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大雪小径 ー 夏の花 ー

7月の大雪山は花の季節。今回は、7月中旬から7月下旬によく会える高山の花たちを紹介します。


高山植物に会いたくて登った大雪山。これまでに大雪山で出会った花は80種類を超えます。『大雪小径』の第3章としては、7月中旬から7月下旬に小径(=こみち)でよく出会える高山植物の花々を私の目線で紹介します。

はじめに

7月は、1年の中で一番花に会える時期です。この時期に撮影した花を数えたら20種ですが、雪どけした場所では6月の花、陽当たりがいい場所では8月の花に会うことができます。
大雪山が初めての友人と登るときは、この時期を選んでいます。
今回も花を色別に分類して、一部の花をピックアップして紹介します。

01 白花

この時期に会える白色系の花は、次の7種です。

アオノツガザクラ、イワヒゲ、ウメバチソウ、エゾタカネツメクサ
エゾノマルバシモツケ、オオカサモチ、ハクサンボウフウ

7月に会える白色系の花

ここでは、3種を紹介します。

イワヒゲ

ひげのように伸びている葉から名がついたようですが、可憐な花とのギャップからか名前を覚えることが苦手な私でもすぐに名前が出てきます。

悪天候時には雨風が強いと思われる過酷な礫地や頂上付近でたくさんの花を咲かせているのが印象的です。細い花柄に下向き加減の純白の花をぶら下げています。

忠別岳の頂上の花園(2020年7月20日)

純白の花に朝陽が注ぐと灯りのようにふんわりと輝きます。この時間の花たちはいつまででも見ていられます。

朝露を帯びた草原に細い花柄には大きめの花をぶら下げる(2019年7月21日)

エゾノタカネツメクサ

名前の通り、本州で見かけるツメクサのいとこ(亜種)のようです。大雪山では、よく見かけますが北海道でも限られた場所でしか会えないようです。岩礫地に一斉に咲く白い花は目を引きます。

岩礫の群落(2019年7月20日)

この時期は、たくさんの高山植物が広尾根を彩ります。エゾノタカネツメクサの群落の先の黄色の花はキバナシオガマです。

チョウノスケソウと共に(2021年7月10日)

エゾノマルバシモツケ

銀泉台の登山道を少し上った第一花園や白雲岳の頂上直下あたりでよく見かけます。
7月上旬は、ふくらんだ星模様のつぼみがとっても印象的です。花もきれいですが、私はこのふくらみきったつぼみの状態が一番好きです。

ぷっくらとふくらんだ星模様のつぼみ(2019年7月7日)

手まりような花の咲き方は、イソツツジに似ていますが、おしべが花からたくさん伸びているので違いはわかると思います。

朝露に輝く(2021年7月25日)

02 黄花

黄色系の花としては、次の2種に会うことができます。

キバナシオガマチシマノキンバイソウ

7月に会える黄色系の花

キバナシオガマ

7月中旬の尾根を彩る花の1つですが、駒草平では7月上旬から咲いています。葉も特徴的で花と一緒に楽しめます。大雪山ではポピュラーですが、日本ではここだけでしか会えないようです。

駒草平に咲くキバナシオガマ(2021年7月10日)

背丈は10~15cmくらいで砂礫に咲いているため花と目線を会わせるのはちょっと大変です。鳥が羽を広げたような花はピントの合わせどころに悩みます。

アップで撮影(2019年7月20日)

チシマノキンバイソウ

高山植物の中では比較的丈が高く、大きな花です。空に向かって開いた花は、陽光を一杯に浴びて輝いています。

朝露が輝く草原に咲く(2019年7月21日)

白雲避難小屋の周辺が一番の群生地になっており、他の場所では見かけないように思います。

白雲避難小屋のそばに広がる群落(2020年7月20日)

03 赤花

赤色系の花としては、次の3種に会うことができます。

コマクサエゾコザクラエゾツツジ

7月に会える赤色系の花

コマクサは有名ですが、エゾコザクラとエゾツツジも特徴的なお花なのですべて紹介します。

コマクサ

本州の高山でも会うことができますが、高山植物の女王といわれるだけに大雪山でも目を引きます。他の植物と混じり合うことを嫌うのか尾根の岩礫地に転々と自生しています。

うつくしい花は、人だけでなく、昆虫たちも引きよせます。ギンザンマシコは花が好物のようでパクパク食べている所を見たことがあります。

引きよせられるマルハナバチ(2020年7月18日)

