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幻のザックの話。

ほろがちに入って登山を本格的に始めるようになり、たくさん入るザックが欲しくなった。ザックとは登山に使うリュックサックのことで、山族は当たり前のように「ザック」というワードを使うのだが、最初は慣れなかった。
他にも、ノースフェイスのことをノース、パタゴニアのことをパタと山族は呼ぶが、ひよこの私は、まだ小っ恥ずかしくてできていない。ザックで精一杯だ。

ザックを買うにあたり、山族の友人に情報を得た。方向性として、大きくふたつに分かれるらしい。老舗メーカーが出す機能性にこだわったものと、軽さとデザイン性にこだわったウルトラライト、いわゆるULと呼ばれるものだ。
ガツガツ山に登るタイプでもないし、一応爽やかなハイカーとして認識されたいという欲もあるので、UL路線に絞ることにした。

ULブランドを調べていくと、購入ハードルが高いことに気づいた。基本的に大量生産ではなく、作り手が作れる分だけしか売らないので、販売期間が限られているし、人気なものだとすぐ売れてしまうらしい。
マメでないし、基本的に熱量が低めの私には相当なハードルだった。一応、気になるブランドの情報は届くように設定したが、待てど暮らせど販売開始の情報は来ない。せっかちなところも持ち合わせているので、これを手に入れるのは現実的ではないと判断した。
  
でも、近いうちに初のアルプス燕岳に行く予定があり、そこでは新ザックで行きたいと思っていた。そんな折、手作り雑貨サイトのminneでULザックを制作している作家さんを見つけた。トップ、ボトム、サイド×2、フロントの計5箇所をそれぞれ10個のカラーからセレクトできるもので、完全オーダーメイドだ。それでいて、相場よりも安価だった。しかも、受注生産でいつでも受け付けており納期もちょうど間に合うという、まさに運命の出会いだった。

湘南に移り住んだくらい海に憧れを持つ私は、山にも海っぽい要素を取り入れるのが個人的なポイントだった。だから、白と青を基調にし、イメージカラーと言われがちな黄色を差し色に入れることにした。
カラーを見本図からそれぞれ記号で選択し、イメージ画像を作成してもらって、完全オーダーメイドザック発注した。

ビーチのような砂があるとはしゃいだ様子、燕岳にて

2週間後、無事ザックが届き、わくわくしながら開梱にとりかかったが、勇んで包みを開いていた手が瞬時に止まった。私の目の前には、海どころかポケモンのようなザックが転がっていたのだ。
よーく目を凝らすと、青で注文したところが紫だった。おいおい、注文内容と違うぞと憤慨し、問い合わせようと履歴を辿った。
ただ、クレーマーになってはいけないと一度冷静になった。カラーを選択する際、記号だったからもしかしたら自分が間違えたかもしれない。もう一度、カラー表と注文履歴を見比べた。

すると、思いもよらないことに気づいた。自分が青だとおもってたイメージ図の色は、よく見ると紫で、その斜め下に(濃い目の)青があった。そう、注文時にイメージ図から正確に読み取れていなかったのだ。

それでも、イメージ図にカラー名(青とか)を書いてくれなかったのも悪い。他にも間違えて頼む人はいるのではないか?そう思い、下手に出て貼り替えを申し出た。
貼り替えは難しいが、新しいザックを半額で作ることはできます、という返答だった。悔しかったが、海をイメージしなければ意味がない。ポケモンを持てるほどの度量はない。勉強代と思って、新しく今度こそ青と白を基調にしたザックを依頼した。※チキって、ビビッドな黄色は今回いれなかった

  
仕方ないと心も落ち着いた頃、父の日が近いことに気づいた。何を隠そう、うちの父もそこそこ山に登るのだ。父の日のプレゼントにするという名案を思いついた。
他にザックはなかったし、そのプロモーションのためにも、例の初アルプス燕岳はこのポケモンザックで行くことにした。

信じられないくらいの絶景をバックに、ポケモンザックはいい感じに切り取られた。父に「このザックどう?いる?」と写真を添えて送ったところ、もらうというので、すかさず「父の日のプレゼントはこれで。」と返答した。
元気に父と山を登ってくれと、別れを惜しむことなくスッキリとした気持ちで実家に送った。

実際のプロモーション用の写真

ところが、ポケモンザックが山を登ったのは燕岳だけだった。なぜなら、父の通勤リュックになっているからだ。
あの、山でもちょっと恥ずかしいくらいのカラーリングを父は地上で、しかも会社に持って行ってるという。身内ながらそんなに度量が大きかったとは知らず、驚きを隠しきれない。


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