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率直に言って、日本最強の作曲家育成プログラムです。改めて「山口ゼミ」とは?続けている理由

 2013年1月からプロ作曲家育成を掲げて始めた「山口ゼミ」。8年間続けて、育成の仕組みとしては完成度が高くなっているなと感じています。スクール事業として儲かる訳ではなく、自ずと大きな宣伝費を投じられることもなく、粛々とやっていて、見つけてくれた人だけ相手にやれば良いやと思っているのですが、飽きっぽい性格の僕がいまだに楽しく続けられている理由と、結果は出ているのに、良い情報のクチコミって意外に広まらないんだなと感じたので、謙譲の美徳はやめて、何が起きているのかを改めて説明しておこうと思います。

音楽業界の育成システムのセミナー形式への置き換え

 始めたきっかけは、音楽業界の後輩社長が「作曲家育成セミナーやりませんか?」と提案されたことでした。半端にやるのはカッコ悪いし、やるなら自分を追い込もうと「山口ゼミ」という名称にしました。
 音楽事務所を長年やっているので、音楽家の才能はどんな環境にあるとと伸びていくのか、どんな刺激が必要なのかはわかっていました。音楽業界人は才能を伸ばすことについては、みんな本能的な喜びを感じていて、直接メリット無くても育成に手を貸す文化があります。現存活躍するサウンドプロデューサーがレコーディングスタジオで優秀なエンジニアとのコミュニケーションで成長していったのを目にしていますし、アーティストにアレンジャや作詞家を組合る時も、その作品のためだけでなく、音楽家の将来のために有益な人とのコラボという視点を自然に持ちます。以前はそんな風に業界内のインナーサークルで行われていた作編曲家の育成が、仕組みとして壊れているのを実感したので危機感は持っていました。レコード会社と契約すると「3年間でアルバム3枚」が標準だった時代には、30曲以上の楽曲を制作することで、アーティストとして成功できなくても、プロの作詞作曲編曲家への準備になりました。

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 僕が「山口ゼミ」で目指したのは、業界内で起きていた体験をセミナーという形に置き換えることです。日本人は生真面目なので、セミナーとか学校とか言うと「基礎からしっかり学ばなければ」「まずはスキルを身に付けて」と考えてしまう人が多いようですが、プロの音楽家になりたいのだとすると、適切な方法ではありません。ポピュラーミュージックをクリエイトするために、日本の公教育的な学習法は有効ではないのです。第一線の現場で起きていることを肌で感じて、自分が「ここでやれるためにはどうすればよいのだろう?」と必死に考えてモガクことが、ほぼ唯一のプロの作曲家になる方法だと僕は思っています。モガキが少くて済む人を「天才」と呼んだりしますが、やってることは本質的には同じです。

パラレルキャリアの時代のライフワークとしての作曲家

 直近のオンライン説明会で「山口ゼミ受講のゴール設定は何と考えればよいですか?」との質問があったので「自分がどうすればプロの作曲家になるかわかるようになります、もしくは諦められます」と答えました。実際、初期のランディングページには、「わかるもしくは諦められう講座です」と書いてありましたw。
そして、「わかる」と「できる」が違うので、わかった後にできるようになるための、より実践的な内容として、山口ゼミ受講済みの人だけを対象にした「山口ゼミextended」という半年のコースを用意しています。extended受講終了時に、山口伊藤が「プロレベル」とクオリティに達したと認められるとCo-Writing Farmに入会できるという仕組みになっています。

パラレルキャリアの時代には、「ライスワーク」(稼ぐための仕事)と「ライフワーク」(一生続ける自己実現のための仕事)があると言われています。「ライスワーク」にできるまでには、不安定な側面は否めませんが、作曲家を「ライフワーク」にしたい人は多いでしょう。同時に「夢の印税生活」というロマンが無くなっている訳でもありません。
 日本の大企業も兼業OKが普通になり、デジタル化で音楽制作作業が分散化し、そしてコーライティンが広まったことで「プロ作曲家に挑戦を続ける」ことは以前よりずっと敷居が低くなりました。

