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千葉ロッテマリーンズのドラフト展望①〜現状把握から上位指名の方向性まで〜

どうも、やまけんです。
9月に入り、プロ野球もシーズン佳境。それと同時に、今年のドラフト会議まで残り2ヶ月を切りました。
今回は、千葉ロッテマリーンズの今年のドラフトについて掘り下げたいと思います。

今季のチーム状況

1.在籍選手、入団、退団

今季の所属選手(7月31日時点)
シーズン開始前の入退団
シーズン開始後の入退団

まず、昨季から今季にかけての所属選手の変化です。
長年ブルペンを支えた松永昂大投手、田中靖洋投手が現役引退し、今季からそれぞれ投手コーチとストレングストレーナーに就任。昨年まで所属していた全外国人選手が退団し、新たにメルセデスカスティーヨぺルドモポランコの4選手が加入しました。

昨年のドラフトでは支配下5選手、育成4選手を指名。また昨年から始まった現役ドラフトでは、成田翔投手がヤクルトへ移籍、オリックスから大下誠一郎選手が新たに加入しました。


レギュラーシーズン開幕前の3月に福田光輝選手と日本ハム・西村天裕投手のトレードが成立。7月には、小沼健太投手と巨人・石川慎吾選手の2件目のトレードが成立しました。7月の支配下登録期限目前には、オフにオリックスより育成契約で加入した澤田圭佑投手を支配下登録し、昨季までメジャーリーグでプレーしていたブロッソー選手を新たに獲得しました。
また、4月にキュラソー出身のアポステル選手が育成契約で新たに加入しました。

2.チーム成績(9月4日時点)

順位:2位(1位・オリックスと10.5ゲーム差)
チーム勝敗数:116試合 59勝52敗5分 勝率.532 貯金7

打撃成績(リーグ内順位)
得点数: 418(3位)
打率: .242(4位)
本塁打: 84本(5位)
OPS: .673(4位)
盗塁数:62(4位)

投手・守備成績(リーグ内順位)
失点数:423(5位)
防御率:3.38(5位)
被安打:974(4位)
奪三振:898(2位)
与四球:323(3位)
失策:65(5位)
守備率:.985(5位)

チームの打撃成績、投手・守備成績はほとんどがリーグ中位~下位レベル。9月4日時点で新加入のポランコ選手がリーグトップタイの23本塁打を放つなど健闘しているものの、依然として長打力不足が課題であると言えそうです。

ポジティブな捉え方をすると、この成績で貯金を7つ作りリーグ2位に位置付けられているのは、首脳陣をはじめとしたシーズントータルでの勝敗の計算(いわゆる「捨て試合」を作ること)や選手起用のマネジメントが上手いと考えることができます。しかしながら、仮に他球団の首脳陣がマリーンズの首脳陣と同程度かそれ以上のマネジメントをしてきた場合、個々の成績で劣るマリーンズが下位に沈んでいく可能性は十分にあると考えられ、楽観視はできません。

具体的にチームの戦い方に目を向けると、先発投手陣が安定してゲームを作り、接戦勝負の場面をリリーフ陣が凌いで勝ちを拾う形が基本形となっています。一方で、現在の戦い方ではリリーフ陣への負担が大きくなるため、短期的な視点で見ると、リリーフ陣を更に充実させつつ、さらに中長期的な視点では攻撃力、特に長打力を強化していかなければなりません。

チームの抱える課題

①長打力

現状、長打(本塁打)が少ない割に得点を挙げることができているのはチームの強みかもしれませんが、今後の更なる得点力アップのためには、長打力の底上げは必要不可欠です。

昨オフにポランコ選手を獲得したように、喫緊の長打力改善という点に手を打つのであれば外国人選手の獲得やFA市場への参戦が主な選択肢となりますが、将来への投資という点で手を打てるのはドラフト会議が最大の場です。昨年のドラフトでも指名したかったポイントのひとつでしたが、将来の先発投手候補と遊撃手という別の課題を優先し、指名には至りませんでした。
また、ともに高卒3年目の西川僚祐選手、山本大斗選手が期待ほどの成績を残せていないこともあり、数年後を見据えると今以上に課題が深刻化するおそれもあるため、今年は何らかの手を打つ必要があると考えます。重要課題のひとつと言っても過言ではありません。

②先発投手陣

現在は佐々木朗希投手を故障で欠いているものの、種市篤暉投手がエース格の働きを見せ、小島西野メルセデス投手らもローテーションに定着しています。一方で、ベテランの美馬学投手の不調や、石川二木投手らの故障の影響で層の薄さが顕在化してしまっているのは否めません。リリーフ陣への負荷低減と、夏場の連戦を乗り越えることを考えると、先発投手陣も手厚くしたいところ。

