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音楽について語る時に僕たちが語ること〜初めてのCDと無人島レコード

 noteでお題に合わせて書くのは初めてです。編集部が出したお題が音楽好きに向いていたのが嬉しくて、何か書いておこうと思いました。音楽の思い出はとても個人的なもので、だからこそ貴重です。


 僕が作曲家育成の「山口ゼミ」の最終回の講座で必ず話すことにしてることがあります。プロ作曲家の心構えの「処世術篇」として、「謙虚な音楽好きが好かれて得をするのが音楽業界だから、お世辞とか処世術は要らないよ」と、その証拠に、音楽業界の良いところは音楽好きがとても多いこと。他の業界は知らないけれど、自分たちの商材に関する話を飲みながら朝まで語りあう業界はどれだけあるのか?と説明します。音楽の話で飲み始めると、朝まで語り合ってしまう人が多いのが音楽業界です。そして、併せて伝えます。音楽の仕事をしている人と知り合いになったら、訊かれることはこの2つだよ、と。


1)はじめて買ったCDは何?                    2)最近なにか面白いアーティスト(楽曲)ある?

 そこで宿題として、今月中にこの2つを決めるように伝えます。1は、もちろん本当に買ったCDを思い出しても良いけれど、質問者の意図は「この人の音楽的バックボーンはどんなものなのだろう?」ということなので、返答は「最初に買ったか覚えてないですけど、高校時代は**ばっかり聴いてました。影響されてそのモデルのギター買ってコピーしました」みたいなのが模範解答。もちろん嘘はだめだけれど、自分の作編曲家としての音楽的バックボーンが何なのかを自分の10代を思い出しながら認識するという作業だと伝えます。自己演出の第一歩ですね。2はクリエイターとしての感度が問われているので、まだ定番的にエスタブリッシュな評価をされる前のアーティストを3ヶ月おきくらいにアップデートしておきなさいと指導します。飲み屋で業界関係者と知り合って、1の回答で趣味が合い、2が知らないアーティストで聴いてみたらイケていたら、仕事につながる可能性はかなりの確率であるものです。


 業界関係者だけでなく、音楽が大切な人にとって、「はじめて買ったCD」は気になる問いかけです。

 ちなみに僕の場合は、中学生の頃に買った甲斐バンドで、まだレコードでした。僕がファンだったのではなく(好きではありましたが)NHKFM「サウンドストリート」で存在を知った母が、甲斐よしひろさんの熱い語り口にファンになったからでした。文学少女だった母は、いくつになっても熱量の高いロマンチストに弱かったようです(笑)自分で買うのは恥ずかしいからとお遣いを渡され、好きな洋楽のレコードを一緒に買わせてもらえたので、喜んで地元のレコード店に行ったことを覚えています。当時は新しい音楽の情報を得るのは大変でしたから、レコード店のオーナーに気にいられていろんなレコードを試聴できることや、知らないアーティストをリコメンドしてもらえるのは貴重な機会でした。元シンガーがオーナーだった西武新宿線上石神井駅前のMelodyというお店に中学時代は入り浸っていました。もう閉店して随分経ちますね。

 同じような「お題」に、「無人島に行くことになって、一枚だけレコードが持っていけるとしたらどのアルバムを選ぶ?」というのがあります。これも音楽好きが好きなネタですね。「無人島レコード」というムックも出版されているほどです。音楽関係者と飲む機会が多い僕は、無人島レコードの答えを用意済みです。「Rickie Lee Jones」の1stアルバム(邦題「浪漫」)です。今は、お酒も飲んでないので特に語りませんが(笑)、今でも時折聴きます。


 デジタルで音楽を聴くようになったことをネガティブに語る音楽マニアも時々見かけますが、僕は逆だと思っています。圧倒的に便利で、新しい音楽がチェックできて、すぐ他人にもシェアできる音楽ストリーミングサービスは、まさに音楽マニアのためのサービスですし、音楽ファンを増やすためのサービスでもあります。ごく一例ですが、Spotifyのカスタマイズ型のプレイリスト「Release Radar」は、仕事と趣味と半々で使う僕は重宝しています。知っておくべきアーティストと好きなアーティストの新譜が自然にチェックできます。
 ストリーミングサービスの音質や品揃えで不満のあるマニアな人は、並行して、自分用のレコードをコレクションして、アナログプレイヤーを買えばよいのです。特別な体験として音楽を聴くのは至上の楽しみです。耳に柔らかいレコードの音はワインとの相性もよいですね(独断w)自宅に物を増やさない主義で生活している僕ですが、最近オーディオセットを改めて購入する誘惑にかられてまだ何とか堪えています。
 デジタルサービスが無い頃はオフィスの会議室の棚は一面CDでした。引っ越しの時に、ごく一部を残して、売却処分して、今や自分が制作に関わって捨てられなかったCD(の一部)だけが自宅の倉庫に眠っています。

 大切なのは音楽を聴き続けることと、音楽体験を自分の中で大切なものとして抱えておくことだと思います。そして、その体験をUPDATEし続けることですね。noteのようなメディアで #はじめて買ったCD というテーマでどんな投稿がでてくるのか読むのを楽しみにしています。

「プロ作曲家の心得」が気になった人は、この本の最終章にまとめています。


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