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選挙の既得権益打破につながるか?!「アダムス方式」の導入で小選挙区の定数是正へ

国勢調査の速報値をもとに、総務省が新たな議席配分方法「アダムス方式」を適用した小選挙区の試算を発表した。是正すると全体で10増10減。東京が25から30になるなど、人口が増加する都県で選挙区が増え、宮城、福島、和歌山、長崎など10県で減少する。

近日中に「衆院議員選挙区画定審議会」が新たな定数配分に基づいて区割り案の検討を始め、1年以内に政府に勧告する方針とのこと。もちろん、今秋に任期満了を迎える次期衆院議員総選挙には間に合わないため、次々回の衆院選から適用される予定だ(次の選挙後に裁判があったら、違憲状態の判決が続出するのではと心配している…)。

いよいよ、スタートする「アダムス方式」。第6代アメリカ大統領アダムスが考案したとされる議席の配分方法で、定数是正の切り札といわれる。2016年「衆院選挙制度改革関連法」の成立によって導入が決まり、当時の安倍総理が2020年の国勢調査の結果を基に採用すると明言していた。

「アダムス方式」の仕組みについては、これまでも多くの記事などで解説されているが、私からも簡単に紹介させて頂きたい(結構、分かりづらいです)。まず、ある基準値を算出し、それを除数にして全都道府県ごとの人口で割り算していく。そして、出た数字の小数点以下を切り上げ、例えば1.99なら定数は2、2.01なら定数は3と割り当てていく(0.01違うだけで定数が違ってくるのだから凄い…)。そして、47都道府県の合計がちょうど289になれば「アダムス方式」が成立する。

http://www.suguru.jp/seminar/shakai/koumin/adams_shuugi.html
※このサイトの解説がとても分かりやすい!

正確かつ公平であり、任期満了4年の衆議院において、途中で解散があることを考慮しても、5年に一度の国勢調査を基に定数を見直していけば、一票の格差の是正に十分対応が可能だと思う。

以前、記事にも書いたように、小選挙区の議員は例えるなら全国各地にいる289人の殿様のようなものである。10増10減は、10人の殿様が自分の城を失い、新たに主人なき10の城が建設されるわけで、改めて定数の是正というのは国会議員にとって大きな問題である。

結論として、私は一票の格差是正を進めることで「選挙の既得権益を無くしたい」との思いが強くある。昔から選挙は三バン『ジバン(地盤)、カンバン(看板)、カバン(鞄)』が必要といわれた。つまり、支援者(後援会)、知名度、金の3つだ。志高く有能でも、簡単にこの壁を破ることはできない。それが、選挙の難しさでもある。結果的に一部の特権を持つ人々にだけ政治家の地位が継承されてきた。俗にいう世襲がこの代表例だ(ちなみに、私は世襲を批判していない。本人に職業選択の自由もあるし、引き継いだ人間が仕事をすれば、有権者にとって喜ばしいはずだ。結果として、本当に地域が良くなってきたのかが問われている…)。

少なくとも、選挙区の是正は選挙自体に新たな風を生むことになる。また、多くの人間がチャンスを得ることにもなる(地方の声が届かなくなるという声もあるが、この点については、また別記事で書かせて頂きたい)。中選挙区制から小選挙区制に移行して25年。いよいよ、「アダムス方式」が導入されようとしている。これが、今後の政界にどういう意味をもたらすのか。その行方を見守りつつ、結果を分析していきたい。

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