近年ではNPBのレベルが上がっていることもあり、1年目から即戦力として活躍できるドラフト候補は減少傾向にあります。こちらも喫緊の課題解消に向けては外国人補強やFA市場への参戦が有力ですが、ドラフトの場で3年後から5年後を目途に一軍の先発ローテーションに定着できそうな候補を確保することも同時に目指したいです。昨年も1位で菊地投手を指名しましたが、数年後に確実に訪れる佐々木朗希投手のメジャー挑戦を見据えても、引き続き先発候補の投手は確保しておきたいポイントです。

③二遊間

昨年ドラフト2位で指名した友杉篤輝選手がショートで健闘を見せていますが、依然、中村奨吾選手や藤岡裕大選手への依存度が高いポジションであることに変わりはありません。攻守両面で負担が大きいポジションであり、今後も30代に差し掛かった両選手の加齢による稼働率・成績低下は免れられません。

ファームでは昨年指名した高卒ルーキーの金田選手や勝又選手らが出場機会を得ているものの、数年後の見通しという点では友杉選手も含めて「安泰」と思える選手はゼロ。昨年ほどの集中的な指名にはならないかと思いますが、今年も高校生、大学生、社会人問わず狙っていくべきポジションであると考えます。

④リリーフ投手陣

セットアッパーのペルドモ投手、クローザーの益田投手を中心に貢献度が高いポジションですが、年齢や契約を考えるとこちらも長期的に安心できるというわけでもありません。他のポジションに比べると外部補強もしやすいポジションでありドラフトでの優先度は高くないものの、ある程度継続的に即戦力に近い投手を確保していくべきであると考えます。

幸い、今年は大学生投手が豊作なため、下位指名や育成指名で能力の高い投手を指名できる可能性も十二分に考えられます。

⑤専門の外野手

「課題」とは少し話がズレるかもしれませんが、二軍では現在、内野手登録の選手が外野を埋める試合もあり、ユーティリティー化といえば聞こえは良いかもしれないものの、機会の面で考えたときに将来チームの核になり得る外野手の育成機会の損失が生じている状況です。

内野手(特に二遊間)と比較すると外野は守備負担が少なく打撃に力を入れやすいポジションでもあるはずなので、柳田悠岐選手(ソフトバンク)や鈴木誠也選手(カブス)、吉田正尚選手(レッドソックス)のような将来像を描ける選手がいたら積極的に狙いに行き、二軍で打席・出場機会の投資を与えたいポジションであると考えます。

今年のドラフトにおける方針

2022年に球団が策定した「千葉ロッテマリーンズ 理念」の中には、2025年に向けた中期目標「Vision 2025」が掲げられています。その中の方策のひとつに「新たな常勝軍団に―自他共に認める、令和の常勝軍団になる。」というものがあります。

もちろん2025年までに常勝軍団になっている形が理想ではあるかと思いますが、本質としてはそこを指針に様々なアクションを取っていくということに意味があるものと認識しています。

これを踏まえて今年のドラフトの方針を設定するとしたら

「チームの基盤の完成と、将来のコアプレイヤー確保の両立」

といったものになるのではないかと思います。

チーム状況とドラフト市場を踏まえた指名優先度

ここまで、昨季から今季にかけてのチーム状況を振り返り、課題を抽出してきましたが、ここからはポジションごとに「緊急度」「重要度」「候補充実度」を5段階評価し、その上で今年の「指名優先度」を考察したいと思います。

先発投手

緊急度★★★★ 重要度★★★★ 候補充実度★★★★★

→指名優先度:A(1位を割いてでも指名したい)


〈現状〉

ローテーションの顔触れは良さげに見えるが、故障や不調で離脱者が発生すると途端に崩れてしまいそうな脆さも感じる。3年後~5年後を目途に規定投球回到達が可能な即戦力性のある投手を指名したい。


〈指名対象年代〉

3年後~5年後を見据えると基本的に大学生が中心になるが、社会人、潜在能力の高い高校生も視野に入れる。


〈主な候補選手〉

常廣羽也斗(右投手 青山学院大)

下村海翔(右投手 青山学院大)

細野晴希(左投手 東洋大)

武内夏暉(左投手 國学院大)

前田悠伍(左投手 大阪桐蔭高)

木村優人(右投手 霞ヶ浦高
)

救援投手

緊急度★★★ 重要度★★ 候補充実度★★★★★

→指名優先度:B(指名したい)


〈現状〉

益田やぺルドモを筆頭にベテランと外国人への依存度が高い。若手投手の中にも後釜候補はいるため絶対に必要というわけではないが、新陳代謝を図る意味でも新戦力を確保したい。


