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どういう場合は引用しても大丈夫なのか

ウェブ上に(著作権者の許諾を得て)いろんな曲の歌詞を掲載したサイトはたくさんありますが、その多くは歌詞の一部さえコピーできない設定になっています。

著作権保護の観点からやっているということはよく分かるのですが、僕のように時々音楽関係の文章なんかも書いていて、自分のサイトに歌詞を引用しようとすると非常に不便に思います。

そう、誰かが書いた歌詞は一切コピペしてはいけないわけではなくて、著作権法で規定されている「引用」であれば、それは著作権法上適用除外となるのです。なのに一切コピーできないという設定はなんだか不合理な気もします。

著作権上の「引用」の要件は、まとめる人/まとめ方によって3つだったり4つだったり5つだったりしますが、僕なりにまとめると以下のようなことかと思います。

1)まず引用元が公開された著作物であるということ

そもそも公開されていないもの、例えば個人的なメールなどを勝手に公開してはいけません。一方で、誰でも言いそうな短いフレーズや料理のレシピなどは著作物ではないので、これは「引用」の要件を満たしているかいないかと悩むことなく自由に書いて構いません。

ただし、レシピを紹介しているサイトのスクショをそのまま転載したりすると、レシピ自体には著作権がなくても、そこにある文章や写真やデザイン/レイアウトなどの著作権を侵害することになりますので要注意です。

ちなみに日本(及び世界の多くの国)では公開した途端に著作物であると認められます。どこかに登録する必要もない(これを無方式主義と言います)し、©マークを付ける必要もないということは知っておいたほうが良いでしょう。

話は逸れますが、以前 twitter でフォローしてくれていた人がプロファイル写真にユニバーサルスタジオ・ジャパンのロゴを使っていたので、「さすがにそれはヤバいんじゃないでしょうか?」と助言したところ、彼はロゴに「©USJ」という文字を追加しました。

でも、それは何の意味もありません。そもそも ©マークは権利者が表示するものであって、勝手に使う人がつけるものではありませんし(笑)

ま、そんなことで訴えられたりはしないでしょう(多分)が、もし訴えられたら間違いなく負けます。特に相手が外国の大企業だったりすると、場合によってはえらいことになります。

その会社が「このロゴや写真などは自由に使って良いですよ」と公に宣言しているのであれば別ですが、そうでないのであれば本来的にはその会社に使用許諾を求める必要がありますし、もし使用が許諾されても使用料金(あるいは料率)を求められる可能性があります。

僕が番組の配信を担当していた時の一例を紹介すると、その番組内で使われていた米国の某巨大エンタテインメント企業が著作権を持っていた写真を数秒使うだけで数万円(配信期間1週間で)と言われて、使用を断念しその部分をカットしたことがあります。というか、そんなことはしょっちゅうありました。

これは正面から交渉して言われた料金なのでまだこんな金額ですが、隠れて勝手に使っていたのがバレたような場合(特にそれでお金を儲けていたような場合)はこんな金額では済まないとご理解ください。

ちなみに日本のような無方式主義の国では ©マークを付けることにあまり意味はありません。逆に言うと、©マークが付いていないから勝手に使って良いと考えるのは大間違いです。

なんだか脇道に逸れて説明が長くなってしまいました。2番目以降の要件を手短に書きます。

2)どこからどこまでが引用なのかちゃんと分かるようになっているということ

自分の考えと引用が渾然一体となっていたり、境界線がはっきりしないような文章は認められません。また、言うまでもないですが、引用部分を一部書き換えたりしてはいけません。

3)あくまで自分の文章が「主」であって、引用部分が「従」であること

引用というのは自分の説を補強したり根拠を示したりするためのものですから、自分の説がメインでなければなりません。だから、たとえば延々と歌詞を紹介して、最後に「どうですか? 素晴らしい歌詞でしょ?」と1行だけ書いてあるような文章では「引用」の要件を満たしているとは言えません。

4)適切な量の引用であること

どちらが主でどちらが従かは量的・比率的にもチェックされますので、引用が20行で自分が書いたのが2行とかだとまずアウトです。

そして、たとえ長い長い文章の一部であっても、歌詞をまるごと全部引用していたりすると、それも引用とは認められないケースがほとんどだと思います。どうしてもまるごと引用しなければならない必然性があると認められたら別ですが。

5)出典が明示されていること

これはまあ、人間として礼儀として当然ですね。誰の書いたものをどこから引用したのか明記しない限り使えないということです。

僕は長年ネット上にいろんな文章を上げてきましたが、著作権を守るべき放送局などというところに勤務していたこともあって、割合早くから上記のようなことを意識して書いてきました。

逆に言うと、それさえ守っていれば誰に断ることなく引用して良いわけです。

ところで、サイトによっては JASRAC と契約していて JASRAC管理楽曲であれば自由に引用掲載できるところもあります。今のところ note はそういうサイトではないようですね。どこならば OK なのかは自分で調べてみてください。

ただし、日本で発売されている楽曲の多くは JASRAC の管理下にありますが、音楽著作権管理団体は JASRAC だけではなく、例えば NexTone 管理楽曲もあれば、まれに作詞作曲家が個人で管理している場合もありますので、引用する前によく調べてくださいね。

もちろん個々の権利者の許諾を全て取って、料金を支払いさえすれば何でも使えます。はい、お金に余裕がある方はそうしてください(笑) ただし、許諾が取れるかどうか、どんな料金や料率をぶつけられるかは交渉してみないと分かりません。何が何でも許諾してくれないケースもあります。

ところで、上記のような基準に照らしてみると、ここ note にもアウトっぽい文章は結構ありますよね。

まあ、お互い気をつけたい、と言うか、しっかりルールを守って適切な運営をしたいものです。

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