「お箸を買うときに、自分のだけを買う人は少ないです。『お父さんはこれかな』『子どもは最近この色が好きかな、手も大きくなったから……』と、ご家族の分も選んでいかれます。カトラリーというジャンル自体、ご家族分をまとめて購入されることが多いんですが、それこそ、手紙を綴るように一人ひとり想い描きながら選ばれている方の表情は、とても暖かくて、キラキラとしていて、良い時間を過ごされているなと感じます」

「ポップアップから得た『作り手がちゃんと伝える』『お客様が選びながら楽しんでいることを大切にする』という考えは、『拝啓』を始めとするヤマチクの取り組みのベースとなっています」

4つ目は、場所を言い訳にしない人たちと出会い、あるいは知ったこと。彼らの存在に勇気をもらったそうです。

「障害のある方が描いた絵をデザインにするヘラルボニーさん(岩手県盛岡市)、まちでイベントや店舗オープンなどいろいろと仕掛ける山下賢太さん(鹿児島県甑島)、福井県鯖江市の人たち、新潟県の燕三条の人たち、それから、長野県東御市のパンと日用品のお店のわざわざさん。そういった、場所を言い訳にせず想いを形にしている人たちがいることを知ったからこそ、ヤマチクもやってみよう、と思いました」

「地元でもちゃんと場をしつらえればコンテンツになる。ヤマチクだからこそ・南関町だからこそできることを、東京を基準にするのではなく、お客様といっしょに育てていかないと、と思います」

車で一時間圏内には、200万人以上が住んでいることが、試算からわかりました

南関町と日本のものづくりがよりおもしろくなるように

一度はマーケットとして捉えることを諦めた南関町ですが、まちを中心に車で1時間の距離を「商圏」として捉え直すことで、新たなアプローチも見出しました。

「南関町は、福岡と熊本から車で1時間、どちらへ行くにも必ず通るまち。佐賀市も久留米市も車で1時間圏内に収まります。でも、1時間という距離はわざわざ来る場所ですよね。『拝啓』でお箸のことを知ってもらってから、家に帰るまでのこのそこそこ長い時間に、体験したことを思い返してもらうことで、より深い感動を持ち帰ってもらえると思うんです」

交通の要衝である南関町

『拝啓』がオープンした先には、まちの魅力が磨かれる未来を想像します。

「他のまちでもそうですが、ひとつ人気になったお店があると、いろいろな人が近くでチャレンジするようになります。伝統工芸の小代焼、南関そうめん、南関あげ、お米や野菜などのおいしい農作物といった『いいもの』がある南関町だからこそ、チャレンジする地元の人たちが増えることで、まちそのものに磨きがかかってくるといいですよね。おしゃれなお店があることそのものが町内の若い人たちにとっては自慢になるだろうし、若い人たちが集まるようになれば、子育てや働き方についての行政的な支援が充実するようになるはずです」

さらに、日本のものづくりへの貢献も視野に。『拝啓』を通して、ヤマチクのお箸を手に取るだけでなく、お箸の背景を知っていただくことで、ものづくり全体への理解度が上がり、材料の調達や制作工程がお客様が買い物をするときの判断基準になったり、ものづくりの職業に興味を持ってもらったりするきっかけになれば、と思います。

これからの道のりは、ヤマチクや『拝啓』のSNS、このnoteのなかでもお伝えしていきたいと考えています。2023年11月11日のオープンでは、みなさんにお会いできたら嬉しいです。

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#ヤマチク

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『拝啓』のInstagramアカウントも開設しました。

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