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バク(獏)の夢とボク(鈴木)の嘘

玖老勢(門谷地区の近く)でバクの化石が発見されていたとは、、、

獏は夢を食べる、と昔からよく聞きます。いつから、夢を食べる、と言われるようになったのか。それを知るには、膨大な量の古い読み物を当たって事実を積み上げていく他ありませんが、それが動物園で見かけるバク(tapir)と直接に関係あるのかどうかもまた、「夢」の中、なのかもしれません。悪夢を食べてくれる、という魔除けの意味合いもあるようで、それこそ人々の「夢」(希望)の話、なのかもしれません。
「夢」の意味はそれぞれ違いますが。
いずれにしても、バク(獏)をめぐる夢の話は、当時の人からすれば必然的に生まれた物語だっただろうし、時代を超えてとても面白く、そこから生まれる造形(イメージ)もまた、とても興味深いものです。
それは、「夢」だとしても、決して「嘘」などではありません。

一方のボク(鈴木)は、と言えば、、
いつも何か「嘘」をついてるようでもあります、、、

門谷小学校での展覧会で会場にいると、ご来場いただいた方とその古い木造校舎や緑に囲まれた美しい環境の話をすることがあります。
お互いに、「いいとこですねー」となるのがお決まりですが、いつもどこか美しさの典型のような、汎用性のあるイメージを共有することに終止してしまっているな、と。
もちろん、例えばそこで、
「いやいや、そんなの本当のこの土地の魅力ではないですよ。雨の日には雨の日の素敵さがあって、冬は冬で。だいたい、ここには学校だった頃のいろんな人の思い出が詰まっていて、今でも地域の方々の努力によってこの趣は維持されていて。そうそう、この辺り大昔は海だったみたいですよ。あと、バクの化石も見つかっているらしいです。それからそれから、あの大きな窓ありますよね。その先のとこに、こないだカモシカが寝てたんですよー。天然記念物ですよ、天然記念物。そういえば、2018年の展覧会最終日には、台風直撃で夜中停電するし雨漏りするわで大変でしたよ。あの時は確か朝起きたら電車もバスも止まってて、まさかの孤立状態。山間部の脅威ですね。あ、四年前は朝ドラのロケ地にもなってました。あと、そうそう、この門谷小学校から、、」
何てなれば、相当に面倒なやつですが、なかなかにものごとのあれこれを簡潔な言葉で伝えるのは難しいものです。
仮にボクの中に、木造校舎のノスタルジアも新緑の景色も超えた豊かなイメージがあったとしても、それは共有し難いものなのかもしれません。
だから、分かりやすいイメージを使って事を済ませてしまう。
とても小さな「嘘」ではありますが。

「嘘」もまた「夢」のようにいくつかの意味を含んでいて、実生活の中には(それぞれの個々人の中にも)、いろいろなタイプの「嘘」があるのではないでしょうか。
まずは既存のイメージの引用よりも、なるべく自分の見たもの触れたものを制作の中で大事にしていきたい、と。ボクは考えます。そこから自分なりの景色を提示できたら、と。

「あと、そうそう、この門谷小学校から鳳来寺山に向かって表参道を進むと、左手に鳳来寺山自然科学博物館があります。博物館って事実の積み重ねがあるから、この土地をより知るきっかけにもなっておすすめですよ。アートの後は、博物館なんてどうでしょう。」

災害や水について考えていると、博物館もまた自分の制作のヒントになるのかな、と。

鈴木

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