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梅田サイファーとOSCA,「ビッグジャンボジェット」の渦中にいる心境

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・改めて、OSCAさんが梅田サイファーに行ったきっかけを教えてもらってもいいでしょうか?
「最初はモバゲーですね。僕がHIPHOPのサークルの管理人をやってまして。そこに参加してたKOPERUに誘われて行ったのが最初です。」

・どこかのタイミングで現在の拠点でもある東京に行かれると思うのですが、時系列的にはいつ頃ですか?芸人を始めた時期とも関わってきますよね?
「時系列的なことは苦手であんまり覚えてなくて。ただ、芸人になったのもラッパーとして売れるためっていうのがありました。梅田の1stが出た頃はまだ大阪にいたんですけど、当時はまだフリースタイルダンジョンも始まってない"日本語ラップ冬の時代"って言われてた時期で。このまま大阪でやってても自分の力だと売れるの無理なんじゃ?って思ったので新しいアプローチとして幼馴染とお笑いを始めました。」

・なるほど。メンバーの中でも経歴や梅田との距離の取り方がOSCAさんは少し特殊なのかなと以前から考えていました。
では早速ですが、先日リリースされた「ビッグジャンボジェット」について聴いていきたいと思います。まずタイトルトラックでもある1曲目"ビッグジャンボジェット"、独特のメンバー配置含めてこの複雑な構成はどのように考えられたのでしょうか?

「それは☆Taku Takahashiさんに要望を伝える前から僕がある程度もう決めていました。☆Taku Takahashiさんの今までのワークスの中から、梅田サイファーに合う時代感やビート感を推敲して伝えて。
アルバムの構想でtofuくんに頼む曲(アルバム収録曲"いつかまた")とメンバーは二分するって話があったんで。先にがっちり動き出していた”ビッグジャンボジェット”側を先導する僕の方でバランスを考えて分けさせてもらいました。」


・☆Taku Takahashiさんとのやり取りはOSCAさんが主に進めていたという話も以前伺いました。
「そうですね。☆Taku Takahashiさんと曲を作るってなった時に梅田の全体会議で、コマツ(OSCA)が軸で進めたら良いんじゃない?ってテーク(テークエム)が言ってくれて。」

・完成した仕上がりとしてはいかがでしたか?
「思っていた物以上の物にはしていただいたなって。最初に渡されたビートは今と全然違う物だったんですよね。元でいただいたそのビートもベースミュージック系で☆Takuさん印の凶悪なビートではあったんですけど。僕らがアカペラを送った瞬間に向こうから電話がかかってきて、『ちょっとこれ時間ください』って熱を込めて言っていただけて。最初の何倍、何十倍の威力があるビートが返ってくる事になるんですけど、曲構成は元々中盤に1つだった僕のヴァースが増えたくらいでほとんど変わってないです。」

・予定ではこれからツアーも始まる事になると思いますけど、ライブで爆発する一曲になりますよね。初披露された昨年のMUSIC CIRCUSというフェスでは、大阪の南大阪周辺の梅田に普段触れ合ってなさそうな人達が盛り上がっていた事を鮮明に覚えています(笑)。
「ありがとうございます。今の梅田でスマッシュヒットを生んでいるのが、"マジでハイ","トラボルタカスタム","梅田ナイトフィーバー'19"辺りだと思うんですけど、それとは被らない一曲を作ろうと考えてました。
リスナーの想定はむしろヒプマイとかから梅田サイファーを知ってくださった方々に向けて作ったつもりなんですけど、まさかギャルが跳ねてくれるとは思ってなかったです(笑)。」

・ガガさんの衝撃的なフックがやはり印象的ですが、たうりんさんとふぁんくさんの掛け合いなど日本語ラップ然とした部分をちゃんと揃えてくる所も梅田らしいと改めて思いました。
「たうさんとふぁんくさんの仲の良さみたいなものを絶対に見せたくて。今回はガガさんが絶対にあの感じになるからということで締めていただくためにもあの掛け合いの形をお願いしました。
ガガさんのフックは、梅田の過去の曲で"普通の通(ウゥ)"って曲があって、その曲でもガガさんがフックで爆発するんですけど。僕はあれがめちゃくちゃ好きで、あの曲の最新バージョンが作りたかったんですね。ガガさんに分かりやすいフックをお願いしたんですけど、他のメンバーではああはならない仕上がりになりましたね(笑)。
どこの高校って言ってたか忘れたんですけど、高校野球の応援歌のリズムから取ってきたそうで。ただ最初に提出してきた案が337拍子でただのあ◯まんJAPANだったんで、それはRECの時に一緒に居た現地メンバーに止められたみたいですけど(笑)。なんとか出来上がって後半の"ジャンボ、ジェット、上、雲"の部分とかは良い感じに残せてガガさんっぽいフックが出来たんじゃないかなって改めて思います。」

・そんな制作秘話があったんですね(笑)。改めて聴き直すのが楽しみになりました。
続いて、昨年のJapidiotで集まった華金も経て今作に収録されている"SPACE INVADER"では5人の再集結となりましたが制作面で印象的だった出来事などありますでしょうか?

