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大雪小径 ー 花・はな・hana ー

7月の大雪山は花の季節。今回は、6月下旬から7月上旬に会える高山の花たちを紹介します。


高山植物に会いたくて登った大雪山。これまでに大雪山で出会った花は80種類を超えます。『大雪小径』の第2章としては、6月下旬から7月上旬の小径(=こみち)で出会った高山植物の花々を私の目線で紹介します。

はじめに

6月下旬から7月上旬は、標高ごとにいろんな花に会える季節です。この時期に撮影した花を数えたら28種。とくに銀泉台から尾根までや緑岳から小泉岳、白雲分岐から北海岳までの小径でたくさんの花が楽しめます。
今回は花を色別に分類して、一部の花をピックアップして紹介します。

01 白花

この時期に会えた白色系の花は、次の15種でした。

イソツツジ、ウラジロナナカマド、エゾイチゲ、エゾタカネツメクサ、
エゾノハクサンイチゲ、キバナシャクナゲ、ゴゼンタチバナ、
コミヤマカタバミ、コメバツガザクラ、サンカヨウ、ジムカデ、
チョウノスケソウ、チングルマ、ミヤマタネツケバナ

6月下旬から7月上旬に会える白色系の花

色としてはまとめられますが、かたちやサイズ、咲いている場所はそれぞれ特徴があります。どの花も大好きですが、3種を紹介します。

イソツツジ

銀泉台から少し登った紅葉のビューポイントの直下の斜面に群落があります。一斉に咲くためタイミングが良いと白に覆われた斜面に出会えます。その甘い香りに誘われていろんな虫たちが行き交います。

花の斜面の先の岩場には、エゾナキウサギやエゾシマリス、エゾシカが現れることがあります。

斜面覆うイソツツジの群落(2022年7月3日)

駒草平手前の登山道脇にも規模は小さいですが群落があります。視線に近いところに花が咲いており、とっても撮りやすいです。マクロレンズを近づけると純白の小さな花が複数集まり、1つの球形状に一斉に咲く姿がみてとれます。

雨の登山はテンションが下がりますが、お花たちは生き生きしています。

開いたばかりの花を水滴が飾る(2019年7月1日)

エゾノハクサンイチゲ

名前の通り、本州で見かけるハクサンイチゲのいとこ(亜種)のようです。葉のかたちなど細かな違いはあるようですが、エゾノハクサンイチゲのほうが少し大きい印象です。

登山口から頂上までで会うことはほとんどなく、尾根の谷間の草地などで会うことが多いです。高山植物の中では比較的大きく、草原から伸びて空に向かって花を開いています。

草原から伸びて青空に向かって花を開く(2021年6月26日)

6月下旬から咲き始め、雪解けが遅い場所では8月にも会うことができます。青空が似合うお花なので斜面に咲いている花を見つけて、見上げて撮るのがお気に入りです。

雪解けした場所で競うように花開く(2019年8月2日)

チョウノスケソウ

緑岳から小泉岳で会うことができるチョウノスケソウ。咲いているところが限られていることとチングルマに似ていることから大雪山に登りはじめて数年はスルーしていました。

ただ、特徴的な葉はずっと気になって、その花がチョウノスケソウだとわかった翌年は2週連続で通い花に会うことができました。

7月上旬が花期ですが、場所によっては7月中旬くらいまで咲いていました。花の後にはチングルマと同じようにススキのような果穂になります。

岩場の群落から陽光をいっぱいに浴びる(2020年7月18日)

八ヶ岳や北アルプスでも葉だけは見たことがあり、名前からしても日本の固有種だと思っていましたが変種のようです。本家は北半球の極地に自生しており、星野道夫さんや佐藤大史さんのアラスカの写真集にも登場しています。

仲良く花開くチョウノスケソウ(2021年7月10日)

02 黄花

黄色系の花としては、次の7種に会うことができます。

ウコンウツギ、エゾタカネスミレ、エゾノリュウキンカ、キバナシオガマ、ダイセツヒナオトギリ、チシマキンレイカ、ホソバイワベンケイ

6月下旬から7月上旬に会える黄色系の花

7種のうち、荒涼とした尾根に咲くエゾノタカネスミレと、登山口に咲くダイセツヒナオトギリの2種を紹介します。

エゾタカネスミレ

エゾノタカネスミレは、風の通り道でもある稜線の礫地に自生しています。スミレの花は種類が多く、いろんなところで会うことができますが、砂漠にも似た過酷な礫地に咲くのはエゾタカネスミレだけだと思います。

よく見かけるのは荒井岳から北海岳に向かう途中の稜線です。花期が短いのか、風に飛ばされるのかわかりませんが、数度しか出会ったことはありません。

ただ1度だけ、なだらかな斜面の奥まで花で埋め尽くされている光景に出会ったことがあります。ガスに覆われた単調な尾根をひたすら歩いているときに突如現れたたたくさんの小さな花たちに心を癒やされたことを覚えています。