〈指名対象年代〉

年代不問だが、ある程度即戦力性をもった候補という点では大学生・社会人が中心になるか。


〈主な候補選手〉

西舘勇陽(右投手 中央大)

松本凌人(右投手 名城大)

古田島成龍(右投手 日本通運)

捕手

緊急度★ 重要度★★★ 候補充実度★★

→指名優先度:C(余裕があれば指名したい)


〈現状〉

松川、佐藤都の存在からドラフト指名での緊急度は低い。指名するとしたら打力や身体能力を武器に他のポジションへのコンバートも視野に入れられる選手か。


〈指名対象年代〉

不問


〈主な候補選手〉

進藤勇也(捕手 上武大)

萩原義輝(捕手 流通経済大)

鈴木叶(捕手 常葉大菊川高)

内野手・一三塁

緊急度★★ 重要度★★★ 候補充実度★★★★

→指名優先度:B(指名したい)


〈現状〉

山口、安田の存在から緊急度は低いと考える。しかし、バックアップ、競争相手、後釜候補等全てにおいて弱いため指名はしたい。

かつてはコーナーは外国人で賄えるという考え方だったが、近年は満足な打撃成績を残せる外国人選手も減少しているため、日本人選手で考えたい。


〈指名対象年代〉
不問だが基本的には高校生、大学生がターゲットになるか。


〈主な候補選手〉

佐々木麟太郎(内野手 花巻東高)

真鍋慧(内野手 広陵高)
明瀬諒介(内野手 鹿児島城西高)

上田希由翔(内野手 明治大)
廣瀨隆太(内野手 慶應義塾大)

内野手・二遊間

緊急度★★★ 重要度★★★★ 候補充実度★★

→指名優先度:B(指名したい)


〈現状〉

セカンドは不動のレギュラー中村に後釜候補池田という構図。中村が長期契約を結んだものの、年齢を考えれば楽観はできない。ショートは藤岡と友杉の併用制で、将来的には友杉にレギュラーになってもらいたいが、安泰ではない。


〈指名対象年代〉

ある程度即戦力性をもった大学生・社会人年代が狙いどころとなるか。高校生でも能力が高い選手であれば指名ポイントになり得る。


〈主な候補選手〉

辻本倫太郎(内野手 仙台大)

武田登生(内野手 日本新薬)

横山聖哉(内野手 上田西高)

外野手

緊急度★★ 重要度★★★ 候補充実度★★

→指名優先度:C+(余裕があれば指名したい)

〈現状〉

中堅・ベテランも揃いながら藤原や山口ら若手も徐々に定着している。二軍から西川、山本らその下の代の台頭が望まれるが、現状二軍成績的に物足りない状況。

〈指名対象年代〉

山口、藤原以下の年代≒高校生、大学生が中心。


〈主な候補選手〉

度会隆輝(外野手 ENEOS)

宮崎一樹(外野手 山梨学院大)

打線(ポジション問わず)

緊急度★★★★ 重要度★★★★★ 候補充実度★★★

→指名優先度:A(1位を割いてでも指名したい)


〈現状〉

長打力、核となる中軸候補が足りていない。ポジション問わず打力のある選手を狙いたい。


〈指名対象年代〉

不問


〈主な候補選手〉

佐々木麟太郎(内野手 花巻東高)

度会隆輝(外野手 ENEOS)

上位指名の方向性とメリット、デメリット

ここまで、各ポジション+打線で緊急度・重要度・候補充実度を評価し、指名優先度を振り分けてきました。指名優先度順に並び替えると

A:先発投手、打線(中軸候補) →1位を割いてでも指名したい
B:救援投手、一三塁、二遊間 →指名したい
C+:外野 →余裕があれば指名したい
C:捕手 →余裕があれば指名したい

となります。

これを基に、上位指名の方向性について検討したいと思います。

ここでは「1位・先発投手」「1位・中軸候補」の2つのパターンに大きく分けて、それぞれ考え得る上位指名の方向性とそれぞれのメリット、デメリットについて掘り下げたいと思います。

1-A:1位・先発投手→2位・先発投手

メリット
・成功した場合、来年~数年後の先発投手陣にかなり厚みを持たせられる
・チーム状況に応じてリリーフに回してブルペンに厚みを持たせられる可能性もある

デメリット
・マリーンズの2位指名までに先発候補の投手が残るか不透明
・中軸候補、二遊間の指名に手が回らなくなる
・2人とも先発ローテーションに定着できなかった場合、損失が大きい

まずは上位の2枠を使って先発候補の投手を指名するパターン。将来のエース候補と呼べる投手を上位で2人指名することに成功した場合、数年後まで見据えた際の先発投手陣にかなり厚みをもたせることができます。