 Co-Writing Farmは、非独占型(拘束が無い)で作家エージェントの仕組みを持っています。株式会社CWFは、選挙で選ばれたメンバーも経営に参加しつつ、請求や印税分配などの実務のプロセスも、全て作家自身が可視化できるやり方で運営しています。入会したり退会したりも1年単位で自由です。
 日本の音楽界で、クリエイターの立場が低く過ぎるという危機感が伊藤涼と僕の共通認識としてあります。地位を上げていくためには、クリエイター側がビジネスに関して責任感を持つことも必要というのが、Co-Writing Farm運営のベースの思想です。現状のエージェントフィーは20%ですが、もっと下げる方法も模索したいと話し合っています。

クリエイター・ファーストの世界を目指す

 2013年1月開講なので10周年が近づいてきました。「何かを辞めることは、始めるよりも難しい」と知っているのは年の功でしょうか?
 酒飲みの僕たちはコロナ前は講座後に必ず飲んでいましたが、赤ワインを飲みながら伊藤涼と「いつまで山口ゼミやる?」といつも話していました。「過去の自分をなぞるようになったら成長が止まるし、その人はダサくなる」というのをマネージメント経験で知っているので、自分がそうならないように、「飽きたら辞める」と始めた時から公言していました。
 実際は、「作曲家になりたい」と懸命に取り組む人たちと接するのは自分にとって刺激になるし、まれにですが、「才能が確変する」瞬間に立ち会うことがあって、その時はカタルシスを覚えます。マネージャー体質が染み付いているのでしょう。
 そして、山口ゼミのオーガナイザーを続けることで、音楽プロデューサーとしての自分のクリエイティビティはupdateされつつ向上している実感があります。これは伊藤涼も同じだと思います。まさに「現役感」ですね。

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 500人を超えた過去の山口ゼミの受講生には、親が薦めてくれた中学生から還暦を過ぎた人まで、年齢も職業も多種多様で、その多様性がCo-Writing Farmの魅力にも繋がっています。
 日本におけるコーライティング・ムーブメントの震源地になり、実際に日本にコーライティングが広まったことや、株式会社CWFが会社として回りはじめて、クリエイターのセルフマネージメントのモデルケースを見せるという役割もあるのかなと思い始めています。

継続するプロ作曲家育成プログラム「山口ゼミ」

 そんな独特の育成システムを持つ「山口ゼミ」は、3ヶ月毎に募集を行い続けています。まもなく第34期が始まります。「第一線で活躍する講師陣」というのは、専門学校でも言われていそうなことですが、僕から見ると「元プロ」の方が多いにお見受けします。ゴルフにレッスンプロがいるように、教える専門の方がいらっしゃることに否定的な訳ではありませんが、「元プロ作曲家」と話しても僕は退屈なので、山口ゼミは、現役感を持ったこれからヒット曲を出そうと取り組んでいる人しかゲストで呼ばないと決めて、続けています。

「山口ゼミ」最近の主なゲスト講師(順不同)
浅田祐介、鈴木daichi秀行、KenArai、中村泰輔、丸谷マナブ、Carlos. K、AKIRA SUNSET、遠藤ナオキ、前迫潤哉、水島康貴、佐々木望(Soulife)、白戸佑輔、河田総一郎(Soulife)、多胡邦夫、島野聡、her0ism、corin. Ryosuke "Dr R" Sakai、本間昭光、鎌田一人、nishi-ken、多保孝一、渡辺翔、ヤマモトショウ、佐藤純之介、加茂啓太郎、灰野一平(ソニーME )、KAZY伊藤(ソニーME )、菊地毅(ビクターE)、安楽謙一(SDR)吉田雅裕(フジパシフィックミュージック)

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 以前は北海道から鹿児島まで(そして台湾も)通ってくれる人たちがいましたが、2020年春からはオンラインをベースの講座に組み直したので、地方や海外からも受講がしやすくなりました。定期的に説明会もやっていますので、興味のある人は受講を検討してみてください。
 Co-Writing Farm主催のワークショップやセミナーも定期的に行っています。こちらはPeatixをチェックしてみてください!

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モチベーションあがります(^_-)