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KZ2時間ロングインタビュー part2 〜KZと梅田サイファー〜

自分がほんまにしたいことなんやったらしたらいいし、

したくないことなんやったらとっとと辞めるべきやと思うねん

・梅田の中で1番衝撃,影響を受けた人は誰ですか?

「最初も最後も、やっぱりふぁんくちゃうかな。ふぁんくのラップの上手さはほんまに度肝抜かれた。抜群に群抜いてたね。
今でも思うけど、やっぱラップってどこまでいっても言葉の精度とリズムやと思ってて、そこの2つに関して、ふぁんくは日本でも群抜いてると思う。梅田サイファーのラッパーは皆ふぁんくの真似してたと思う。一個の中心点やった。」

・ふぁんくさんはファニーな存在に見えるんですが、緊張感も持たしてくれる存在なんですね。

「いやめっちゃあるよ。ふぁんくがファニーになったなんてここ数年で、めっちゃ怖かったで。テークとかディスられてめっちゃ泣かされてたし。…ピリピリしてたよ(笑)。」

・R-指定さん,ふぁんくさん,pekoさん等がUMBやフリースタイルダンジョンを中心に世間に台頭していく状況はKZさんはどう見られていましたか?

「1番大きかったのは、自分がそれと同じルートに乗れない、乗りたくないってこと。それは自分でも分かってたけど、ただどうしたらいいかがわからんくて何もできない自分に悔しさはあったかな。
俺が活発になるのって2017,18年ぐらいやねん。その当時の俺ってバトル呼ばれたら出てたまに勝ってよく負けるどこにでもおるMCやって。その中でふぁんく,Rが勝っていってpekoやんがダンジョンでぶちかまして。まぁpekoやんの時は踏ん切りついてたかな。UMB2018でふぁんくと当たった時にも言ったけど、ふぁんくとRがおるせいで同じ勝ち方せなあかんとは思ってた。それを勘違いしてた。
ただある時、そうじゃないってこと気付いた。きつい言い方するとMCバトルって相手がいないと成立しないエンターテインメントで、お客さんはその2人によって上がっててファンにはなってもリスナーにはならんかなって俺は思う。全員が全員じゃないけど。
そこの乖離を受け止めないとあかんし、受け止めた上で自分の活動を構成しなあかんと思う。それがRとかふぁんくの台頭を見て思ったことかな。」

・それが今日のKZさんの活動に繋がっていくんですね。
僕の見解では梅田サイファーはスキルとリアルを追求する集団だと思ってるんですが、スキルの向上の部分は何が原因なんですか?サイファーならではの切磋琢磨などありますか?

「1つは、ふぁんくっていう圧倒的なスキルの基準点があるのと、俺が結構排他的やってん。だらけるやつを輪から切り捨てていく活動をしてたというか(笑)。梅田サイファーってある時から、知名度が上がっていって人も沢山来るようになったんやけど、根付くのはごく一部やねん。何でかっていうと、だらけてしゃべるやつとか輪に入ってこないやつを結構俺がディスってボロクソに言うというか。今思うとひどいなと思うねんけど(笑)。
今も思うねんけど、自分がほんまにしたいことなんやったらしたらいいし、したくないことなんやったらとっとと辞めるべきやと思うねん。人生って無限じゃないから。そういう意味で、だらだらしゃべってる人にはラップで伝えてたかな。ほんまにラップしたい人しか残らんかったし、逆を言えばサイファーをあんまりしたくないKOPERUとかコマっちゃん(OSCA)とか、あとはtellaとか鉄平とか。よく来るメンバーと来ないメンバーに別れたよな。TTBっていうクルーがあって、俺とふぁんくは入ってないねやん(笑)。向こうからしたら煙たかったと思う。仲悪かったとまでは言わんけど、そういう時期は結構あったね。」

・梅田の中でも初期メンバーとそうじゃない人達に別れてたってことですね。

「ふぁんくはどうか置いといて、俺は早い段階で(音楽で)食わんってことを決めたから。食おうとしてたラッパーをダサいと思ってたというか。今みたいにリスナーを大事にするって気持ちも薄かったし。ガキやったんやろうな。
TTB辺りののメンバーは音楽で上がっていこうとしてて、動かん俺らに対して煙たさを感じてたと思う。俺は俺で、せせこましいことして何してるんって思ってたし。」

・KZさんにとってのスキルってどんなものですか?

「"勝ち、続く"って曲でも言ってるんやけどスキルって認識させへんスキルがスキルやと思う。俺はF1になりたいわけじゃなくて、ポンコツでもオンボロでも誰かを乗せて遠くの良い景色を見せれたりするのが俺にとってはスキルというか。無駄な筋肉というよりは、それを過不足なくするためのものがスキルって感じかな。」

・そういう中で、一つは韻であったりグルーヴであったりってことですね。

「そやね。もっと細かいことで言うと文章が綺麗で必然的なライムを置いていくってことやと思う。」

俺は梅田があったからやと思う。あんな幸せな場所は無い。

・分かりました。もう一つの魅力として、リアルがあると思ってるんですが、梅田サイファーの人達は気が狂いたくてもどうしても狂えない人達で、ラップによって理性を保ってるというか。
ぶっ飛んでしまってるアーティストも沢山いる中で、リスナーとかオーディエンスと同じ空の下で戦って前を向こうとしてるからこそ響く音楽なんじゃないかなと思うんですけど、KZさんにとってリアルってどういうものですか?

