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職業作曲家の心得[5:次世代編]

1:英語に苦手意識を持たずに、情報収集に活用する

 m-floのTaku☆Takahashiさんに示唆されたのがきっかけです。グ ローバルに情報が駆け回るインターネットの時代には、作曲家にも情報収集能力が求められます。職業作曲家は、旬な存在であることが求めら れますから、世界の動きに敏感にして、感性やスキルを磨く必要があり ます。
 インターネットにおける公用語は英語です。米国人英国人だけでなく 世界中の人が英語を使って、情報のやりとりをしています。ネイティブ スピーカーを目指す必要はありませんが、ネットで英語の記事を読むの が億劫にならないことはマストです。日本の英語教育は、実践的ではな いという弱点はありますが、日本の英語の基礎力は、決して低くありま せん。無料の辞書がネットにあります。自分に興味のある分野は英語でも情報収集する習慣を持ちましょう。 私も決して英語堪が能ではありませんが、ziteというニュースキュレーションサービスを活用して、自分に興味のある音楽ITサービスのニュースなどを定期的にチェックしています。Flipboardというアプリもビジュアルが美しくて、iPadで見るのが楽しいです。英語のニュースを探すのは骨が折れますが、新しいサービスも活用すると、負担も少なく、情報収集ができます。
 新しい機材の取扱説明書が英語しかなくてもビビらない、そんな作曲家でいましょう。

2:ITサービスや新しいテクノロジーに関心を持つ

 良いメロディを書くことと、新しいサービスや技術に興味を持つことは直接的には関係ありません。
 でも、パソコンで DAWを用い、ソフトシンセやプラグインを活用して音楽を作っている作曲家が、デジタル技術に興味を持たないというのは変ですし、損ですね。
 社会の大きな変化は音楽ビジネスにも大きな影響を受けます。ユーザーが音楽に払うシチュエーションと音楽に触れる機会が、テクノロジーの発達で、変わり始めています。ITの世界では、ドッグイヤー(犬は人間に比べて1年間の体感が1/ 7になることから、以前の7倍の速度で時代が動いていることの表現)やマウスイヤー(ネズミだと18倍という意味だそうです)と言われているくらい、変化のスピードが速くなっています。ヒット曲がどのような経路で生まれるのか、そして、ユーザーがどういうシチュエーションでお金を払うのか、作曲家なら知っておきましょう。作品には直接反映させることではないかもしれませんが、音楽にまつわるユーザー行動の変化をイメージとして捉えておくことは有益です。

3:ソーシャルメディアのリテラシーを身に付ける 

 この10年の社会の最大の変化の1つは、TwitterやFacebookといったソーシャルメディアが、人々のコミュニケーションにおいて大きな存在感を持つようになったことです。ソーシャルメディアの特徴はいくつかありますが、従来のマスメディアと比較した最大の特徴は、情報が一方向に流れるのではなく、双方向であり、多対多の情報伝達になっていることです。誰でも情報発信ができる時代ですし、情報は人が拡散していくようになっています。

 作曲家が身に付けるべきソーシャルメディアリテラシーは、3つあります。
 まずは、ソーシャルメディアを的確に観察し、ユーザーの反応を知ることです。自分の作品が、メディアで流れた際のユーザーの生の発言を、 褒められていても、けなされていても、次の創作への刺激として活かしましょう。
 同時に、ネガティブな発言や、事実誤認やデマに流されないことも重要です。マスメディアと違って、権威による確認や訂正はありませんから、自らが情報の真偽を見極める能力を持たなければなりません。反射的に行動せずに、おかしいと思ったら、関連する言葉を検索してみましょう。 NaverまとめやTwilogなどのまとめサイトが役に立つ場合も多いで す。
 3つ目は自分で発信することですが、これはマストではありません。 能力や覚悟が無いままに、中途半端に行なうと、マイナスに働く場合もあります。一方で、作曲家自らが、効果的に情報発信できると、ユーザーの好感度が上がり、楽曲の宣伝にもプラスに働きます。まずは、自分の適性を見極めてみてください。
 ソーシャルメディアに対して敏感であることは、次世代型作曲家の必須能力です。

 『曲を作る時にプロが実際に行っていること』(2014年9月刊)から

 この章は、作曲家向けの2冊めの本『DAWプロ』で付け加えた内容です。それまでの4つは、普遍的な内容でしたが、この2つは、時代感を踏まえての「心構え」でした。
 時代は進んで、英語の翻訳については、アプリの精度が著しく上がりましたね。英語が必要だからって、毎日何時間も勉強する必要はありません。見当違いではない努力をするという意味で、英語よりは音楽を聴く時間や作曲自体の時間に充てるべきでしょう。翻訳ソフトの進化はすごいですから、読むことについては、「コピペ」を基本にすると良いと思います。
 3年くらい前になりますが、google翻訳の精度があがたったときにデジャブのような感覚がありました。何だろうこの感覚?と思い出したら、ワープロ専用機で文章を書くようになった時の記憶が蘇ってきました。若い世代の人は意味がわからないかもしれませんが、まだPCが高価だった頃にプリンターとワープロ機能のみの機械が売られていました。それを使って文章を書くようになって、やがて僕は漢字が手で書けなくなりました。でも読むことと、変換で正しい漢字を選ぶことは必要です。今、グーグル翻訳で英語を書く時の感覚は、その時ととても似ています。スペルなどが正確に書けなかったり、単語や熟語を忘れていることはフォローできますが、機械翻訳の間違いや不足部分を修正する能力は必要です。精度は上がっていくのでしょうが、いまだ日本語ワープロソフトが完璧でないように、修正、補足する能力は必要でしょう。ただ、読みたい英文記事を見つけたら、まずはガバっとコピーして、翻訳ソフトにペーストする時代になったと思います。コマンドCとコマンドVでこんなことができるなんて夢のようです。
 「山口ゼミ」の時に英語について語る喩えがもう一つあります。「英語を使わない音楽家は、飛行機に乗れない大リーガみたいなものだ」。日本のプロ野球だとギリギリ新幹線のみで日本中を行き来するのは可能でしょうが、広いアメリカでは不可能です。野球のスキルとは全く関係ありませんが、飛行機に乗らずに、大リーガーで選手活動をするのはほぼ不可能です。凄く似ているなと思います。
 SNSやテクノロジーへの理解も同様ですね。これからのプロの作曲家が持ち、活用するスキルと言えるでしょう。「次世代」と書きましたが、これは「旧世代」ではないという意味で、今、必要なことになっています。

7年続いている「山口ゼミ」は、まだ続いています。オンライン講座になって、遠方からの受講が楽になりました。興味のある方は、お問合せ下さい。


モチベーションあがります(^_-)