「あー…覚えてない、というか。僕、その頃めっちゃ病んでて。楽曲の会議も参加してないんですよね。ヴァースは書けるけど他をやれる元気が無いって丸投げしちゃった曲なんです。」



・聴く所によると、tellaさんが構成を作った曲だそうですね。
「そうですね。今までのJapidiotって"SPACE INVADER"より前の時は基本的に僕が舵を切ってたんですけど。ちょっと全部パンクして嫌になってた時に、tellaを始め他のメンバーが頑張って引っ張ってくれましたね。ありがたい。
個人的にはまだJapidiotは完全復活してないというか。そもそも本格活動できてた時期が昔すぎて。
去年のJapidiotで集まった華金も再始動というより、また5人で一緒に居れるねって確認の時間だったなって思ってて。それはそれで自分には凄く尊かったんです。本当にちゃんとやるんだったらもっと上にいけるグループだとは思いますけどね。」

・続いて"リズム天下一武道会"についてですが、OSCAさん的にああいう風なテクニカルなヴァースはすぐ書けるものですか?
「すぐ書けますね。何て言うんでしょう、練習すれば追えるというか。むしろ完コピしたら僕よりあのヴァースを上手くラップできる人はいると思います。逆に、僕の"HEYGIRL"ってソロの曲とかは僕よりかっこよくラップできる人は多分いないなって思う。そこは自分に自信があって、あのゆっくりな載せ方にも細かく技術って必要なので。
この曲に関しては覚えりゃ誰でも出来る且つ声の作り方も納得しきってはないですね。早口しないといけない分捨てたピッチコントロールとかはあります。あのビートとテーマでの100点は自分の中では出せてるんですけど、ソロでは絶対やらないと思います。その100点が相対評価で言うならみんなのヴァースよりは簡単だなって。」


・梅田の中のOSCAさんのラップのキャラクターや特徴ってご自身ではどのように分析されていますか?
「梅田の人達とは技術体系の違うラップをしてるって思います。例えば餓鬼レンジャーの"火ノ粉ヲ散ラス昇竜"って曲で、ポチョムキンさんとYOSHIさんが逆のヴァースを蹴ってたらあの曲があのテイストにはならないですよね。自分の声の威力が一番出るラップの仕方をしてるはずなんで、お2人とも。それと同じで、たぶん僕がテークとかR(R-指定)と同じヴァースを蹴っててもあんなに切れ味出ないんですよね。それを10年ぐらい悩みに悩んで、ラップの仕方を組み立て直し始めました。形は違えど、梅田の人達って切れ味型のラップをする人が多いイメージなんですよね。能力値でいうと凄い真正面からラップしてる人の性能の項目というか。ただ僕は十何年ラップやってきてその項目の点数を全然取れてなくて。もうそこで点数取るのは諦めてめんどくさい部分で点数取りにいってるので、異質には聴こえてるんかなって思います。」



・マジでハイ以降、それぞれのメンバーが進化を遂げて梅田に戻ってきてるとは思うんですが、OSCAさんやテークエムさんは他のメンバーに比べて少し退廃的,デカダンな部分が備わっているのかなと思います。Japidiotのラッパー4人はソロワーク見ててもみんなどこか不思議で影がありますよね。
「アルバムでJ-POPと勝負しようって言ってんのにデカダンっぽさ出てたらやばいような気もしますけどね(笑)。
僕はど真ん中で言語化できるラップで勝負する自信は無くて。テークさんとかはど真ん中もいこうと意識はされてるっぽいんですけど。」

・最後に、"No.1 PLAYER"についてです。先日、惜しくも無観客開催となってしまった服部緑地野外音楽堂でのワンマンではこの曲でOSCAさんの涙も見えましたがどういった心境でしたか?
「あの日は、今日は泣かへんぞって思ってたんですよ。どうせ泣くやろと思われてるやろなって逆に冷めてて。テークのヴァースの"ただのワガママって電話越しに泣いてたお前もちゃんとぶちかましてた"っていうのも自分のことってわかってたので、そこに関しては逆に意識できる分、無心で通りすぎるやろって思ってました。ただそこでRとしっかり目が合っちゃって。ああ〜ってなりましたね(笑)。
あとまた悲しめの話になって申し訳ないんですけど。…居てほしかった人が何人か居なかったんで。その人達が居なくなっちゃった時の事を思い出したりだとか。自分が戻ってこれた事と戻ってこれなかった人、戻ってこれてない人の事。そういう意味での涙でしたね。成し遂げた系の理由では無かったです。それが全部合わさって、Rの"1人も欠けたくはなかったけど 1人になってもきっと握るペン"の部分でそうだよなと思って。」

・あの時はOSCAさんにしか見えてないものがあったんですね。あのRさんのフレーズは梅田の人達を凄く表してるなと個人的には思います。
出自も考え方もスタンスも全然違うみなさんが改めてラップで濃く繋がってる事を感じれるアルバムになってますよね。

