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【薬剤師】日本でも法改正検討「医療用大麻」の合法化の是非を考える

こんにちは。やまぶきです。
今回もnoteをご覧いただきありがとうございます。

昨今では、大麻類似の合成化合物HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)を含むグミ、いわゆる大麻グミを食べた人が体調を崩し、相次いで搬送されたことが社会問題化しています。以前には大麻の成分であるCBD(カンナビジオール)を含むサプリメントやグミも流通し、問題になっていました。ただ、現行法では大麻から製造された医薬品の使用は認められておらず、医療分野の解禁を求める声が出ていました。

今回は、「医療用大麻」の合法化の是非について考えようと思います。


1.大麻取締法改正案成立へ

大麻取締法の改正案が今月14日に衆院本会議を通過し、参院に送付され今臨時国会で成立する見通しです。改正案は大麻草から抽出した成分を含む医薬品(医療用大麻)を医療現場で使えるようにすることを柱としています。

近年、大麻の規制緩和が世界的な広がりを見せています。今年8月16日にはドイツで個人が少量の大麻を所持・栽培することを認める法案が閣議決定されました。税収増や、流通を透明化することで犯罪組織の資金源を断つ狙いなどがあるとされています。また、厚生労働省などによると、大麻から製造された医薬品の使用を認めている国は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、韓国など20カ国以上にのぼり、難治性てんかんの治療やがんの痛み抑制などに使用されています。

日本でも大麻を巡る議論は活発化しており、政府は大麻草を原料にした医薬品を国内で使用できるよう法改正の検討を開始しました。その他、繊維・種子の採取や研究目的にだけ認められている大麻草の栽培を、産業や医療目的でも認める内容を盛り込む方針です。

ただし、法改正を巡ってはもうひとつポイントがあり、それは「使用罪」の新設です。現行法では栽培や所持は規制されていますが、使用しても罪に問われないようになっており、これについてはさまざまな意見があります。

今回の改正案では、この医療用大麻解禁で、嗜好品目的の大麻自体が解禁されたとする誤った認識が広がり、深刻化する若者の大麻乱用に拍車をかける恐れもあり、その対策として、新たに大麻の使用罪が設けられました。

2.現在の大麻の規制

議論をする前に、前提として日本における大麻に関する法的解釈を紹介します。厚生労働省は大麻に含まれる有害成分は幻覚作用や記憶への影響、学習能力の低下などをもたらすと大麻の乱用について注意喚起しており、現時点で大麻の栽培や所持は法律で禁止されています。

その背景には、より強い違法薬物を使用する入り口となる「ゲートウエー・ドラッグ」と呼ばれる大麻の若者への蔓延があります。昨年の大麻事件の摘発者は約5500人で、うち約7割が10~20代です。使用に罰則がないことで大麻への抵抗感を下げているとされています。 今年、日本大学アメリカンフットボール部の部員2人が大麻を譲り受けた容疑などで逮捕され、11月には早稲田大相撲部の部員も摘発されました。 また、使用罪が規制対象ではないことで、薬物検査で大麻の陽性反応が出たにも関わらず、摘発を免れる「抜け穴」にもなっていました。東京都渋谷区で一昨年5月、20代男性がビル4階の窓から転落死し、男性と現場にいた知人6人から大麻成分が検出されました。転落原因は大麻による錯乱状態とみられたが、現場から大麻は見つからず、6人も摘発されませんでした。

医療用大麻の正しい知識の普及を目的とした「GREEN ZONE JAPAN」の代表理事で医師の正高佑志さんは、日本で大麻の話をする上で最も大切なことは「安全性」で「危険性をどう評価するか」をポイントに挙げます。「大麻の依存性はお酒やタバコに比べてそれほど高くなく、長期間使用しても大きな健康的な問題は出てこないことが科学的な定説になりつつある」と話します。

1948年施行の「大麻取締法」では、大麻の栽培、所持、譲受・譲渡等などは取り扱い免許を受けた人以外は原則禁止です(都道府県知事の免許を受けた大麻取扱者のみ可能)。加えて、大麻から製造された医薬品の施用は何人も禁止されています。これら違反した場合、栽培・輸出入で7年以下の懲役。所持・譲渡譲受で5年以下の懲役となり、営利目的の場合はさらに罪が重くなります。

また現在、大麻草は部位によって規制され、花穂、葉、根などは規制対象、種子や成熟した茎の部分は対象外となっています。そして、大麻は100種類以上の化学物質から構成され、それらの成分は総称して「カンナビノイド」と呼ばれています。主な成分は「THC(テトラヒドロカンナビノール)」と「CBD(カンナビジオール)」の2つです。前者は幻覚など精神作用をもたらすため、化学合成されたものは麻薬として規制され、記憶への影響や学習能力の低下などを引き起こすと言われています。一方、後者は幻覚作用がなく、規制はされていません。そのためオイルや食品などに使用され、ストレスの緩和効果があるなどとして販売されています。

