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データ利用は国際競争、産業振興視点で議論しましょう。デジタル庁への期待


「デジタル庁」設立に向けた議論に、法律の専門家からの異議が出た。
 日本政府は、菅義偉首相の指示に基づき新組織「デジタル庁」を2021年にも新設し、官民からデータを集め官公庁のデジタル改革を推進する方針だ。その準備として「デジタル改革関連法案ワーキンググループ」がこの2020年10月から立ち上がり、IT基本法などデジタル庁に関連する法律の改正へ向けた議論が始まっている。
 このワーキンググループの第2回会合で提案された「データ共同利用権(仮称)」に対して、情報法を専門とする鈴木教授(新潟大学大学院現代社会文化研究科・法学部、一般財団法人情報法制研究所理事長、理化学研究所AIP客員主幹研究員)は「昨今まれに見る最悪の意見」と厳しい評価を下した。

  この議論は、知財、著作権などの話ではなく、国際法なども含んで「社会の枠組み」をどうして行くかの議論です。僕の知識は不十分で確定的な意見は言えません。なのでどちらが正しいか判断できませんが、「プライバシー権とデータ」の専門家が、総論賛成、各論反対的に意義を申し立てていること、そして丁寧に緻密な立法との主張には強い違和感を感じます。既視感もあります。一言で言うと「そんなテンポ感では間に合わないのでは?」という違和感です。専門家はリスクを恐れますし、ちょっと意地悪な言い方が許されるなら、ゆっくり丁寧な議論が続く方が、自分の存在意義が上がります。デジタルと著作権の話ではずっと見てきた光景です。そして、もう議論する意味がないところに社会が進んでいって、不要になりかけた頃に法律や方針が決まるのも日本ではよくあることです。
 この種の議論で最も重要なのは国際競争の視点です。日本だけ「正しく」ても意味がないことを専門家こそ理解するべきと考えます。今の日本は、「前門の虎、後門の狼」な状況で、GAFAが勝手にルールを決めさせないようにしようと思っていたら、世界を覇権主義的に抑えようとする中国が勢力を伸ばして、レイヤーが違いつつも、挟まれてしまっています。中国共産党政府の覇権主義的な横暴に対抗する方法を持っておく、アメリカ系グローバルIT企業にゲームのルールを一方的に決めさせないようにする、ためにどうするかという視点は死活的に重要です。
 基本的人権やプライバシー権を大切にすると、デジタル競争に負けそうな側面もある訳です。乱暴な喩えを出すなら、「少しくらい死者が出ても問題にならない中国で政府主導で自動運転が普及して、ルールやデータがそこで積み上げられて、世界標準ができてしまう」かもしれません。そのルールを僕たち日本人は許容できるのか甚だ疑問です。おそらくは、EUのGDPRと戦略的に連携して、ASEANやインドやオーストラリア、カナダとかを巻き込んで、アメリカと中国を喧嘩両成敗的に巻き込むような難易度の高い戦略が必要なのです。アカデミックな正しさよりも、日本国内の混乱を避けることよりも、国際社会で人権が守られるルールが構築されることを目指す戦略を、危機感を持って優先してほしいなとこのニュースを読んで思いました。

 データ活用でも「周回遅れ」になりつつある日本で、デジタル庁創設は朗報です。期待してポジティブに注目していきたいです。

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