【シーズン総括・ドラフト展望編】Marines Monthly Draft Report #5
どうも、やまけんです。
Monthlyと言っておきながら9月の更新が滞っていたMarines Monthly Draft Reportですが、レギュラーシーズン全日程が終了したということもあり、今回はシーズンの総括と間近に控えたドラフトの展望をテーマに書かせていただこうかと思います。
千葉ロッテマリーンズ シーズン最終成績
チーム打撃成績
チーム投球成績
井口資仁監督就任5年目となった今季、開幕から投打がかみ合わず、最終的には借金4の5位でシーズンを終えた今季のマリーンズ。昨季まで打線をけん引してきたレアード、マーティンの両外国人が深刻な不振に陥った影響で、チーム長打率.342、チームOPS.645はいずれもリーグワーストの数字となってしまいました。
一方でリーグ3位の501得点を記録しており、リーグ内で相対的に見れば決して得点力不足というわけではなかったと言えます。この背景には、チーム盗塁数132を記録した機動力の高さがあると考えられます。今季レギュラーに定着した髙部瑛斗は44盗塁を記録し盗塁王を獲得。そのほかの選手も積極的に次の塁を狙う走塁意識の高さを随所に発揮し、なかなか長打が出ない中でも一定の得点を挙げられるチームになりました。
投手成績に目を向けると、防御率こそリーグ4位の3.39ですが、536失点はリーグワーストで、得点力以上に失点抑止力が欠如していた状態だったと言えます。被安打数もリーグワーストの1212本ということから、他球団と比較して守備能力の低さで多くの失点を許してしまっていたのではないかと推測されます。
この背景には、1年を通じてセカンドで固定された中村奨吾の勤続疲労や、ショートのレギュラーだった藤岡裕大の離脱等が影響しているのではないかと考えられます。
シーズン最終戦では、今季の責任を取る形で井口監督が辞任を表明。メディアでは来季続投も報じられており、選手も最終戦のセレモニーの瞬間まで耳にしていなかったということからも急転直下での決断だったことが窺えます。それに連なるように、鳥越裕介二軍監督、森脇浩司コーチら首脳陣7人の退団が発表され、ファンの間にも衝撃と不安が広まりました。そして、それを上回るサプライズとして、今季ピッチングコーディネーターを務めた吉井理人氏が新監督に就任することが先日発表されました。
コーチについても大幅入れ替えとなることから、来季は一味違うマリーンズの野球を見られるかもしれません。
一方で、ドラフトについては井口政権の方針を継続していく形が理想と言えそうです。球団として掲げた「2025年までに常勝球団となる」という中期目標の実現のため、チームが現状抱える課題を補うだけでなく、将来の柱となる選手も同時に獲得していく必要があります。今季、完全試合を達成するなどブレークした佐々木朗希や16本塁打を放った山口航輝など、スケールの大きい選手も積極的に狙う姿勢が求められます。
ドラフトを間近に控えた各球団の動向
ドラフトを間近に控え、各球団とも徐々に動きが出てきました。
9月下旬、12球団の先頭を切って巨人が浅野翔吾(高松商高)選手を1位指名する方針を固めました。
メディアには「浅野」という固有名詞こそ出していないものの、アメリカで開催されたU-18ワールドカップにスカウトを派遣する密着ぶりや「体は大きいわけではないですけど、3拍子そろって、右にも打てる。1番はスター性ですよ。将来のスーパースターになるような素材だと思っている」というコメントからも、浅野選手を指していることが読み取れます。
そして今週に入り、ソフトバンクが高校生ショートのイヒネイツア(誉高)選手を、西武が左のスラッガー蛭間拓哉(早稲田大)選手を、日本ハムが二刀流として注目を集める矢澤宏太(日本体育大)選手を1位指名することを相次いで公表。
ここまでの流れから、各球団とも1位指名では希少性の高い野手を優先的に確保し、2位以降で投手を指名する流れになると予想されます。
ロッテのドラフト指名ポイントを整理する
ここで、改めてロッテのドラフト指名ポイントを整理します。
参考:のなーさんのnote
上述のように、現状長打力不足ではあるものの一定の得点力はある打線。課題とする長打力も、4年目の山口やOPS.740を記録した5年目の安田尚憲など徐々に日本人で打線の中軸を担える選手が出てきていること、更に二軍で高卒2年目の西川僚祐、山本大斗が好成績を残したこと、程度に差はあれど喫緊で不足している長打力は外国人選手によるカバーが見込まれることから、第一優先で確保するポイントというわけではないのではないかと思います。
