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コスプレのルールつくりはクールにやりましょう!

 気になる記事でした。良い意味、悪い意味両面です。
早速、海外事情にに精通したエンターテック・アクセラレーターの鈴木貴歩がtwitterで「国内での取り締まりがメインになり、GAFAには網をかけられず国内事業者が弱る、ような展開にはならないことを祈ります。」とtweetしていました。140文字内で表現できる簡潔で、しかも彼らしいポライトな表現です。半端にやるとマイナスになるという懸念の表明ですね。同感です。
 おさえておくべきポイントを整理します。

コスプレはクールジャパンのシンボル

 日本ではまだ色眼鏡で見られることも多く、一部のマニアのサブカルチャー的な動きに見られているコスプレですが、ゲームやアニメのキャラクターを精巧に模すという「遊び」は、海外では日本のポップカルチャー愛好家の中で「王道」な行為です。
 世界中にJカルチャーをテーマにした大型のイベントは無数にあります。フランス・パリのJapan Expoは日本でも知られるようになってきましたが、数千人以上の規模のイベントが世界中で数百はあると言われています。そのほとんどは日本人は関与せず、現地の日本ファンがインディペンデントに行われています。そして、イベントのメインは、コスプレコンテストです。日本のポップカルチャー中心は、海外の日本ファンから見ると、コスプレなのです。「ルール化」をするなら、それらを踏まえて、コスプレカルチャーをリスペクト、盛り上げるベクトルで行わなければ日本にとってマイナスになります。

UGMは著作権のグレーゾーンから始まる

 インターネットがあらゆるものを「民主化」していて、流行は必ずと行ってよいほど、ユーザー発信で始まり、広まるようになりました。UGM(User Generated Media)UGC(Uzer Generated Contents)という言葉はそろそろ無くなっても良いくらい当たり前になりました。
 今、エンターテインメントの仕事に関わる人で、UGMの重要性については疑問を持つ人はいなくなったと思いますが、忘れてはいけないのが、既存の著作権ルールとの「相性の悪さ」です。
 世界のインフラとなったYouTubeも当初は「違法コンテンツ」にあふれていました。Googleは自ら「コンテンツID」という規格を導入して、テクノロジーを活かした、権利者と使用者のバランスを取る仕組みを作ろうとしています。(個人的には、Google様がご自分のサービスのためにお決めになるルールに一方的に従わされる現状への疑問は持っていますし、課題もたくさんありますが、取り組む姿勢自体は素晴らしいと思っています。)
 著作権は、Copyrightという英語の語源からも分かる通り、「マスターと複製物」という構造を前提にしたルールです。クラウド上にコンテンツを置いてアクセス権をコントロールするビジネスへの対応は前提にしないまま積み上げられたきたビジネス慣習があります。デジタルで情報が拡散する時代にユーザーがカスタマイズすることへのルールはそもそもの概念から曖昧です。
 前掲の記事にあるような、

非営利目的なら著作権法に抵触しないが、写真をインスタグラムなど会員制交流サイト(SNS)に投稿したり、イベントで報酬を得たりすれば、著作権侵害に当たる可能性が出てくる

 という程度の浅い認識でルールを作ろうとしても、足を引っ張ることにならないかが心配です。目に余るケースだけ今ある法律で対処してあとは今のまま、何もやらないほうがマシという場合もあり得ますから。大多数の人は「好きなだけ」でやっています。日本を好きになってくれている外国人、海外にアピールできる日本人をリスペクトしてデリケートに扱う必要があるのです。

「マリカー」事例の総括

 現状だと法廷でしか決められないことも多い、著作物の二次使用ビジネスだと、思い出されるのが、「マリカー」の事件です。日本の街中をマリオに模した服を着せてドライブするサービスは、訪日外国人観光客を中心に人気を博しました。当初、黙認していたように見えた任天堂も訴訟を起こして、勝訴したという事件です。

 マリカーについては、著作権以外に、道交法的な問題もあり、明らかにビジネスですし、その事業者側も乱暴なやり方の印象だったので、罰金の判決は妥当かなと思いますが、僕が改めて思ったのは、著作権に関する問題は裁判所に委ねても、意味のある判断は出てこないのだなと言うことです。既存の法律は対応できてないものを裁判官に委ねるのは無理ですよね。
 コロナ禍で事業の前提がなくなってしまっていますが、この判決を踏まえて、健全な形でマリカー事業が再開することを期待します。日本の街がゲームの舞台みたいになるという発想自体は素晴らしいですから。

コスプレを促進・活性化するための方法は?

 日本に「クールジャパン」があるとするなら、その象徴は「コスプレ」であるという事実をポジティブに認識した上で、活性化させるためのルール作りをするという姿勢が重要です。禁止する方向でルールを決めるならやらない方がずっとマシです。
 権利者側が理解を深めるための啓蒙も必要でしょう。細かい法律解釈まで踏み込むと僕の専門外になってしまうのですが、ざっくりいうと、

1)コスプレをしたい人が権利者に許諾を求める窓口をつくって、承認してあげる仕組みをつくる
2)権利者側に著作人格権的な拒否権は残しながら(あまりにオリジナルを否定しているような場合は禁止できる様なルールは作りながら)、著作財産権的には、許諾権ではなく、報酬請求権的な仕組みにする。

 ということだと思います。JASRAC/NexTone登録楽曲は自分でカバーするのは、著作権使用料さえ払えばできるというのと同じ様なスキームにするということです。もし日本の役所がここまで踏み込んでルール作りできたら、過去に例のない素晴らしい実績になると思います。
 原作者、出版社、ゲーム会社などの理解も必要ですが、日本のコンテンツが世界の人にもっと愛され、広まるためには重要なことですね。そんな「ジャパンコスプレ登録許諾機構」みたいな仕組みができたら本当に素敵です。期待しています。

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