正高さんは、「合法化、解禁というと野放しのような印象を受けるが、そうではなく、国がルールを作り、管理し、課税していくことが大事」と補足します。

一方で、哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人さんは、大麻はハードなドラッグの入口になるという懸念があり、その危険性を認めた上で「問題を区別する必要がある」と言います。例えば、医療用に使われている「モルヒネ」はアヘンの原料となるケシから精製されているなど、麻薬として禁止されていても医療に使われているものは多々あるため、「大麻に関してもそうした振り分けができれば、議論はもっとスムーズになる」と指摘します。

3.医療用大麻の有効性

先述の通り、厚生労働省は現在大麻取締法の改正を検討しており、その内容は「大麻由来の医薬品が国内で使用可能にすること」、「薬物の乱用対策として、使用罪を創設」、「現在の大麻の部位での規制から有害性のある成分を基準に規制するという方向に変更すること」、「大麻産業の規制緩和」です。

では、医療用大麻はどんな症状に有効なのか。「てんかん」や「パーキンソン病」、「アルツハイマー型認知症」、さらには「がん」など、約200の病気・症状に効果があるのではないかと言われています。

萱野さんは、こうした有効性が見込まれるものは「早く認めたほうが医療福祉を向上させる」と肯定しつつ、一方で普及にあたって邪魔しているのは「大麻に対するイメージ」と指摘。というのも、医療用大麻の解禁を弾みに嗜好用大麻の認可まで求める方もおり、「それが逆に医療用大麻の認可を妨げている。医療用を認めたらその先も認めなければならないという不安を掻き立て、(医療用大麻の合法化を)阻んでいる」と主張しています。

正高さんからは「どこまでが医療用でどこからが嗜好用なのか、その線引きは難しい。例えば、よく眠れるからと(大麻を)使うのと睡眠薬を使うことはどう違うのか。それは医療用途じゃないのか(という声もある)」と指摘。これに萱野さんは「そうしたことを言うから多くの人はより警戒する。区別するところから議論しないと認められない」と一蹴。堀は「そのための社会的議論が必要で、こうしてパブリックで話すべき。(大麻について)ちゃんと知ろうというのが今日のテーマでもある」と強調します。

医療用大麻の合法化について街頭で話を聞いてみると、「医療に使われるのであれば賛成」、「大麻自体が危険なものだから危ないのではないか」、「誰もが医療用大麻と大麻の違いを区別できるわけではなく、特に今の若者は情報源がネット、SNS、YouTubeなど公平性が担保されにくいものが多いので、大麻に詳しい団体が(正しい)情報を発信していくことが大事」、「医療用とそうでないものをどう判断するのかを明確にしてからでないといけない」、「幻覚が見えるなどそういうことがなければ、人の命が救われるのであれば賛成」、「良い部分と悪い部分を国が明示し、みんなが危険性と安全性を理解できるようにすべき」など賛否両論、さまざまな意見がありました。

「(使用)目的を誰が判断するのか、社会的モラルのラインを誰が決めるのかなどはすごく難しい問題だと思う」と議論を重ねてなお、医療用大麻の合法化に頭を悩ませる意見もあります。

ドイツ公共放送プロデューサーのマライ・メントラインさんは「もしかしたら(大麻という)ワードは変えたほうがいいかもしれない」と提案。なぜなら、日本では大麻という言葉には悪いイメージが付き纏い、タブー化されているから。「(街頭で)医療用大麻のことがわかっていないというコメントもあったが、理解が深まっていないことが問題」と述べます。

マライさんの母国ドイツでは、嗜好目的での大麻使用が閣議決定され、2024年の施行を目指しています。ただし、ルールは厳格化されており、保険当局に団体を登録した上、団体内の集団栽培と最大500人まで募れる会員への流通のみを許可。また、18歳以上の成人個人に25グラムまでの所持と一部の公共の場以外での使用を認め、自宅でも最大3株までの栽培を許容しています。

世界的な状況を見てみると、医療用大麻を合法としているのはドイツをはじめ、イギリス、フランス、スペイン、イタリア、オーストラリア、韓国。対して、違法としているのは、日本、アメリカ(国としては違法。36州及び4つの地域では合法)、ロシア、インド、スウェーデン。さらに、カナダやウルグアイに加え、今後はドイツも嗜好目的での使用が可能になります。

医療用大麻の合法化にあたって、正高さんは「非犯罪化も大事」と主張。要は、未成年の喫煙も違法ではあるが刑務所に入れられるわけでなく罰金刑程度。大麻も同様にすべきとし「それが国際的な潮流」と語ります。

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