「Rが梅田とはまた全く違う別のインタビューで、"主観性を語ることで共感を得られる事もある"って言ってて。この曲のRのヴァースはもう1パターン用意してくれてたんですけど、そっちでは梅田の事を結構俯瞰で話してて。今回はRの事をしゃべりなよって言ったのを覚えてますね。」

・東京に拠点を移したOSCAさんは梅田と物理的にも精神的にも距離が出来ることもあったんじゃいかなと思っているんですが、ご自身はどう感じていましたか?
「そもそもメインメンバーじゃなかったんですよね、自分。繋がりも薄くて誘われたい所に誘われなかったり、当日居たのにライブレポには名前が書いてないみたいなこともよくありつつ。梅田の話でよく出るENTERのトーナメント上位がほとんど梅田で埋まってた、みたいな所にも居たわけじゃないですし。自分も準優勝ぐらいならあるけど、みんなほどバトルでブイブイ言わしてるわけでもなかったので、みんなと居る為に何とかしないとなってずっと思ってましたね。芸人になったのもそれがきっかけです。
あと物理的に遠かった事でいうと、伝えたいことをすぐに伝えれなくてコミュニケーション不足になってたってのもあったと思います。」

・昨年、OSCAさんソロのライブを拝見させていただいた時にMCで音楽を辞めようと思った時期もあったと話されていたのでこの様な質問をさせていただきました。
当時は梅田のメンバーや東京のOSCAさんの周りの人達からどのような反応をされたか覚えていますか?

「結果が出せなかったのと売れるためにっていうので20代前半から後半にかけて、ラップでもお笑いでも後悔の多い選択を沢山取ってきた自覚があったんですよね。出来るだけ嫌われ役をやってでも結果を出して、最終的にみんなで笑い合えるようにって思ってたんですけどそれが失敗に終わって。しかも、あまりにバッドマインドになりすぎてみんなに嫌われてるだろうな、もう帰る所無いよなって思ってました。その何も残ってない状況の時に、東京の友達のおかげで立ち直れたので感謝してます。
梅田のメンバーでいうと、テークとふぁんくさんです。あ、ここに居ていいんだって気持ちにさせてくれたのは。何の為に俺は梅田におるんやろうって気持ちのまま梅田の制作が進んでた時期があって、制作会議で別件の込み入った話になった時にふぁんくさんが"別に誰もコマツくんの事をどうでもいいとは思ってない"ってほとんど全員がいるような会議の場所で言ってくれて。それのおかげで当時自分が抱えてた気持ちも腹を割って話せて、今はニコニコでライブすることができてます。」


・貴重な話をありがとうございます。大小あれどメンバー間の乖離を埋めるという意味でも「ビッグジャンボジェット」は大きい一枚になったのかもしれませんね。今のOSCAさんにとって梅田サイファーはどんな場所になりましたか?
「結構これはみんなが頷いてくれる話では無いんですが。
…友達ですね。やっぱり。東京にも沢山友達はいるんですけど、自分がレペゼンって言葉を使えた上で一緒にライブできる唯一の友達の集まりですかね。ここまで僕にとっては人との繋がりに対して苦しく思う事が沢山あったんでこの感覚は大事にしたいです。」

・OSCAさんソロの今後の展望などあればお願いします。
「ビッグジャンボジェットが出てめちゃめちゃ褒めてもらえるんですよね。自分が思ってた以上に今回は矢面に立たせてもらったみたいで。自分に自信がないんでヌルヌルやっていくつもりやったんですけど、頑張って胸張らないとあかんくさいなって。他人の事を気にせず活動するつもりだった事を一旦辞めて、梅田と梅田以外の外のラッパー達ともう一回勝負せなあかんやろうなって思ってます。」

・リスナーからしたらめちゃくちゃ楽しみなコメントだと思います。今作でOSCAさんに期待している人も増えたと思うので。プレッシャーかかるかもしれないですけど(笑)。
「いや、それはかけてください(笑)。ありがとうございます、頑張らないといけないんで。」

・今後の告知などありますか?
「えーと…ビートが無いです、募集してます(笑)。
色んな人に頼んでるんですけど、まだ1トラックしかきてなくて。正規のお金はちゃんと払うんでお願いします(笑)。
一応個人ではそんな感じですかね。」

・最後に、ファンの方や読者に向けて一言お願いします。
「自分の事を大事にしないとなって思い始めてるので、タイミングによってリプとかDMとか対応しきれない事も沢山あると思うんですけど許してください(笑)。」

・これでインタビューの方は終わらしていただこうと思います。また次作のリリースを楽しみにてます。ありがとうございました。
「ありがとうございました!」

梅田サイファー「ビッグジャンボジェット」リリースツアー
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2170879
  兵庫 2021.06.20(日) at 神戸Harbor Studio 
            open17:30 start18:30
   福岡 2021.07.04(日) at BEAT STATION 
            open17:30 start18:30
   京都 2021.07.23(金祝) at KYOTO MUSE 
           open17:30 start18:30


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