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音楽ビジネス生態系の変化を告げるTuneCoreJapanの還元額100億円


 2012年にアメリカ本社との合弁で設立されたTuneCoreJapanの存在感がどんどん大きくなってきています。当初はレコード業界関係者は「スルー」という態度でしたが、配信事業社との間を取り持つ「アグリゲーター」には、エイベックスやソニー・ミュージック、コロンビアなどが、それぞれ買収などを通じて傘下に加えています。一貫してインディーズアーティストのデジタル配信に特化、注力してきたTuneCoreJapanは、使いやすさとブランディングで着々と使うアーティストが増えているようです。2019年の還元額42億円というのも、日本レコード協会加盟社の音楽配信売上額が700億円という数字と比較しても、インディーズ、DIYのアーティストの積み上げで42億円というのは大きな存在感のある数字です。
 これは視点を変えれば、日本のレーベルがどんだけデジタルを軽視、忌避してきたかの証明でもあるかと思います。日本の音楽家にとっての機会損失はとてつもなく大きいと言えるでしょう。

 サービス開始前から彼らを応援してきた僕としては、嬉しいニュースですが、唯一残念なのは、海外比率が7%しか無いことです。香港からの帰国子女でもある社長の野田君のテーマは、「日本のアーティストが海外が成功する機会を作る」だと常々聞いています。実際、海外のカンファレンスにいき、配信サービス事業者やメディア関係者、フェスティバル・ディレクターとの接点を積極的に作ってくれています。ここでも、既存の音楽業界関係者が怠ってきた部分を、起業家らしいフットワークで動いてくれていて、本当にありがたいです。ただ、アグリゲーターの立場で努力するだけでは限界があるので、原盤保有者(レーベルや事務所、音楽出版社)、アーティストがもっと積極的に海外市場の開拓をしていきたいものです。ストリーミングサービス上での展開にはコストはほとんどかかりません。どの事業者もアーティスト向けにデータ解析ツールなどを開放していますから、日本にいながらマーケティングも可能です。

 MIDIA RESERCHによる2020年の世界の音楽予測データによると、COVID-19の影響下でも日本以外の録音原盤市場は+2.5%の売上増を見込んでいます。デジタル化を遅らせて、パッケージにこだわってきたツケで、デジタルの増加分ではパッケージの落ち込みはカバーできず、日本のレコード会社は、コロナ禍のダメージは小さくありません。2020年は2~3割の売上減は避けられないでしょう。

 今回のTunecoreJapanの発表は、やはり日本のデジタル化も動いていることを示していますし、ここにしか光明はない。もう議論の余地ないですね。音楽の世界もデジタルファーストで行きましょう!!

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モチベーションあがります(^_-)