一方で、現在パ・リーグ2位のマリーンズは2位指名の順番が遅くなり、そこまでに先発候補の投手が残るかは不透明です。また、野手の指名が後回しになってしまい、中軸候補や二遊間の確保に失敗する可能性も高いです。そして一番まずいケースとして、上位指名した2投手が揃ってローテーションに定着できなかった場合、現状の重要課題が何ひとつ解決されない危険な状態となる可能性もあり、積極的におすすめはできないパターンかもしれません。

1-B:1位・先発投手→2位・救援投手

メリット
・先発とリリーフを両方強化できるオーソドックスな投手指名
・リリーフタイプの候補は先発候補と比べてドラフト上での優先度が低く、指名の実現性は高い

デメリット
・中軸候補、二遊間の指名に手が回らなくなる
・1位で指名した投手がローテーションに定着できなかった場合の損失が大きい

2位で救援投手を指名するパターン。先程のパターンに近いものです。
リリーフタイプの投手の方が全体的にドラフト指名の優先度は下がる傾向にあるため、1-Aパターンより実現の可能性は高そうです。しかしこのパターンでも野手指名が後手に回るため、1位指名の投手が先発ローテーションに定着できなかった場合の損失が大きくなってしまいます。

1-C:1位・先発投手→2位・スラッガー

メリット
・チームの課題にフォーカスした理想の指名形のひとつ
・成功したときのリターンは大きい

デメリット
・マリーンズの2位までにスラッガー候補が残るか不透明

2位でスラッガー候補を指名するパターンです。チームの課題にフォーカスした上位指名で、1位で先発投手を指名する場合のパターンとしては最善のプランではないかと思います。

問題は、マリーンズの2位指名の順番までにスラッガー候補は残るのか?という点です。

1-D:1位・先発投手→2位・二遊間候補

メリット
・二遊間の上位候補を指名し、チームの基盤強化が図れる

デメリット
・中軸候補は3位以下に回さざるを得なくなる
・全体として二遊間の候補が少なく、お目当ての選手が残るか不透明

2位で二遊間の選手を指名するパターンも検討してみました。チームの基盤強化には繋がるかと思いますが、一方で中軸候補は3位以降での指名となってしまう点、他球団の2位指名で二遊間の候補を先に指名される可能性がある点でデメリットも孕んだ指名です。

2-A:1位・スラッガー→2位・先発投手

メリット
・チームの課題にフォーカスした理想の指名形

デメリット
・マリーンズの2位指名に先発候補の投手が残るか不透明
・1位でお目当てのスラッガーを指名できなかった場合、プランの再構築が必要

1-Cパターンの指名順を入れ替えた形で、スラッガーの優先度を高めた形で、1位でスラッガーを指名する場合のパターンとしては最善のプランではないかと思います。

ただし、1位でお目当てのスラッガーの指名を逃した場合、そのまま他のスラッガー候補に入札するのか、あるいは投手を繰り上げるのかなど、プランの見直し・再構築が必要になるパターンでもあり、このプランニングを間違えると損失が大きくなる可能性があります。

2-B:1位・スラッガー→2位・救援投手

メリット
・2-Aより実現可能性は高そう

デメリット
・スラッガー定着までに時間を要することが考えられるため、直近での戦力強化の効果は小さく見える

2位でリリーフを指名するパターン。実現可能性は2-Aのパターンより高そうですが、スラッガー定着までの間は戦力強化の効果は小さく見えてしまうのではないかという懸念があります。3位以降でどれだけ即戦力に近い候補を指名しリカバーできるかにかかってきそうです。

2-C:1位・スラッガー→2位・二遊間候補

メリット
・上位2枠を野手に割くことで野手強化の点でいえば効果が大きい

デメリット
・投手の指名は後回し、3位以降でのリカバーが必須
・野手が戦力化してこない場合、損失が大きい

まさに「ウルトラC」的なパターンです。

上位2枠をスラッガーと二遊間候補の選手に割くことで、チームの基盤強化とコアプレイヤーの確保は十分にできると思います。一方で投手の指名は3位以降となるため、ここで能力の高い投手を指名できるかどうかが指名全体を左右します。

計7つのパターンを出してみましたが、個人的に狙いたい形としては

1-C 1位・先発投手→2位・スラッガー
1-D 1位・先発投手→2位・二遊間候補
2-A 1位・スラッガー→2位・先発投手
2-B 1位・スラッガー→2位・二遊間候補

の4パターンのうちのいずれかです。

次回のnoteでは、この4パターンをさらに掘り下げた具体的な指名プランの検討と、肝になってくる候補選手の紹介をしたいと思います。

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