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中二のあの日に起こったこと①

なぜか小さいころから恋愛の話が苦手だ。
中学校や高校では周りの子たちは「〇〇先輩かっこいい」だの「今度〇〇君に告白する」だの、女子同士の話題の筆頭は常に恋愛話だったものだが、本当に興味がなかった。年齢がいって「〇〇ちゃんと〇〇くん、どこまでヤッたんだろ」的な話にもなると心の中で吐きそうになっていた。

どうしてこうなってしまったのか。

先日泊りに来てくれた友人と話の流れで学生時代のトラウマ的な体験の話をお互いにしていた。
その時に友人がかけてくれた一言が、わたしにとってまさに光明だった。

「それはつらかったね。こわかったね」

『あぁ、つらいって言ってよかったんだ。』
『怖いって言って、よかったんだ。』
わたしの凍り付いた心に小さなクラックが入った。

今日はその話を書こうと思う。

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話は中学二年生の終わり。
吹奏楽部にとっての集大成、定期演奏会を終えたときのことだ。

当時わたしは転校を控えていたので打ち上げの中で盛大なお別れ会をしてもらい、たくさんのプレゼントと手紙を抱え、泣き疲れた顔で母の迎えを待っていた。
母はなかなか来なくて、一緒に親の迎えを待っていた友人たちも一人、また一人と減っていき、すっかり暗くなった空の下とうとう待っているのはわたし一人になった。

『また引っ越しかぁ。嫌だなぁ。。』

暗い車道をぼーっと眺めながら行き場のない寂しい気持ちを抱えていたその時、

「お疲れ」

ふいに横から声をかけられた。見ると、昨年卒業したK先輩(♂)だ。(定期演奏会は卒業したOB・OGもたくさん聴きに来てくれる)吹奏楽部は女子比率が圧倒的に高いため、男子は必然的にモテる傾向がある。特に先輩ともなると、それはもう物凄いあこがれの的、アイドル的存在となる。K先輩はその中でも人気のあった先輩だった。

先「定演すごくよかったよ」
フ「ありがとうございます」
先「ずかんちゃん(当時のわたしのあだ名)、引っ越すんだ。知らなかったからびっくりしたわ」
フ「はは…そうなんです。来週には引っ越しです」
先「岡山か、遠いね」
フ「はい」
先「…。」
フ「…。」
先「あのさ、」
フ「はい」
先「……。
  ………。」

フ『…え、これはまさか…』
先「あー。うん…」
フ『あー…この流れは…やばいのでは…』
先「……。
  俺、ずかんちゃんのことずっと好きだったんだ。」

『ぎゃーーーーーーーーーーーーーやっぱりかーーーーーーーーーーーーーーーぎゃーーーーーーーーーーーーーー(爆死)』

当時のわたしはまだ人を好きになるということもよく分からないほど幼かった。付き合うとか別れるとか、よくわからなかった。みんな楽しそうだな、大人っぽくてかっこいいなと思っていた。そういうことが自分事になるなんて想像もしていなかった。それがまさか、みんなのあこがれの先輩から告白なんて寝耳に水、青天の霹靂、藪から棒、out of the blue!である。
困ったぞ…!

▶緊急脳内会議開始
どうする。まさかこんな流れになるなんて想定外すぎる。このままセンチメンタルに浸っていたかったのに。困った。まじで困ったぞ。しかしあのアイドルK先輩だ。大変光栄ではある。しかしK先輩だぞ。去年告白して断られた子もいるんだぞ。嫉妬がこわいぞ。あでも引っ越すからいいか。いやいやいやそういう問題じゃなくて!そもそも付き合うとかよくわからんし。先輩高校生だし。付き合ったとしても学校ですら会えないしそもそも来週引っ越すし。いや待てまず好きじゃないだろ。でも別に嫌いでもないし。いやだがそもそも後輩が先輩(神)の告白を断るとかええんか。いやダメな気がする。だめだろ。先輩のいうことは基本「はい」だろ。(←ゴリゴリの体育会系吹奏楽部だった)…え、てことはわたしに選択肢なくない?え、ちょっと待って。ちょ、ちょ、いやまず何か言わないと。返事しないと。えっと、えっと・・・

フ「あ…はぁ…えっと、、。ありがとうございます。」

いやちがうだろーーーーーーーーー!!!!!(再爆死)
ばかかわたしは。なんだよそれ。いやでも少しは時間稼ぎにはなったか。あぁどうするどうするどうするどうすればいいのーーーーーーーーあーーーーーーーーー

そのとき天の助けが来た。母の車が颯爽と暗闇から現れた。
『キターーーーーーー!!!』

フ「あ、じゃあお母さん来たんで、お先に失礼します(ダダダダ)」
動揺がばれぬよう、しかし迅速に車に乗り込みお辞儀をした。

はぁ…難を逃れた…
危なかった…。

母「お待たせ~。さっきの去年卒業した先輩だよね。来てくれてたんだ~。もしかして告白とかされたん?(にやにや)」
フ「そんなわけないじゃん(動揺)」
母するどし。

帰りの車の中、混乱する頭を鎮めるため奥歯を噛みしめ、必死で今起こった事件を忘れようとしていた。

続く

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