コマクサは、花を咲かせるまでに数年かかるといわれています。この株は、条件がいいのかたわわに花をつけています。

たわわに咲く(2021年7月10日)

エゾコザクラ

残雪が溶けた大地に最初に花を咲かせています。早いところでは6月下旬から見られますが、7月中旬くらいが多くの場所で会えるように思います。
日本では北海道だけで会えるようです。

雪どけした場所に咲く(2020年7月18日)

本州のハクサンコザクに似ていますが、ハート型の花びらが特徴です。

朝露に帯びた花が朝陽に輝く(2021年7月25日)

エゾコザクラのピンクの群落から少し離れたところに突然変異なのか白い花が咲いていました。あたりを見渡しても白い花はこの2輪だけ。初めて出会った純白の花びら。来年もこの場所に咲くのでしょうか。

エゾコザクラの白花(2022年8月5日)

エゾツツジ

街路樹のツツジと花の形は似ていますが、樹形は全く異なり、地面から数センチのところに咲いています。

朝陽に輝く(2021年7月18日)

尾根の岩礫地に転々としていますが、一斉に咲いてあっというまに散るため、満開のタイミングで会えたことは数度しかありません。

朝陽が注ぎ花びらが輝く(2021年7月18日)

04 青紫花

この時期は青色系の花が多く、6種に会うことができます。

イワブクロ、エゾヒメクワガタ、エゾフウロ、
ミヤマアズマギク、ミヤマリンドウリシリリンドウ

7月に会える青紫色系の花

イワブクロ

地面に近いところで、大きな花を一斉に咲かせるイワブクロ。岩礫地の多くの場所で会うことができます。
北海岳頂上からお鉢に落ち込む斜面の群落が満開を迎えていました。

北海岳頂上の群落(2020年7月27日)

一本の花茎に大きな花をたくさん咲かせます。

イワブクロの花の近影(2019年7月21日)

ミヤマリンドウ

尾根の草地で他の植物と混じってひっそりと咲いているためかあまり見かけないように思います。アゲハチョウが草を分け入って蜜を吸っている姿を何度か見かけました。

一斉に花を咲かせる(2018年7月28日)

リシリリンドウ

はじめはミヤマリンドウと思っていましたが、花の形が違うことから調べてみるとリシリリンドウでした。リシリリンドウはミヤマリンドウの変種ということです。

北海道の限られた場所にしか咲いていないということですが、大雪山でもあまり見かけないように思います。岩礫地で他の植物と共生しているようです。

尾根の岩礫地に咲く(2018年7月28日)

05 桃花

この時期の桃色系の花としては、リンネソウがありますが出会うのは難しいかもしれません。

リンネソウ

可細い花茎から下向きの花を咲かせるリンネソウ。花が咲いていなければまず気づくことはないと思います。

ハイマツの木陰でひっそりと咲く(2019年7月20日)

銀泉台や緑岳登山口からの登山では1度しか会ったことがありませんが、トムラウシ山までの縦走路では何度か見かけました。

忠別岳の樹林帯の木陰で(2020年7月20日)

06 その他

色分けが難しかった1種を紹介します。

ミヤマクロスゲ

似た花(穂)がいくつかあり、確証はありませんがおそらくミヤマクロスゲだと思います。岩礫地で他の植物と共生して咲いています。

白雲避難小屋の近くの草原に咲く(2019年7月21日)

≪編集後記≫

7月6日から1泊で今シーズン初めての大雪山に登ってきました。初日は暴風で午後から大雨、翌日は視界20mほどの霧雨とコンディションは良くありませんでしたがたくさんの花に癒やされました。

白雲避難小屋のインスタグラムに今年の雪どけは早いと投稿されていましたがその通りで、開花は例年よりも10日以上早まっているように感じました。

とはいえ、これから代わる代わるたくさんの花たちが咲く季節です。今回紹介した花たちには会えると思いますのでぜひ登ってみてください。

次回は8月によく会える花を紹介したいと思っています。


前々編と前編の記事はこちらになります。


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