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グッジョブ賞
私が勤めている放送局には「グッジョブ賞」という賞があります。社内表彰には「社長賞」以下いろんなものがあるのですが、それらとは一線を画した、というか、一風変わった賞です。
それは本来の仕事の成果に与えられる賞ではなくて、本流の仕事とは少し離れたところでの小さな活躍に与えられる賞で、多くはその表彰理由が笑いを誘うものです。
かつて東京支社にに大事な忘れ物をしたまま本社への帰路についてしまった社長を、東京駅まで走りに走って、それこそ改札口のフラッパーゲートを飛び越えんばかりの勢いで(本当に飛び越えたかどうかは知りませんが)間一髪で忘れ物を届けた女性秘書が受賞したこともあります。
でも、まあ、これはグッジョブ賞としては、あまり適切ではありません。全速力で走るのは秘書の仕事ではありませんが、社長の忘れ物を届けるのは多分秘書の仕事の範囲でしょうから。
本来はもっと外れたところに与える賞なのです。
例えば(以下はあくまで例ということで今回私が勝手に考えたものですが、かつてはこれよりもっと適切でもっとケッサクなものもありました)…
営業マンなら、今回のセールスは見事に失敗に終わったけれど、その中で素っ頓狂なセールストークが先方の宣伝部長にえらく受けて、何があっても笑わないことで有名なその部長が爆笑した
とか、そんなことに賞を出してしまうわけです(それが次のセールスに繋がるかどうかは全く分からないのに)。
強烈なアニメオタクの経理マンが、アニメ作家のドキュメンタリを撮っている報道マンの編集作業に押しかけて来て、アニメオタクでなければ決して気づかないテロップの誤りに気づいた
とか、そんなことに賞を出してしまうわけです(その間に経理本来の仕事がどうなっていたかはあえて問わないわけです)。
私は、これは選ばれる社員が評価されているのではなく、選出する上司の側が試されているのだと思っています。
つまり、「お前は部下の日常をちゃんと見て、気を配っているか? 30秒いくらで売ったとか、視聴率を何%獲ったとか、そんな結果だけで評価しているのではないだろうな?」と言われているような気がするのです。
だからこそ、私はこの賞が素敵な賞であると思っています。
全社局長会で各局長がこの賞を発表する時、聞いている局長の面々からしばしば笑いが漏れます。それは、「よくもそんなことをしたなあ」という笑いであるとともに、「よくそんなものに賞を出すなあ」という笑いでもあり、「よくそんなことに気づいたなあ」という笑いでもあります。
笑いを取るために変な賞を出してしまってスベったり、ひどい場合には社長に怒られて却下されるケースもあります。
なんであれ、選ぶ側も試されているのです。賞をもらって喜んでいる人も、賞をもらえなくて腐っている人も、あなたを選んだり選ばなかったりした上司もまた試されているのだということを憶えておいたら、少しは気が楽になるのではないでしょうか。
賞ってそんなもんだと思うのです。
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