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2018年オリコン1位作曲家前迫潤哉の「山口ゼミ」への帰還講義。J−Pop型トップライナーの誕生と成功の記録

 プロ作曲家育成プログラム「山口ゼミ」は、2013年1月にスタートしたので、もう8年目になります。受講生は500人を超えました。その中で多くの出逢いがあり、様々な才能が旅立っています。
 第20期を受講していた前迫潤哉さんを、ゲスト講師として招くことができました。こういうのって、歴史を感じて嬉しいものです。

 僕自身への刺激という意味も兼ねて、毎期(3ヶ月毎)の「山口ゼミ」で、ゲスト講師の1枠は、初めて招く方を入れるようにしています。この数年は、初めてましてで講師依頼をする形が続いています。ありがたいことに、講座の存在は知られているようで、前向きに受け止めていただける方が多くありがたいです。

 今回お願いした前迫君は、2018年1月〜3月に山口ゼミを受講していました。既にクオリティは高くて、extendedという上級コースは受講せずに活躍を始めていたのは知っていましたが、山口ゼミ受講中に、欅坂46「ガラスを割れ!」の採用連絡があったという話は今回初めて知りました。高田馬場駅から東京コンテンツプロデューサーズラボに向かう橋の上で電話を受けたというリアルな話が良い感じでした。
 そのエピソードからもわかるように、前迫潤哉の作曲家としての成功に山口ゼミの講座の内容は特に貢献していません。僕が語った心構えやビジネスへの向き合い方などは、役に立ったと言ってくれましたが(成功すると余裕が出て、お世辞も上手になるのかも知れませんwww)おそらく、スキル的には十分あるにも関わらず、自分が成長する機会を求めようとした彼の姿勢に幸運が降り注いだのだと僕は思います。講座の中でもよく語ることですが、「幸運の女神に後ろ髪は無い〜だから準備は怠らずに、チャンスを見つけたら迎えこんで掴む」というマインドは大切です。僕の知る限り「幸運の女神へ真面目に努力している音楽家を好みます。」そして、これも僕の口癖ですが、音楽を仕事にしていく中で一番大切なことは「運が良い」ことです。「山口ゼミの講座に足を運ぶ途中で出世作となるヒット曲の採用の電話を受けた」というエピソードは、なによりも嬉しいラッキーなエピソードでした。受講生たちも「ラッキーのおすそ分け」ができた気がします。

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 この日の話で、もう一つ発見だったのは、彼が最初から、コーライティングのトップライナーというスタイルであったことです。

 そもそも作曲家デビューのキッカケは?という質問の答えが、

 山梨の大学に入学し、教員免許を取得するも、シンガーの夢に向かい上京。 鳴かず飛ばずのライブ活動の中、当時EDMが流行っていて、知人の紹介でトラックメーカーから仮歌の依頼をうけるも届いたデータに歌メロがなく、メロも歌詞も浮かんだのを入れてほしい、と。完成を聴いた事務所社長より声がけをいただき、その事務所のトラックメーカーとコライトを開始

 というものでした。アメリカでは、トラックメイカーがイケてるループトラックをつくり、トップライナーがメロディと歌詞を載せるというコーライティングは一般的ですが、日本でも行われていたんですね。
 日本におけるコーライティングの元祖も本家も、山口ゼミ〜Co-Writing Farmだと名乗っていますが、5年以上前からストリートでそんな動きがあったというのは発見でした。
 前迫くんは、J-Popでコーライティングを前提としたトップライナーの最初の成功例かもしれません。今でも、コンペに対して、トラックメイカーを選んで、ディレクション付きで依頼をして8〜9割の完成度でもらったトラックにトップラインを乗せていくというスタイルを基本にしているそうです。この数年は彼も忙しく、コロナもあって、タイミングが合いませんでしたが、落ち着いたら真鶴でのコーティングキャンプや、来年以降再開する予定のアジア各都市での現地作曲家と混合で行うコーライティングキャンプにも参加してもらって、連携していくつもりです。

 僕がゲスト講師には必ず尋ねる質問「これからの時代の作曲家に求められることは何だと思いますか?」に対しても的確な答えをもらいました。

自分を裏方だと思わないこと。
クラブハウスの出現やSNSの普及においても、 自分が何者で何をしたいか、が発信出来る時代に、受け身体制のこの作家業界が心配です。 うまく、アーティストやディレクターと仲良くなれる、もしくはそんな仲間を見つけることが大切かなと思います。

 全くその通りだと思います。まだ30代半ばの彼らの世代がこれからの音楽シーンを引っ張っていってほしいです。講座後にご飯を食べながら、音楽業界の課題を話し合いながら、オリコン年間一位になったんだったら、JASRACの理事にも立候補するように唆しておきました。印税たくさん稼いだ人は、JASRACにたくさん手数料を落とした訳だから、資格がありますね。理事作家が高齢で現役感が薄いことがJASRACの最大の課題だと以前から僕は思っています。名誉職ではなく、現役バリバリの作曲家たちがルールを決める立場に立っていかにあと、日本の音楽界が時代遅れになるばかりです。
 自粛期間中でゆっくりお酒が飲めなかったので、「緊急事態宣言」が明けたら、ゆっくり飲みながら、未来の話をしようと思っています。とても楽しい日となりました。

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「山口ゼミ」は現在4月期生募集中です。オンライン講座になって、地方や海外からの受講しやすくなりました。4/3には説明会も行います!


チューターによる講座レポートはFacebookページに記載されています。


モチベーションあがります(^_-)