一方で、守備からの失点が多く、その点を補える選手に乏しい現状を鑑みると、ディフェンス能力に長けた選手を確保しておきたいところです。二遊間の両方を高いレベルで守れる選手を加え、3番・セカンド・キャプテンの三役をこなす中村奨吾の負担軽減も含めたチームの守備面での運用健全化を図れるのが理想形です。
捕手では、昨年ドラフト1位の松川虎生と3年目の佐藤都志也が主に一軍でマスクを被りましたが、吉田裕太に戦力外通告が言い渡され、田村龍弘がFA権の行使を検討するなど運用面を考えると確保しておきたいポジションのひとつ。優先度は決して高くないものの、来年一軍で起用できそうな社会人の即戦力捕手を加え、打撃の潜在能力も高い松川の能力を二軍で引き出すという選択肢も考えられます。
二軍での選手起用に目を向けると、おおむね育成機関として適切な運用がなされていると言えそうです。更に育成の場として有効活用できそうなポジションがサード、ショート、センター。二遊間で余剰気味の選手が守ることの多いサードや、内野手登録の西巻賢二、捕手登録の谷川唯人らがスタメンで出ることもあったセンターで専門的に育成できそうな選手を狙いたいです。
また、二軍で最も先発出場の多かった7年目の平沢大河を来季以降本格的に一軍戦力化させていくと仮定すると、平沢のショートでの出場機会分を新規選手に配分し、次世代のコアプレイヤー育成に着手するというプランも十分に検討の余地があるでしょう。
投手は、先発で100イニング以上投げたのが小島和哉、佐々木朗希、石川歩、美馬学、ロメロの5名。佐々木のメジャー挑戦が現実味を増す数年後には石川や美馬の稼働率も現状より低下していることが予想されます。一昨年ドラフト1位の鈴木昭汰やトミージョン手術からの完全復活を目指す種市篤暉らがいるとはいえ、数年後のローテーションの柱になり得る投手を確保しておきたいです。
リリーフの不安も散見されたものの、先発陣の強化が進めばおのずとリリーフにかかる負担は低減されるため、第一優先事項ではないかと思います。昨年5位の八木彬のように、下位で即戦力性のある投手がいれば狙いたいところです。
二軍で先発として最多投球回を記録したのは土肥星也で76回。育成の場としてファームのマウンドをフル活用できていたかといわれると微妙な状況でした。来季3年目の中森俊介、2年目の秋山正雲、田中楓基、永島田輝斗らの起用法次第ですが、二軍のローテーションを回しながら育成できるような“準即戦力”的な投手を狙ってみてもよいのではないかと思います。
以上を踏まえて整理すると、
このあたりが今年抑えておきたいポイントとなるでしょう。
各ポイントに合致しそうな選手と指名難易度
補強ポイントを整理したうえで、実際に今年そのポイントに合致した選手がいるのかどうかを掘り下げたいと思います。
併せて、各順位でポイントに見合った選手を指名できる可能性と実現性を踏まえた上で「指名難易度」を1~5の5段階に振り分けました。1が比較的指名しやすく、5が指名しにくいカテゴリと認識していただけますと幸いです。
【上位】
・数年後の先発投手陣の柱になり得る投手(年代問わず)
→曽谷龍平(白鷗大)、菊地吏玖(専修大)、益田武尚(東京ガス)等
指名難易度:2
高校生投手の上位指名の可能性も十分に考えられます。
・二遊間両方をハイレベルに守れる内野手(大学生-社会人年代)
→田中幹也(亜細亜大)、和田佳大(トヨタ自動車)等
指名難易度:5
・ショートで育成できる次世代のコアプレイヤー候補(高校生-大学生年代)
→イヒネイツア(誉高)、門脇誠(創価大)、林琢真(駒澤大)、村松開人(明治大)等
指名難易度:4
あえて言うのであれば、この中では田中選手とイヒネ選手は他の候補と比べて別格の位置にいる存在と見ています。
【中位】
・1年目から二軍の先発ローテーションを回しながら育成できる準即戦力投手(大学生年代)
→渡辺翔太(九州産業大)、仲地礼亜(沖縄大)、西隼人(関西学院大)、松井颯(明星大)等
指名難易度:3
・二軍のサードで育成できる打撃型の選手(高校生~大学生年代)
→内藤鵬(日本航空石川高)、内田湘大(利根商高)、坪井蒼汰(山村学園高)等
指名難易度:4
内藤選手は上位指名の可能性が高く、この順位には残らないと予想されます。内田選手も評価が高く、もしかしたら上位で指名されるかもしれません。