「HIPHOP好きな人はリアルってことをそんなに考えてないんちゃうかなと思ってて。俺は日常で起こった出来事とか揺れ動いた感情を歌ってて、それはBAD HOPでもそやし舐達麻でもそやし、どのラッパーもみんなそうやと思う。俺は会社に行って仕事して帰ってきて、その合間に歌詞書いて悩んだことを伝えてって事がリアルやし、他の人が大麻吸うこともリアルやし。
それが世界というか、色んな人がおって当たり前やから。あんまりこれがリアルでこれがリアルじゃない、みたいなものは自分の中に無いかな。
ただストーリーテリングはHIPHOP独特のもので、梅田サイファーの2nd「UCDEFBR samplar Vol.2」の"The Helm"っていう曲があって、それは掘っても掘っても金が見つからない人の事を歌ったんやけど、それは寓話やけど昔の自分に通ずる部分もあるし、リスナーに伝えるために自分の中で再構築してこの手法を選んだ。究極言うと、自分の中から生まれた言葉ならSFやろうが寓話であろうが良いんちゃうかなって気もする。」

・『掘っても掘っても出ない』という話もありましたが、芽が出ていない時も続けていた原動力は何ですか?

「俺は、梅田があったからやと思う。あんな幸せな場所はない。
KZっていう人間作るものに対して凄く機微まで理解してくれる人が近くにいるっていう。昼間の仕事って社会のシステムの歯車として評価されるけど、創作活動って頭からケツまで自分で生み出すわけやん。それを順に受け取ってくれて、ジャッジしてくれて良かったら上がってくれるっていう存在が周りに10人おるっていう。それってめっちゃ幸せな事やねん。二十歳越えて。
恋人、親友って存在よりもそこが力をくれる瞬間はすごいある。家族とか恋人にある血とか本能の様な絆をバッサリ切り捨てて、人間が人間たるゆえんである創作活動をリスペクトしてくれる存在って二十歳超えたらなかなかおらんから。
十代の時って互いを上手ってだけで認め合うことはあると思うけど、二十代で梅田があることによって続けれたんやろうなと思う。続けれた、というより辞めることすら頭によぎらんかった。」

・(梅田のみなさんって)本当にピュアにラップが好きですよね。

「めちゃくちゃ好きやな。こんなに面白いもの無いよな。てか好きじゃなきゃ続かんよな。どんな事にも言えるけど。
ラップっていうものを続けれたのは梅田のおかげやし、あと曲作りに関しては梅田の深いリスナーやったら知ってると思うんやけど、dio jさんっていう人がいて。
その人が奈良にDFBRっていう場所を持ってて、そこはdio jさんの実家の持ち家やねんけど、そこに機材ぶち込んでスタジオみたいにされてて、そこの存在が凄い大きくて。曲録ってマスタリングしてミックスプレスする過程って客演呼ばんでも普通50万ぐらいすると思うんやけど、ほんまにdio jさんの好意で、ほぼほぼ0円で制作させてもらってたことが幸運やった。
その幸運を引き寄せれたのは、たぶんめちゃくちゃ好きやったからやと思う。結局辞めてしまったら、チャンスは巡ってこないけど続けてたらいつか巡ってくる。俺らは辞めへんかったからチャンスが巡ってきた。」

・Freak's'やHRKTなど、梅田サイファーの後に続くような後輩グループを見てどう思われますか?

「やっぱ可愛いよな(笑)。可愛いって言ったら失礼なんかもしれんし向こうは舐めんなって思うかもしれんけど、大阪って同じ場所でHIPHOPやってて同じフロアで遊ぶ瞬間もあるし当然向こうが作る音楽で上げられてしまう、上げてくれる瞬間もあるし。全員が全員じゃないとは思うけど、俺らの事を見て(音楽を)やってくれてる部分もたぶんあると思う。
怒られるかもしらんけど、triangleのみんなも可愛いと思うし、西さんとかハジメさんも先輩やけど可愛いと思うし(笑)。可愛いなっていうのはHIPHOP好きなのが同じっていうのが嬉しい、みたいな。極力みんな辞めずに生き残ってほしいって思う。ただ俺は俺で勝たなあかんし、手を差し伸べるべきでもないと思うけど、距離もあるけど必要なお金は貰ってそれがぐるっと回って色んな所に繋がっていくって風になったらなって。
前の『すくわれろ(KZのワンマン公演)』でも言ったんやけど、ようわからんよな。人が不幸になってほしいっていう感情が。全員成功するんやったら全員成功するのが1番やんって思う。そんなん理想ですよ、無理ですよって言われたとしても、理想を持っとかないと絶対理想にならんし。今はみんな純粋に成功してほしいって思うかな。」

<<< part 3へ続く>>>

出演 KZ (interviewer yamakawa kyotaro)
企画・構成・文 yamakawa kyotaro
撮影協力 KZ club stomp
映像編集 橋本翔乃

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