【観劇】紙 by MUNA-POCKET COFFEEHOUSE
ずっと消化不良でなかなか感想が書けなかった。いや、消化してしまうのがもったいなくて、ずっと反芻している気もする。とにかく、なんて食べ応えのある作品なのだろう。あれは何だったのか、何を体験したのか、それをずっと考えている。考えさせられている。
他のお客さんたちもそうだったみたい。SNSを見てたら、静岡演劇人の皆がずーっと「紙」の話をしてる。よくわかんないけど凄かった!面白かった!って人も沢山いるし、作品を観る前と観た後で世界が変わってしまっている人も沢山いる。ちゃんと芸術が仕事してる、すごい作品を観てしまったんだな、私たちは。
作品の中にもあったけれど、劇作家(芸術家)が認知させることで世界が変化していくのは、まさにこれじゃない。ねぇ。
にしても劇作家というやつは、本当にろくでもない。観客に戦闘機を作らせて舞台に投げ込ませるなんて本当にとんでもない。各々が作った戦闘機はうまく飛ばず、舞台にたどり着く前に墜落し他の観客に当たったりする。その度に会場がキャッキャと笑い声でざわめいて、けれど観客はそのまま舞台の戦場を眺め続ける。
そうね、私たちには関係ないもの。私たちはいつもそうやってメディアを眺めている。無関係では決してないはずなのに。
ラストのシーンで、ストーリーテラーが感情を露わにしたのが分からなかったのだけれど、今、分かった気がした。「せっかくなので飛ばしてみましょう」と言って物語を進めたのは貴方では?と思っていたのだけれど、彼は追憶しているだけだったな。彼は不幸を悲観し嘆いていたのではなく、怒っていたのだ。私たちが戦争に手を貸したのが許せなかったのだ。
でもさ、紙飛行機、楽しいんだよ。作るの楽しいし、作ったら飛ばしたくなるんだよ。だけどそれはきっと戦闘機も同じで。そんな人間の業を体験させるなんて、劇作家ってのは本当にとんでもないよ。
ムナポケの作品は好きだ。役者さんたちが全員無駄なくちゃんとパズルのピースになれるところも素晴らしい。演出家が役者を信じているのも良い。アドリブや、アドリブのような演技が、今回とても見所になった気がする。
けれど、2回目の観劇で、好きな台詞がアドリブで食われてしまったシーンがあり、とても残念だった。
その場の“ウケ”だけを狙った作品を蝕むようなアドリブは、私は大っ嫌いだ。台本読んだ?演出理解した?当の本人は会場を沸かしたつもりなのかもしれないけれど、作品の観劇客を横取りしていることをちゃんと理解してほしい。いや、横取りどころではないな、もうテロだよ。見終わった観客の中には、それがその人にとってのMVPになってしまったりすることもあるのだから。
アドリブが本当に上手な役者さんも沢山いた分、それは本当に残念だった。
いや上手なアドリブって本当に難しいんだよ。アドリブ出来る人って、度胸がある人とか、面白いことを思いつく人とか、ただの目立ちたがり屋とか、そういうのじゃないんだよ。会場にいるお客さんの気持ちを読んで、それを意図的に動かすのだから、すごい技術なのよ。
上手かったんだよなぁ。ABどちらの課長?係長?妻?も。本当に勉強になるよ。おすすめ。
(てか音響さん照明さんもアドリブだったんですって?!激やばぁ!!)
ムナポケ観劇後は、やっぱり演劇好きだなぁって再確認させてもらえるので、大変幸せです。ようやく感想をひとつ形に出来たので、他の人の感想レポも読める気がするな。ほら、他の人の感想みちゃうと自分の意見とゴッチャにならない?笑
とにかく、観劇後も長く楽しめるこの作品、やはり最高ですね。