・二軍のセンターで育成できる身体能力に長けた選手(高校生年代)
→三塚琉生(桐生第一高)、海老根優大(大阪桐蔭高)、井坪陽生(関東第一高)、古川雄大(佐伯鶴城高)等
指名難易度:2
振れ幅が大きく、上位指名から育成指名まであり得るカテゴリ。候補と呼べる選手は多いので、指名の可能性は十分にあると見ています。
【下位-育成】
・ブルペンを厚くする即戦力リリーフ投手(大学生-社会人年代)
→宮海土(立教大)、才木海翔(大阪経済大)、小孫竜二(鷺宮製作所)等
指名難易度:3
・即戦力捕手(社会人年代)
→奥村幸太(TDK)、伊藤寿真(日本製鉄かずさマジック)、立松由宇(日本生命)
指名難易度:5
ロッテの現有戦力から考えると、指名するとしても役回り的には第3捕手的な立ち位置になると予想されるため、守備面に長けた選手が望ましいです。
・高校生投手
→候補多数(右投手は基本的に180cm以上)
指名難易度:1
具体的な指名プランとリスクの考察
以上を踏まえ、ここからは本指名1位から5位までの大まかなプランを立てて、その上でリスクについて検討を重ねてまいりたいと思います。
プランA
上位3枠で今年のナンバーワン左腕曽谷投手、二遊間両方を高いレベルで守る田中幹也選手、総合力が高い九州産業大の渡辺投手をチョイス。指名の形としてはオーソドックスで、来年から3年後のチームにフォーカスした指名となっております。4位の三塚選手は売り出し中の西川、山本らと棲み分けのできる左打ちの外野手。5位の小孫投手は来季即一軍での稼働が見込める即戦力社会人投手です。
プランB
プランAで懸念されるリスクを排除する形で、1位で田中幹也選手を優先確保。2位では1年目からの活躍が期待される東京ガスの益田投手が残っていることに賭け、3位で高校生ショートの金田選手、4位で強打のサードとして育成を図りたい内田選手をそれぞれ指名。即戦力を抑えつつ、プランAよりも野手育成に振った形となりました。
プランC
既にソフトバンクが1位指名を公表しているイヒネ選手に特攻する“博打プラン”です。2位、4位、5位で即戦力性のある投手を補い、3位では駒澤大の林琢真選手を指名。セカンドが本職ですがサードやショート、外野など複数のポジションを守れる器用さとスピード、小力も兼ね備えた選手です。
プランD
博打プランに更なる追い打ちをかけた“大博打プラン”です。将来のコアプレイヤー候補となるイヒネ選手と喫緊の課題である守備面をクリアしてくれるであろう田中選手の2枚抜き。3位から5位は即戦力性の高い投手を確保する形です。実現可能性は最も低いものの、野手の重点課題を最優先に解決するという点で有効性は高いでしょう。
他球団の動向と今年のドラフト傾向から導き出されるロッテの最適プラン
既に書いたように、巨人、ソフトバンク、西武、日本ハムが相次いで1位で野手の指名を公表していることを踏まえると、今年のドラフトでは全体として野手を優先的に確保してから投手指名に移行する流れになるのではないかと考えられます。投手の競合は相対的に少なくなると考えられるものの、競合のリスクに見合うだけのリターンを得られるかは不透明です。
2位の指名順が全体で3番目となるロッテでは、1位指名有力と見られていた投手が2位まで残る可能性も少なくないと考えられるため、現状ではプランBに近い指名がベターではないかと考えます。
プランBの上位指名(1位:田中幹也選手、2位:益田武尚投手)をベースに、3位指名以降のパターンについても検討を重ねたいと思います。
あくまでも見込みですが、この上位指名に成功した場合、冒頭で整理した補強ポイントのうち
・数年後の先発投手陣の柱になり得る投手(年代問わず)→益田武尚(東京ガス)
・二遊間両方をハイレベルに守れる内野手(大学生-社会人年代)→田中幹也(亜細亜大)
を抑えられた形となります。
残るポイントは
となります。
これらのポイントすべてを今年のドラフトで補おうとすると、かえって焦点の合わない、ぼんやりとした指名に陥りかねません。
チームの現状と今年のドラフト候補市場における指名難易度も踏まえてポイントを絞ると、
という流れで指名を進める形が理想ではないかと思います。
最適プランの考察はここまでとし、ドラフト本番を待ちたいと思います。
次回の更新はドラフト後の11月、答え合わせとともに指名選手の紹介と来季の見通しについて具体的に掘り下げたいと思います!
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