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羊と鋼の森 宮下奈都
大号泣するような感動話ではない。だけど、読み終えた後さわやかなそよ風を感じるようなそれでいて、自分も何かに打ち込んでみたくなるようなそんな熱い気持ちを持たせてくれるような作品だった。
読んでいる最中はまるで、森の中にいるようだった。静かな話だ。大きな音は立たない。小さな音が鳴っている。それを一つ一つ確認し、確認しているうちに森の中にどんどんと入りこむ。
森の中には険しい道もあったり、時に木漏れ日がさしたりする。案内の看板があるわけではないから、迷うこともある。主人公と一緒の森の中を一歩一歩、歩きながら確かなものを探しに行く。器用ではないけど、愚直なまでに前向きな主人公を応援しながら、一緒に歩いているような感覚になった。
ピアノは弾けないし、良くわからない。クラシックは苦手だ。だけど、読み終えた後聴きたくなった。YouTubeで聴いてみた。今までと違う音に聴こえた。眼を閉じると、森の中にいるようなさわやかな気分になった。
心に刺さった文章を紹介します。
才能があるから生きていくんじゃない。そんなものあったってなくなって生きていくんだ。あるのかないのかわからない、そんなものにふりまわされるのはごめんだ。もっと確かなものをこの手で探り当てていくしかない。
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