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誰かと組んでみること──鶏鳴狗盗

初めに書いておきますが、長いこと生きているとそれなりにいろんな知見を得ることがあって、するとやっぱりそれを若い人たちに伝えたくなって、ひょっとして老害などと言われないだろうかと気にはしながらも、結局こんなところにこんなことを書いたりしてしまいます。ご寛恕ください(笑)

ひとりの限界

人間誰しも欠点があり、弱点があり、限界があります。

では、その限界をどうやって超えるか? ──死ぬ気で努力する?

努力するのは素敵なことなので、それが悪いとは言いません。でも、20代の、いろんな意味で人間が柔軟な頃ならいざ知らず、30代、40代と齢を重ねてくると、努力したって人間そんなに変われなくなるもんです。少なくとも、急に大きく変わる(成長する)のは無理です。

そうすると、自分の理想に自分の現実がついて行かない ⇒ 自分を責める、という悪循環に入ってしまう可能性があります。

私も若い頃はそうでした。ついつい自分ひとりで完璧を目指して、でも、自分が完璧な人間でない限り、自分ひとりで完璧な成果を挙げられるはずはありません。

そんな時にふと気づいたんです。自分が完璧になるのではなく、「自分+誰か」の組合せで完璧を目指せば良いのではないか?と。

いや、完璧なんて目指さなくても構いません。ただ「自分+誰か」を常に最小単位と考えれば良いのです。そうすると自分の負担も減るし、成長も容易になり、成果も必然的に大きくなります。

要は誰と組むか、なんだな、と。

自分と組んで成果が上がるのは自分にはないものを持っている人です。それは特技であったり性格であったり発想であったり、いろいろです。

それは時として自分が嫌いなタイプ、苦手なタイプの人かもしれませんが、そうであるほど、一緒に組んでやっていると、「なるほど、そんな考え方があったか」「え、そんなことやっちゃっていいの?」などと、いちいち発見があって、組むことが楽しくなってきます。

いや、もちろん嫌いな奴は基本的に嫌いな奴だし、苦手な奴はやっぱり苦手な奴なんですが、でも、一緒に組んでやって行くと、彼の、自分には今まで見えていなかった部分が見えてきたり、あるいは彼によって、自分では絶対選ばなかった方法が選択肢に入ってきたりして、こころなしか彼に対する興味が、引いては愛着が(幾分か)湧いてきます(笑)

嫌いは嫌い、苦手は苦手なんだけど、前よりはへっちゃらになってくるんですね。そうすると2人で組んでいる効果が出てきます。そういう効果は、自分と似たタイプと組むよりも遥かに大きくなると私は思います。

だから、どんな嫌な奴であれ、どんな苦手なタイプであっても、私は仕事で誰かと組むのが大好きです。

鶏鳴狗盗

私の大好きな故事成語に「鶏鳴狗盗」というのがあります。

これを説明し始めると長くなるので、ここでは簡単に書いておきますが、孟嘗君は一見ろくでもない人材を大勢食客に抱えていたのですが、孟嘗君が王に殺されそうになった時に、その中にいた元泥棒(狗盗)と鶏の鳴き真似名人(鶏鳴)が役に立って難を逃れたという話です。

この話を読むと、「どんなつまらない奴にも何か特技があって、使いようで役に立つ」みたいな教訓を読み取ってしまいがちですが、私はそうは思いません。

「こいつらは他人の家に忍び込んだり声帯模写するぐらいしか取り柄がない」と思ってしまうこと自体が私たち自身の限界だと思うんです。そう思って切り捨ててしまうのが私たち自身の欠点であり、弱点なのです。

人間というものは結構深い存在です。まずは組んでみなければ、どんな効果が出るのか分かりません。組んでみると意外なところから意外な効果が得られ、自分一人で悩んでいたときよりも随分肩の荷が軽くなり、そして何よりも、意外に面白いのです。

組む相手を選ぶことも無論大事ですが、とりあえず誰とでも組んでみることも大事です。そういうことで成果が上がります。

そして、単に自分ひとりじゃなくて「自分+誰か」だったからうまく行ったように見えるかもしれませんが、実は誰かと組むことによって私たち自身も少しだけ成長しているのだと思います。

要は誰かと組んでみること、なんだな、と。

【追記】

上記は、たとえ嫌な奴であっても組んでみたら意外と面白いし成果も上がるという趣旨であって、どんなに嫌な野郎とも組めばうまく行くという話ではありません。

とは言え、自分の苦手とするタイプの人とうまくやって行くには、それなりのコツがあったりするのも事実です。そのことはここに書きました:


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