尾根をひたすら歩いているときに現れた光景(2021年7月10日)

ダイセツヒナオトギリ

緑岳登山口の地熱のある湿地に自生する固有種であり、レッドリストに記載されています。恐らく世界中でここだけにしか自生していないと思われます。

こんな貴重な花に登山口からすぐのところで会うことができます。とっても小さく、存在を知るまでは素通りしていました。

登山道のそばの草原に咲く(2023年7月2日)

03 赤花

赤色系の花として、尾根の一部ではエゾコザクラが咲いていますが、この時期に会うことが多いエゾノツガザクラを紹介します。

エゾノツガザクラ

6月下旬から7月上旬に会える赤色系の花

エゾノツガザクラ

赤紅色の壺状の特徴的な花を数個同時に咲かせます。白色のアオノツガザクラの花とは色違いのように思えますが、細長い壺状をしています。

夕陽に輝く(2022年7月1日)

ただ、最近は両者の混雑種が多いように思います。エゾノツガザクラもアオノツガザクラも遙か昔からこの地に根付いていたと思いますが、なぜ今になって混雑しているのか気になります。

アオノツガザクラとの混雑種(2020年7月19日)

エゾノツガザクラの小さな森の中でエゾシマリスが夢中になって花の蜜をなめていました。草の種や木の実がまだ実らない夏場の貴重な食料なのでしょうね。

食べ頃の花を探しては食事するエゾシマリス(2019年8月3日)

04 紫花

紫色系の花としては、次の3種に会うことができます。

エンレイソウ、ショウジョウバカマ、チシマヒョウタンボク

6月下旬から7月上旬に会える紫色系の花

いずれも登山口に近いところで会うことができます。エンレイソウとショウジョウバカマは雪どけしたばかりの木陰に咲いています。

エンレイソウ

雪どけ直後に芽吹き、花開くため本州では4月くらいに会えますが、雪どけが遅い北海道では6月下旬に咲いています。樹林帯の木陰にひっそりと咲いているため、見かける機会は少ないです。

花を咲かせるまでに8年かかると知ってからは、会うたびにうれしくなります。

木陰にひっそりと花開く(2022年7月3日)

05 桃花

桃色系の花としては、次の2種に会うことができます。

コケモモヒメクロマメノキ

6月下旬から7月上旬に会える桃色系の花

コケモモ

銀泉台から登って第二花園や駒草平を越えたところのハイマツの根本あたりで会えます。ヒメクロマメノキも同じ場所に群生しており、花の色もかたちも似ているため、はじめはどちらも同じ花だと思っていました。

ハイマツの根本に咲く(2022年7月3日)

両者の違いは葉をみれば一目瞭然です。花もよく見ると違いはありますが、久しぶりにみるとどちらかわからなくなってしまいます。

水滴をまとった花(2022年7月3日)

8月半ばには、果実がたくさん実っています。9月にはおいしく熟し、動物たちの貴重な食料になるのでしょう。

赤く実った果実(2017年8月18日)

ヒメクロマメノキ

薄緑に赤い縁取りした若葉に守られるかのようにひっそりと咲いています。エゾノツガザクラもそうですが、壺型の花が比較的多いのは過酷な環境に耐える工夫なのでしょうか。

新葉に守られるように花開く(2019年7月1日)

06 緑花

緑色系の花としては、次の1種に会うことができます。

レブンサイコ

6月下旬から7月上旬に会える緑色系の花

黄色系に分類されるようですが、見たままの印象で緑色系に分類しました。

レブンサイコ

水滴に惹かれて撮ったときには、名前は知りませんでした。ネットで探しますが、花の特徴を言葉にできず、探り当てるのに時間がかかったことを覚えています。

緑岳から小泉岳に向かう途中に咲いていましたが、群落を作るわけでもなく礫地にポツンと咲いているため、水滴に惹かれなければ通り過ぎていたかもしれないです。
日本では北海道でしか会えないようです。

開花前のレブンサイコ(2019年6月22日)

≪編集後記≫

6月下旬から7月上旬に咲く花を撮り溜めた写真の中から探して思ったのは、結構雨の日や雨上がりの写真が多いということ。水滴がついた花に引き寄せられる習性があることもありますが、この時期は比較的雨が多いのかもしれません。もしかしたら梅雨がないといわれる北海道も温暖化の影響で梅雨の影響を受けているのかもしれないですね。

温暖化といえば、2024年シーズンはこれまでになく雪が残っていないと白雲避難小屋のインスタグラムに投稿されていました。毎年、山開き直後の大雪山を楽しみにしていましたが、今年はクマスプレーレンタルの立ち上げで行くことができませんでしたが、来週行けそうなのでこの目で確認してこようと思っています。今回紹介した花たちに会うのも楽しみです。

次回は7月中ごろから会える花を紹介したいと思っています。


前編の記事はこちらになります。
6月中旬に会える高山植物を紹介しています。



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