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ジャズの100年と僕の40年〜「100年のジャズを聴く」から今更知るJAZZの本来的スピリット

 もう三年前に出た書籍で全くタイムリーではない書評。かつ全く個人的な体験をまとめた内容です。でも素晴らしい本だったので書かずにいられませんでした。

 きっかけは自宅でたまたま観た「東京JAZZ」でした。オンラインでしかできずにYouTubeで過去の再編や自宅スタジオからの中継などで作られた簡素な番組でしたが、音楽評論家、柳樂光隆さんの言説が素晴らしく、腑に落ちました。停滞していると勝手に思っていたJAZZが、本来(ってなんとなく僕が思っている)のスピリットに則った方向で、面白く刺激的になってることを知りました。音楽プロデューサーの端くれとしては、不勉強極まりない話ですいません。J-POPのビジネスレイヤーがホームグラウンドだった僕ですが、以前は、佐山雅弘村上"ponta"秀一、村田陽一など、日本を代表するジャズミュージシャンのマネージメントもしていました。その後、J-Popのフィールドが中心になり、仕事としてのジャズメンとの接点は無くなりましたが、元々好きなジャンルなのでリスナーとして普通に聴いてはいたつもりでした。Robert Grasperが、Edika Badhuをフィーチャリングした「Afro Blue」は聴いていましたし、ネオソウルに今日的な匂いは感じていました。グラミー取ってよかったねと思いながら、それ以上、特に掘り下げでチェックすることを怠ってました。
 そもそも、1917年が最初のJAZZのレコードが発売されて、2017年が「JAZZ100年」であることも見落としていました。この本の内容があまり素晴らしかったので、10年以上ぶりに、ジャズについて真剣に考え、意識して聴いてみました。それにしても、音楽を意識的に聴くのも楽な素晴らしい時代になっていますね。僕が高校時代にバイトしていたジャズ喫茶Familyには、レコードが5000枚以上ありました。お客様からのリクエストが無い時は好きなレコードが掛けられるのと、人生経験豊富なおばあちゃんママの話を聞けるのが楽しみで、時給400円でウエイターのアルバイトをしていました。そんな経験から考えると、Spotifyにいけば、柳楽さんがつくったプレイリストがテーマ別にまとまっていて、気になるミュージシャンを見つけたら過去作や、関連する作品を聴いていくことができるなんて夢のような幸せです。

 さて、100年の歴史を超えたJAZZが面白くなっていることを本書は解き明かしています。尋常じゃない情報量を持った方々の鼎談なので、固有名詞を追うだけで多くの方は満腹になってしまうでしょう。僕は敢えて、つまみ食い的に気になった部分をピックアップします。

 JAZZの定義は難しいです。僕も以前ニューオリンズに行った時は、音楽を仕事にした者の「聖地巡礼」だと思い、ジャズ発祥と言われているコンガスクエアには行きました。何の変哲もない、ちょっと治安の悪い公園でしたけれどww

ヨーロパ由来のクラシック音楽とアフリカから連れてこられあら奴隷がもっていたアフリカ個人由来の音楽とニューオリンズという港街でカリブ海系の移民のラテン的な要素、今はそこにヒッピホップやアメリカの白人のアパラチアのフォーク的な要素が入ってくる。だから、「ジャズっぽくないけどジャズ呼ばれれているものがたくさんあります」という説明しかできない

 というのはさすが、的を得た表現です。音楽家はどのジャンルでも、誰かの作った音楽に感銘を受けて人生を踏み外して選んでいる職業であることがほとんどですが、過去の系譜を背負うのがジャズメンの特徴です、本書では、「過去の音楽が持ちネタになり続けているのがジャズの特殊性」と表現されています。日本で、ビ・バップを中心とした、いわゆるジャズっぽい感じの時代のスタイルを「伝統芸能」的になぞるタイプのプロジャズミュージシャンが多かったのもそういうことなのしょう。僕が彼らと接点があったのは、もう20年近く経ちましたがその頃は、「卓越した演奏家がいる伝統芸能のようなメインストリームのジャズ」と「サンプリング文化を活用したDJセンで掘り下げるクラブジャス」が、人的交流でも作品でも溶け合わないことを不思議かつ残念に思っていました。ジャズの一般的なファン層は、教養と年収が比較的高く、ノスタルジーを持ちつつ聴いているという認識で止まったままでいした。

レアグルーブで発掘されたレコードがヒップホップやアシッドジャズのアーティストによってサンプリングされた80年代から90年代に「観賞用」のジャズを「踊るための音楽をつくるためのサンプリングの素材」に意味が書き換えられた。ミュージシャンが紡いできた演奏の系譜としてのジャズ史とヒップホップが再編したDJ経由のジャズ史の2つを共存させているミュージシャンの登場がいま、ジャズを面白くしているとも言えるだろう。

 という流れを見落としていた訳です。もったいなかった。大雑把に言うと、「Robert Grasper以降」が、非常に刺激的でジューシーです。若手の日本人ミュージシャンも出てきているようなので、これからdigっていきたいなと思います。デジタルの最先端と昔からのジャズシーンを知る僕の知見が役に立てることもありません。応援できることがあれば関わっていきたいです。少なくとも音楽シーンをチェックするという楽しみが一つ増えました。100年を超えたジャズを追いかけていこうと思います。ニューヨークやニューオリンズもコロナ禍が落ち着いたら、まだ行きたいな。

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