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やっとストリーミングの時代になった日本でクリアするべき音楽業界の課題

 ITメディアにこんな記事がありました。全くの第三者的な視点から、統計資料を元に分析するとこういうことになるのだな、と新鮮な気持ちで読みました。みなさんも是非、チェックしてみて下さい。

ようやくデジタル市場が本格化した日本の音楽界


 公式データに基づく分析ですから、当たり前ですが、適切です。日本の音楽市場も、やっっっっっっと、欧米に6〜7年遅れて、よーうーやーくデジタル化が本格化したようです。

 ただ、ジャーナリストが分析するのなら、おさえておいていただきたかったポイントが漏れているので、まとめたいと思います。

1)日本の月額が国際標準で安すぎる

 Spotifyがサービス開始時にレーベル側(ユニバーサルミュージック等)と合意した金額は、その時点のデフォルトだったiTunes Storeでの、その国のeアルバム一枚分を月額料金にすることでした。その基準だと日本は1800円ということになります。実際Spotifyは日本での事業をその金額感で準備していましたが、当時の日本のレコード会社の経営者達が何を考えたか、金額の値下げを希望して980円になった経緯があります。日本のデジタル音楽市場の収益性を上げるには、ここの是正が必須です。

 この件については、1年前のこの記事が完璧な解説です。エンターテックアクセラレーターで、元ユニバーサルミュージックジャパンのデジタル部門の責任者だった鈴木さんのnoteですので、是非、読んでみて下さい。

2)再生単価ではなく、ビジネス生態系を構造的に見る

 ストリーミングサービスについて語る時に、みなさん「1再生が何円?」という話が大好きなんですよね。端的に知りたくなる気持ちはわかるのですが、ビジネススキームの比較の方法としては不適切なことに気づいて下さい。CDで音楽を聞いていた時代に再生一回に付きの支払額の統計って見たことありましたか?比較材料にならないのです。
 音楽の未来のためにどういう生態系にしていくのが良いのかという議論が必要です。パッケージ(Physical)販売から単曲ダウンロード型を経て、サブスクリプション型ストリーミングサービスへの音楽ビジネスの生態系の幹が変化していきました。
 生態系の理解として、一番大切なのは、ユーザーが支払った金額が音楽家サイドにどのくらい分配されているか分配率です。ストリーミングサービスは、一般的に、ユーザーが支払った金額の6割以上が音楽家サイドに分配されるので、CD時代よりも還元率は高いです。
 比較については、拙著の抜粋であるこの記事をご覧下さい。

3)議論すべきはレーベル、アーティスト、事務所などの「分け方」

 では、ストリーミングサービスが幹になって、音楽生態系は完璧なのか?もちろんそうではありません。ストリーミングサービスは、一般的に、ユーザーが支払った金額からアーティスト側に支払われる還元率は高いです。ロングテール型のビジネスモデルなのでなので少額分配がたくさん生じるという別の課題感はあります。そして発売時期に売上がたつのではなく、聞かれた時に、つまり長く少しずつ収益があがってくるというモデルに変わっている訳です。
 ストリーミングが市場の大半になった欧米では、ビジネス生態系に関する議論が行われています。英国国会で、レーベルとアーティストの取り分がどんな現状で、その割合はフェアなのかという話し合いがされたことの紹介、解説の記事はこちらです。

 ジャーナリスト的な視点で分析するのなら、1再生の金額に過剰に注目せずに、英国議会でも指摘されていた、レーベルの適切な取り分は?という問題にもしっかり触れていただきたかったですね。

 CDの時代は音楽ビジネス生態系のプラットフォーム的な役割を担っていたレコード会社は、デジタル時代には、音楽サービスへのエージェント的な役割に変わっています。CD時代の契約を改める必要があるのですが、日本は以前のテンプレートが使われているという大きな課題があることは、以前もしてきしました。「録音専属実演家契約」を安易に結んではいけないことをデビュー前からアーティストにはしっておいて欲しいです。

 やっとやっっっと本格的にデジタルに移行した日本の音楽市場、これを促進して、デジタルでも世界二位の市場に育てて、グローバル市場との相互乗り入れをして活性化させていきましょう!


モチベーションあがります(^_-)